それが本当の原因? -前後即因果の誤謬 

嶋田 毅
グロービス電子出版 発行人 兼 編集長 出版局 編集長
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問題です

以下のAさんの問題は何か。

A: 「この3月は、私の部屋の隣に○○教の人が引っ越してきた途端に、東北東日本大震災が起きて、大変な目にあってしまった。10年前にニューヨークに住んでいる時も、ちょうど隣の部屋に○○教の人が来てすぐに、あのテロ事件が起こった。こんな偶然はそうそうない。○○教はやや狂信的なところがあるから、周りに不幸をもたらすのかもしれない。できれば○○教の人には隣には来てほしくないものだ。さっさと引越ししようかな」

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解答です

今回の落とし穴は、「前後即因果の誤謬」です。英語ではラテン語風に“Posthocergopropterhoc”と言います。これは、本来因果関係がないにもかかわらず、直前に起こったこと(事象A)とその後に起こったこと(事象B)を結びつけ、「事象Bは事象Aの結果起きた」と因果関係で結びつけることを言います。たまたま複数回重なると、その錯覚が強くなる傾向があります。

冒頭のケースでは、○○教の信者が引っ越してきたことと、大きな災害や事件を結び付けていますが、常識的に考えて、これらの間に因果関係があるとは考えられません。それにもかかわらず、あまりに印象的な災害・事件2件で共通点があったことから、因果関係があるのではないかと考えてしまっています。

人間には、いったん強く思い込むようになった自分の考えに都合のいい事実だけを印象にとどめて、その考えを強化するという習性があります。おそらく、もし今後大事件があった時に、たまたま○○教の人が近所に引越ししていたとすれば、Aさんの考えは信念に近いものになるでしょう。一方で、もし何も起こらなかったとしても、それは過小評価されスルーされてしまう可能性が高いと言えます。

さて、前後即因果の誤謬は、個人的なジンクスにとどまっている限りは、実害はほとんどありませんし、かわいいものです。以下のようなパターンです。

・朝、三毛猫を見ると良いことがある
・アサリの味噌汁が出た日は株が上がる
・電車が遅延した日はろくなことが起きない

ところが、社会的に大きな影響力を持つ人がそうしたジンクスにとらわれて意思決定をしたりするようではいただけません。しかし、なぜかそうした人々にはジンクスを気にする人が少なくありません(特に政治家にはゲン担ぎをする人が多いと言われています)。それによって何かしら精神的な安定を維持しているのでしょうが、自分自身の影響力をしっかり意識し、合理的に何をすべきか考えていただきたいものです。

前後即因果の誤謬が、特定個人に対する攻撃の材料となるのも困ったものです。たとえば、「△△さんがこのマンションに引越しをしてきてから不幸が続いている。△△さんをいじめて引越ししてもらうように仕向けよう」というパターンです。△△さんが実際に好ましくない行為をしているならともかく、全く無関係だとしたらいい迷惑です。

このように、前後即因果の誤謬は、往々にして、「事象Aがあったから事象Bが起こった。事象Aを取り除いてしまえ(あるいは、事象Aが起きないようにしてしまえ)」というように人々の意識を向けてしまうことがあります。これは、上記の△△さんの事例のように、明らかに非科学的な場合はまだしも抑制が働くことが多いのですが、なまじ多少の因果関係があると、必要以上の極端な排斥運動などにつながることがあります。欧州における移民に対する攻撃などはその典型と言えるでしょう。

ある程度の教養がある人ですら、非科学的な「前後即因果の誤謬」に捉われることがあるのが、人間という動物の特性と言えます。自分がどのようなジンクスに捉われているか、一度棚卸してみるとよいでしょう。

嶋田 毅グロービス電子出版 発行人 兼 編集長 出版局 編集長
嶋田 毅グロービス電子出版 発行人 兼 編集長 出版局 編集長

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