小林製薬…製薬しない製薬会社 

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「ねえパパ、どうして東京ディズニーランドは、千葉にあるのに東京ディズニーランドなの?」ある朝、8歳の娘が言った。そういえばそうだなあと思いつつ「それは、千葉や浦安って言うより東京って言う方がかっこよく聞こえるからじゃない?東京の方が外国の人にも有名だし・・・」と答えた(千葉県民の方々すいません・・・)*1。

「熱さまシート」「のどぬ~る」「しみとりーな」など、独特のネーミング戦略*2で有名な小林製薬にも、同様のことが言える。実は、小林製薬はほとんど製薬していない。そのビジネスの8割以上は、トイレタリー製品などの非医薬品で稼いでいる。したがって、『会社四季報』でも、「医薬品」ではなく、花王やライオンと同じ「化学」という企業カテゴリーに入っている。なのに、企業名は「小林トイレタリー・プロダクツ」ではなく「小林製薬」である。

ブランド・コンサルタントは、「社名と事業領域のミスマッチは、解消すべきである」と主張する。確かに、ブリヂストンタイヤがブリヂストンに、スズキ自動車がスズキに社名変更したように、企業の社名変更は、業容拡大や事業戦略の転換時に、その社名と事業内容のミスマッチを解消する方向で行われることが多い(最近では、「写真用フィルム」から「業務用フィルム」事業へ大きく舵を切った富士写真フイルムが、富士フイルムに社名変更した)。

社名に事業ドメインがくっついているタイプの会社(トヨタ自動車、キリンビール、三菱地所など、日本の多くの企業がこのタイプになる)が新事業に乗り出す場合、あるいは業態を変更する場合にドメイン表記が邪魔になることは、往々にしてあるだろう。名は体を現すべし、というのは至極、真っ当な考え方である。

でも、「企業ブランド」=社名の商品販売を後押しする「支援力」という視点で考えるとどうか。つまり、事業内容を反映するかどうかではなく、商品販売にプラスの影響をもたらす社名にすべきだ、という考え方である。たとえば、「ブルーレット」の製造販売会社が、「小林製薬」と「小林トイレタリー・プロダクツ」のどちらがより消費者にとって買う気持ちになるか。「製薬」と付く方が、何か効能がありそうな気がして買う気持ちになるのではないだろうか。

世の中を見渡してみると、「企業ブランド」の「支援力」を意識している名前は、特にイメージが重要なアパレル業界に多い。「サマンサタバサジャパンリミテッド*3」は、純粋な日本の会社なのでわざわざ「ジャパン」とつける必要はないのに、あえて「ジャパン」を付ける事で、元々は欧米のブランドであるかのような印象になる。「ナルミヤ・インターナショナル*4」も同様だ*5。

商品のネーミング戦略で有名な小林製薬であるが、実はその一見さりげない企業名のネーミング戦略においても「商品への支援力」を意識した、したたかな戦略を取っているといえよう。

*1 娘との会話はこの後、「ふーん。でも東京じゃないけど東京って言ってもいいの?」「それで誰かがものすごく迷惑するわけではないでしょ」と続き、結局、近々東京ディズニーランドに行くことで終結した。
*2 小林製薬の商品ブランドは、商品の内容や特質が名前を見れば一発で分かるところに特徴がある。その他、「ブルーレット置くだけ」「ノンギラス」「サワディ」など。
*3 バッグとジュエリーの企画、製造、販売ほか、オンラインショップも運営。1994年の創業来、急成長を遂げ、2008年2月期の売上高は184億円に達する。
*4 小学校中・高学年をメインのターゲットにアパレル事業を展開。1995年に創業、カラフルでポップなデザインが人気となり、2008年1月期の売上高245億円にまで拡大。
*5この「名は体を現さない」企業名にすることのリスクは、私の娘のように、細かいことを言う消費者から「名前と実体が違うとはけしからん!」と指摘されることだろう。でも、このリスクがあることは織り込み済みだろう。

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