数字力編 

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失敗の本質を探ることで、自分に足りないスキルが見えてくる。プロフェッショナルになる上で不可欠なビジネススキルを、3つのトレーニングを通して習得していく連載企画。第4回目となる今回は、グロービス経営大学院の星野 優氏が、数字力を高める秘策を紹介する。(このコラムは、@type「コンサルタントの転職@type 」に掲載された内容をGLOBIS.JPの読者向けに再掲載したものです)

数字力の基本
1. 曖昧な副詞で数量を表現しない
2. 数字の前提条件を意識する
3. 隠された情報を見落とさない
「今回取り上げる“数字力”は、データ分析や複雑な計算方法といったものではなく、いわば“伝える力”の一種。こちらのメッセージを整理したり、相手によりクリアに伝えたりするために、数字を積極的に活用していくスキルと考えてください」

星野優氏によれば、「売り上げが結構増えた」「相当少ない」など、副詞で程度や数量を表現する人は、ビジネスシーンにおいても少なくないという。それが、相手に真意を伝えられなかったり、誤解を招いたりする原因となってしまうのだ。

「数字での表現には迫力があり、また定量的に語れるので、コミュニケーションの精度も上がります。ただし、数字の裏にある前提条件や隠された情報を見逃すと、誤解が生じる可能性もあるので注意が必要です」

training.1「副詞→数字」変換トレーニング

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症状:「君の話は“結構”とか“相当”ばかりでよく分からない」と言われる
効果:規模感を効果的に伝える

1. 会話の中で「結構」「相当」「かなり」「そこそこ」といった程度や数量を抽象的に表現する副詞を使っていないかチェックする
2. それぞれの副詞を明確な数字に置き換える
例:「売り上げが結構伸びています」→「昨年の同時期に比べて20%アップしています」
上司に報告をする際、「相当なクレームが寄せられています」といった言い方をする人は少なくない。しかし、これではクレームの発生率や増減の割合がどの程度なのか、また、そもそも10件なのか100件なのかといった、規模感が全く伝わらない。

「数字力を養うための第一歩は、『結構』『相当』といった副詞を数字に置き換える習慣を付けること。先ほどの例なら、『相当なクレーム』=『ここ1カ月間で、1日平均3件のクレーム』と明確な数字で表現する。この時、この話を初めて聞く人でも現状を正しく理解できるかどうかを意識することが大切です」

ただし、数字を使い過ぎるとかえって話が複雑になることもあるので注意が必要だ。数字を使うと効果的なのは、「動き」「差」「割合」を伝えるとき。売り上げの推移などの「動き」は、前年比や前月比のように、ある2つの時点を数字で対比させれば明確に伝わりやすい。商品ごとの売り上げ比較などの「差」を伝える場合も同様。「割合」は、規模感をつかむための重要な情報となる。このように、数字を使うべきところと使わなくてもよいところの境界線を見極めるよう留意したい。

training.2「前提」確認トレーニング

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症状:「25%引きって言ったはずだよね?」など、交渉相手と認識のズレが生じることがある
効果:情報の精度を上げる

1. 新聞記事の中から、「なぜこの数値が出たのか?」と感じる数字を拾い出す
2. その数字を算出する前提条件となった要素を見つける
(例:「GDP3.2%減」→「前期比(10~12月)」 「GDP12.2%減」→「年率換算」)
3. 根拠となる数字を調べ、報道されている数字と合致するか、実際に計算してみる

100万円の見積もりをクライアントに出したら、相手から「高いね! 予算と25%の差があるよ」と言われた。この場合、「相手の予算は100万円の25% 分少ない」とも、「100万円は相手の予算の25%分高い」とも解釈できる。

「数字を使っているのに解釈の差が生じるのは、基準や起算点など、その数字が算出されるに至った“前提”を相手と共有していないから。無用な誤解を招かないためにも、数字は必ず前提とセットで使う習慣を付けてください」

新聞の読み方を少し変えるだけでも、前提を意識するトレーニングができる。記事の中に「なぜこんな数字が?」と思うものが出てきたら、どんな前提のもとにその数字が出されたのか確認するのだ。

例えば、同じニュースをA紙が「GDP3.2%減」、B紙が「GDP 12.2%減」と報じていたとする。記事をよく読めば、そこには期間が「四半期」か「年率換算」かという前提の違いがあると分かるはずだ。さらに、前年の数字を調べて、実際に3.2%や12.2%という結果になるか、自分で計算してみるとよい。

「手間を惜しまずこうした作業を繰り返すことで、数字の前提条件を見抜く力が鍛えられるはずです」

training.3ビジュアル化トレーニング

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症状:「……で、結局この数字で何を考えればいいんだっけ?」と言われる
効果:数字に隠された実態を正しく理解できる

1. 情報やデータに基づき、平均値などの数値を算出する
2. その数値を、分布やグラフなどのビジュアルで表現してみる

数字を使う際、特に注意をしたいのが「平均」だ。例えば、自社商品のリピートオーダー率を算出した結果、65%という結果が出たとする。さらに、競合の類似商品のリピート率を調べたところ、業界平均は70%だった。5%の差であれば、それほど大きく後れを取っているとは感じないかもしれない。ところが、このデータを分布図として視覚化すると、まるで違う景色が見えてくる可能性がある。

もしグラフが、70%を頂点に裾野の広い緩やかな山なりを描くなら、65%という結果は平均クラスといえるかもしれない(イラスト内Aグラフ)。だが、裾野の狭い急な山なりなら、65%という数字は業界内で最下位に近いことを意味する(同Bグラフ)。同じ「65%」という数字なのに、その意味するところは全く異なるのだ。

「平均を語るときは、バラつき具合を示す標準偏差や分散、グラフや分布図などのビジュアル化したツールを併せて使わないと、相手に実態が伝わりません。数字は多くの情報を簡潔に伝えられる“雄弁さ”を持つ一方、ある意味で非常に“寡黙”でもあります。グラフなどの視覚情報でうまく補い、その意味が正しく伝えられるよう工夫しましょう」

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