それを見るだけで大丈夫? -移動平均の落とし穴 

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問題です

以下のA氏の考え方の問題点は何でしょうか

A氏は図1を見ながらこう考えた。

図1:B社のキャシュフローの4ヶ月移動平均(単位:億円)

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「これがB社の最近の月次キャッシュフローか。4カ月分の移動平均チャートということだが、月商20億円程度の会社にしては非常に安定しているな。ほとんどキャッシュフローがプラマイ1億円以内に収まっている。しかも、11月まではプラスとマイナスを繰り返していたのに、12月時点ではマイナスにならずにゼロで収まっている。キャッシュフローの安定度は抜群だな」

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解答です

今回の落とし穴は、移動平均の落とし穴です。移動平均の数字だけを見て、実態を見誤ってしまうというものです。

まず、移動平均についておさらいしましょう。移動平均とは、過去数日、あるいは、過去数週間、過去数カ月、過去数年といったように、一定の期間の数値の平均を求め、それをグラフ(通常は折れ線グラフ)に示したものです。折れ線グラフの移動平均をつないだものを移動平均線と言います。

たとえば、1年間の月次データの場合、移動平均値を計算する区間を図1のように4カ月とすると、その月を含む過去4カ月間の合計を4で割った数値が移動平均値となります。それをつないだのが、図1に示した移動平均線です。移動平均により月次の変動が平準化されるため、1年間の全体的な傾向を分析しやすくなります。

なお、移動平均は、その期間の中央の日・週・月・年にプロットするケースもあれば、その期間の最終の日・週・月・年にプロットすることもあります。エクセルでは後者がデフォルトの設定になっていますが、グラフを見る際は注意してください。

移動平均がよく用いられる典型的なシーンとしては、株式売買のテクニカル分析があります。たとえば、5日分の移動平均線が25日分の日移動平均線を上に抜いた状態(もしくは、25日分の移動平均線が75日分の日移動平均線を上に抜いた状態)は「ゴールデン・クロス」と呼ばれ、買いのタイミングとされます。逆のケースは「デッド・クロス」と呼ばれ、売り時を示すとされています。

あるいは、(詳細は省きますが)「グランビルの法則」では200日の移動平均線が利用され、長期のトレンドと現在の株価を見比べながら、売りや買いのタイミングを計ります。

実際に移動平均が示された株式チャートは、YahooFinanceなどの個別銘柄のチャートを見てください。ここでは参考までにソニーの1年間のチャート例を示しました。

図2:ソニーの株価チャート

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さて、A氏のケースに戻りましょう。いったいA氏の考え方のどこに問題があったのでしょう?最大の問題は、A氏が移動平均だけを見て、月次の数字を細かく見ていないという点です。移動平均は、その期間中のバラつきを平準化するため、大まかなトレンドを見るにはいいのですが、より細かな変動の実態が見きれないのです。

実際、図1のケースでは、月次のキャッシュフローは図3のような値でした。後半になるほど、月次のキャッシュフローのブレ幅は大きくなり、「安定」とは言えない状態になりつつあったのです。いかに移動平均の値だけを見ることがミスリーディングかお分かりいただけるでしょう。

図3:B社の月次キャッシュ・フローとその4ヶ月移動平均(単位:億円)

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この例は極端かもしれませんが、「平均」は必ずしもその期間や集団の実態を表すとは限りません。移動平均の場合であれば、個別の日・週・月・年などのレベルの値も同時にプロットし、合わせて見ることが必須なのです。これは、図2において、13週平均や26週平均の移動平均線だけを抜き出してもソニーの株価の動きは捉えきれないことからもお分かりいただけるでしょう。

この例に限らず、数字やチャートは人を騙しやすいツールです。伝える側に悪意があると、その傾向はさらに高まります。だからこそ、ビジネスリーダーたるもの、数字に騙されないように、瞬時にそれを見抜く「ビジネス数字リテラシー」が必要なのです。

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