なじみの顔には甘くなる? -単純接触効果 

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問題です

以下の会話で、社長の良くない点は何でしょうか

社員: 「社長、今度のCMに起用する女優ですが、AとBのどちらを最終的に選ばれますか?」
社長: 「うーん。アンケート結果では、Bの方が少し良いんだよな、確か?」
社員: 「そうですね。若干ではありますが、好感度などはBの方が良いようです」
社長: 「でも、自分は個人的にはAの方に好感度を感じるんだよなあ」
社員: 「はあ」
社長: 「彼女の出ているドラマを毎週見ているんだけど、演技もしっかりしているし、今度の商品のターゲットであるF1層(20歳から34歳の女性)にも受けると思うんだ。Bという女優さんは、人気はあるらしいけど、ドラマや映画で見たことがないせいか、どうもピンとこないんだよね」
社員: 「まあ、社長がそうおっしゃるのであれば、私はあえて反対はしませんが…」

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解答です

今回の落とし穴は、「単純接触効果」(Mereexposureeffect)と呼ばれるものです。これは、過去に触れた情報については、新しい情報よりも好ましく感じるという人間の錯覚です。なぜこのようなことが起こるのかということの説明には様々な仮説がありますが、有力な仮説としては、過去に触れた情報はその処理がスムーズになり、その情報処理のスムーズさを、「情報が好ましいものだったから」と脳が誤って記憶する、過去にその情報に触れたことがあるため、リスクを過小に見積もる、などが挙げられています。

このような学術的な説明をするまでもなく、常日頃から接触頻度(ここでいう「接触」は、もちろん、身体的接触を意味するのではなく、より広義の意味での接触を指します)の高い人物や情報について、好印象を持ったという実感は、みなさんお持ちなのではないでしょうか。そうした効果があるからこそ、タレント事務所はタレントの露出を増やしますし、企業はより多くの人に到達するような広告を打とうとするのです。

これは営業や恋愛などでも使われているテクニックです。常日頃から接触を増やしておくと、よほど悪印象を与える接触方法でない限りは、相手は全く会ったことのない人に比べると、自分に好意を抱くものです。

つまり、質(接触の内容)も重要ではあるものの、量を増やすことも好意を獲得する上では非常に有効なのです。恋愛はともかく、営業などでは、「努力に報いてあげないと悪いかな」といった心理も往々にして働きがちですし、何度も会う中で情報交換も進みますから、ますます接触頻度を上げることの効果は高まっていきます(もちろん、ビジネスでは「費用対効果」という視点も重要ですが)。

今回のケースでは、社長は、いつもドラマで見ているという「接触」の頻度や印象に引っ張られて、そちらを、客観的なアンケートデータより重視しました。幸い、このケースでは、アンケート結果自体に大きな差はなかったようなので広告効果はそれほど変らないかもしれませんが、仮にアンケート結果に大きな差があったにもかかわらず、単純接触効果で違う意思決定をしていたら、会社にとっても不幸な結果をもたらしたかもしれません。

単純接触効果は人間の自然な感情であるため、なかなか回避するのは難しいと言えます。しかしそれでも、会社にとって重要な意思決定を下すような場合には、多様な意見を取り入れる、あるいは、接触頻度が低い選択肢について情報を集めるなどして評価の基準を合わせ、本当にその選択肢が望ましいのか、より客観的な視点で判断することが必要と言えるでしょう。

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