あぶく銭は豪快に使うべし? -ハウスマネー効果 

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問題です

以下の考え方の問題点は何か。

「最近の円高の中、ドル売りポジションをとっていたおかげで、FXで300万円ほど儲けた。でも、そろそろ円高もこのへんまでという気がするな。別の投資に振り向けよう。300万は天から降ってきたようなお金だから、ちょっと冒険して商品先物でもやってみようか。リスクは高いかもしれないが、300万円までなら負けてもいいしな」

(注:ここでは税金は無視していますが、実際にはFXによる利益には所得税がかかります)

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解答です

今回の落とし穴は、「ハウスマネー効果」です。これは、幸運で得た利得については、ハイリスクの投資をしたりするなど、使い方が荒くなってしまう心理的傾向を指します。「ハウス」はカジノの意味で、カジノで一瞬お金を儲けても、結局はカジノですぐにすってしまう人が多いことからこう名付けられています。

本来、お金に色はついていません。地道に仕事をして稼いだ300万円も、投資で稼いだ300万円も、あるいは見知らぬ誰かから寄贈された300万円も、同じ300万円に差はないはずです。ということは、その使い道についても、本来は同じ重みで考えるのが適切と言えます。にもかかわらず、幸運によってもたらされたお金(あぶく銭)については、「トントンになるまでは失ってもいい」と考えてしまう傾向が人間にはあるのです。

ちなみに、統計の世界には大数の法則というものがあります。これは、母数や試行回数が増えれば増えるだけ、結局は平均に近い数字に落ち着いてしまうという現象です。たとえば、正確に作られたサイコロは、たくさんの回数ふればふるだけ、どの目が出る確率も6分の1に近づいていきます。

日本にはカジノはありませんが、公営ギャンブルはあります。それらの「テラ銭(ギャンブル等における主催者の取り分)」は概ね25%です。つまり公営ギャンブルは、長くやればやるほど、25%負ける結果になります。仮に公営ギャンブルにおいてビギナーズラックで最初に300万円儲けた人がいたとしても、長くやれば、結局は購入額の25%負けてしまいます。おそらく、最初に儲けた300万円が消えてしまうのもあっという間でしょう。

冒頭のケースは商品先物とのことでしたので、公営ギャンブルほど明確に大数の法則で負けるのが確実、とまでは言えないかもしれません。しかし、素人が手を出して簡単に儲けられるほど甘くはない世界です。結局は、手数料の分損を出して、せっかくFXで儲けた300万円はなくなってしまった、というオチになる可能性が高そうです。

他によく知られている例としては、宝くじを当てた人が、金遣いが急に荒くなり、身を持ち崩してしまうという例があります。こうした不幸(?)な人がでないように、1千万円以上の高額当選者には「『【その日】から読む本』(突然の幸運に戸惑わないために)」という小冊子が配られており、ハウスマネー効果の錯覚に陥らないようにケアがなされています。

個人だけではなく企業でも、たまたま思いがけず事業が当たり、予想以上のキャッシュが手に入ると、よりハイリスクの事業に投資する傾向が見られます。公開企業であれば、ある程度のガバナンスは働くのでその傾向は小さくなるかもしれませんが、非公開企業などガバナンスの弱い企業では、抑制が効かず、トントンどころか、トータルでもマイナスとなるような意思決定がなされることが少なくありません。

こうしたことからもわかるように、このハウスマネー効果は、多かれ少なかれ、ほとんどの人が陥りがちな落とし穴なのです。1人だけなら笑い話ですみますが、世の中全体がハウスマネー効果でハイリスクの投資に手を出すとどうなるでしょうか?

実は、バブルの一因に、このハウスマネー効果があるという指摘があります。「あぶく銭」による投資がまた「あぶく銭」の投資を生み、経済がその実体を大きく超えるレベルまで膨張してしまうのです。これは、結局、社会全体に大きな禍根を残してしまいます(これとは逆に、「スネークバイト効果」と呼ばれる落とし穴もあります。これは、少し損失が続くと、過度に損失を恐れ、本来ならとったはずのリスクもとらなくなるというものです。これも、社会全体に広がると、今度は過度に経済の縮小をもたらし、悪影響を残してしまいます)。

繰り返しですが、お金に色はありません。個人レベルでも企業レベルでも、手元にある現金の価値はすべて同じです。つまり、(極端な好運によらず)真面目に働いて得たお金とすべて同じ価値なのです。それを意識した上で、どのようなポートフォリオで資金を運用するのが合理的でベストか、意思決定のたびごとに冷静に考えるようにしたいものです。

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