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ダブルバインドとは?【事例で解説】――じゃあ、どっちにすりゃいいのさ?

投稿日:2010/06/15更新日:2024/01/18

今回取り上げる論理思考の落とし穴は、「ダブルバインド(二重拘束)」です。

ダブルバインドとは

ダブルバインドとは、あるメッセージが、メタメッセージ(メッセージに関連するメタレベルのメッセージ)と矛盾しているときに、メッセージの受け手が混乱してしまうことを指します。

精神病理学では、こうしたダブルバインドの状況(特に家庭において繰り返されるダブルバインド)は、統合失調症に似た症状を生じさせる可能性があると指摘しています。論理思考の枠を超え、メンタルヘルスの観点からも非常に重要な落とし穴と言えるでしょう。

ビジネスの現場で起こるダブルバインドの例

以下の会話で、上司の良くない点はどこでしょうか。

上司: 「君も入社3年目になったんだから、いちいち僕の顔色をうかがわず、もっと自律的に自分で考えて行動してくれ」
部下: 「わかりました」
上司: 「ところで、この前のプレゼン発表の資料だけど」
部下: 「ああ、あれですね。あれはまさに自分なりに考えて作った資料です」
上司: 「うん、それはいいんだが、プレゼン前に一言相談してもらえるとよかったな」
部下: 「はあ」
上司: 「もう少し手を入れたほうがもっと良いプレゼン資料になったと思ってね。いろいろアドバイスができると思ったな」
部下: 「でも、さっき自律的に自分で考えろって言われたばかりじゃないですか」
上司: 「うん。だから決してそれ自体を否定しているわけではないよ。ちょっと気になったことを正直に話しているだけさ。これからもどんどん自律的な行動を期待しているからな。よろしく頼むよ」
部下: 「……」

問題点は、矛盾したメッセージにより混乱させてしまうこと

今回のケースでは、上司の直接の指示(メッセージ)は、「(上司の顔色をいちいちうかがわず)自律的に考えて行動しなさい」でした。しかし、一方では、「上司である自分の気にいるように行動してほしい」というメタレベルのメッセージも同時に発しているように思われます。

受け手は当然混乱します。常に上司の考えるとおりに考え行動することは、テレパシーでもない限り不可能です。多くの人は、上司の考えとは異なる考えを持ち、行動するのが普通でしょう。

こうした状況では、メッセージの受け手は、「自律的に考えて行動せよ」というメッセージに従って行動するのがいいのか、「上司が気にいるように行動してほしい」というメタメッセージに従うのがいいのか、迷うことになります。

前者に従えば、後者に背くこともあるでしょう。逆に後者のメタメッセージに従えば、「いつも上司の意向ばかりうかがって、自分で考えないやつだ」と評価されかねません。つまり、どちらをとっても非難されうる状況なのです。

ダブルバインドが発生しがちな関係は?

致命的なダブルバインドは、「上司−部下」、「先輩−後輩」、「先生−生徒」、「親−子ども」といった、強者と弱者の関係において、強者から矛盾が提示されたときに発生しがちなことが知られています。本来、こうした状況からは、すぐに逃れられればいいのですが、上記のような関係ではそれも容易ではありません(だからこそ致命的な状況を招きやすいのです)。

ダブルバインドへの対処法

上司など「強者」が心がけるべきこと

ダブルバインドは、先述したように、相手に大きな心理的ストレスをかけます。したがって、「強者」の立場にある人間——ビジネスにおいては通常「上司」は、自分がダブルバインドのメッセージを発していないか、常に自問する必要があります。

部下など「弱者」が状況から抜け出すには

一方、部下としては、勇気を出して、「結局、どうすればいいんですか」と聞くことも必要です。一人で悩んでいても問題は解決しませんし、上司が必ずしも察しのいい人間とは限らないからです。

とは言え、上司にいきなり強い口調で言うのも憚られる、という方も多いでしょう。そういう方には、最近よく言われる、コーチングアップ(逆コーチング)で質問を投げかけながら上司にダブルバインドに気付いてもらうという工夫がお勧めです。

能動的に自分の置かれた状況を改善するしたたかさを身につけたいものです。

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