キリン×サントリー…「巨人」と「阪神」は統合すべきか 

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キリンとサントリーの経営統合が破談となった。この経営統合に関しては、多くのメディア*1やコンサルタントが歓迎の意を表明していた。しかし、この統合は、プロ野球にたとえて言えば、メジャー・リーグに対抗するために「巨人」と「阪神」が「巨人タイガース」という新チームを作るようなものである。よく言われる企業文化の違いだけでなく、そもそも根源的な問題をはらんでいた。破談になったことは、両社にとって本当に幸いであったと思う*2。

(1)目標と戦略の不整合
今回の経営統合の目標は、「国際競争力の強化」という触れ込みだった。だが、両社の統合は、国内では強者連合でも海外では弱者連合*3に過ぎない。もし、経営統合を通して国際競争力の強化をめざすのであれば、海外における強者との連合を考えるべきだ。その点で、欧州市場のリーダーであるインべブ社(ベルギー)と北米市場のリーダーであるアンハイザー・ブッシュ社(米国)の経営統合は理想的だった*4。

キリンとサントリーは、いずれも国内市場偏重型という点では似たもの同士であり、海外市場での補完関係はほとんどない。先の野球の例を引けば、「巨人」が「サンフランシコ・ジャイアンツ」と統合するなら国際競争力の強化になるだろうが、「阪神」と統合しても国際化の点では何の意味もないのと同じである。そもそも、両社の経営統合が国際事業の強化につながるというロジック自体に無理があった。

(2)究極のカニバリとしての経営統合
今回の経営統合が国際化への布石であるというロジックを敢えて説明すれば、縮小する国内市場において規模を確保し、財務基盤を強化し、海外への投資に備える、という回りくどいものだった。だが、経営統合が経営基盤強化につながるという考え自体も幻想である。

そもそも「巨人」と「阪神」が統合したら、「巨人」より強いチームになるという保証はない*5。また、熱烈な「阪神」ファンの一部は、「巨人タイガース」など応援できないといって離れてゆくだろうし、逆に熱烈な「巨人」ファンの一部は、「巨人タイガース」を拒否するだろう。その結果、「巨人タイガース」のファンの総数は、「巨人」ファンと「阪神」ファンを合計した数よりも減ってしまう。キリンとサントリーの統合でも同様の結果(1+1<2)になる可能性は高い。

また、両チームの統合は、ペナントレースを競い合うチームが1チーム減ることを意味し、他球団から見れば歓迎すべき事態である。キリン・サントリーの統合も、アサヒ・サッポロから見れば、競合企業の減少*6という点では歓迎すべきことなのである。

市場の成熟や国際化が叫ばれる昨今、経営統合はある種ブームとなっている。だが、経営統合はただでさえ問題の多い打ち手である*7。特に、補完関係の無い国内企業同士の経営統合は、そうしなければ会社が存続できない場合などにしかたなく取るべきうち手である*8。経営統合を考える前に、「寄らば大樹」という考えを捨て、自社のコアコンピタンスに立ち返り、まずは独自で成熟化や国際化に立ち向かう道を模索するのが本筋である。

 

*1 特に、このニュースをスクープした日経新聞には統合を推進する意図が感じられた。
*2 両社の社員の大半も、今回の破談を歓迎しているのではないか。
*3 08年度の両社の海外比率は、キリンが25%、サントリーが14%。
*4 両社は、08年11月に経営統合をした結果、世界最大のビール会社となった。
*5 お金の力で4番打者を集めても強いチームにならないことは既に証明済みである。
*6 キリン、サントリーは、それぞれ事業会社として存続する構想であり、見かけ上は減るわけではない。だが、経営統合すれば両社の商品ポートフォリオは見直され、商品数は減少することになる(逆に、そうしなければ統合の意味はない)。
*7 マーケティング・アノマリーズVol.4「旭山動物園(2)・・・シナジーという幻想」
参照。
*8 ではなぜ経営統合がはやるかと言えば、コンサルティング会社や投資顧問会社にとって、経営統合は大きな商売になるからである。

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