ポスト終身雇用制の原理原則は? ―『ALLIANCE―人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用』 

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「ダイバーシティ」「多様な働き方」「女性活用」など、日本企業が長らくこだわってきた終身雇用制に変化をもたらそうとするこれらの言葉。頻繁に耳にするようになって久しいが、実際には、実現方法に苦労している企業も多いのではないだろうか。

そのヒントになる1冊を紹介したい。本書では、会社と個人との雇用関係を「取引」ではなく「関係」、いわば「アライアンス」と捉えようと提起している。アライアンスとは、雇う・雇われるという上下関係ではない。会社と社員が互いに「どのような価値を相手にもたらすか」に基づく関係であるとしている。そして社員は「コミットメント期間」を設定して、定めたミッションを期限内に成し遂げることに専念し、企業はミッションを成し遂げるための環境を用意することが求められるのだ。

そして、会社と個人の関係は、この「コミットメント期間」によって信頼関係を構築し、次のコミットメント期間に入っていく。このサイクルを積み重ねていくことが理想である。

このサイクルが実現されることによって、もたらされるメリットは大きい。社員が会社への信頼感を持つと、自発的に、自らが持つ社外の情報やネットワークを会社に活かそうと行動し始める。会社にとっては、自然に社外の視点が内部に入ってくる構図だ。

このサイクルを実現するためには、会社と個人の間で、目標や価値観の「整合性」を取ることが求められるが、それは個人の全人格を会社に一致させようということではない。「共通点を見つける」という考え方である。会社としては、あくまで社員のコミットメント期間における目標や価値観との整合性を図るのであって、人生における目標や価値観とまで一致させる必要はないのである。

この視点が、多くの悩める日本企業が取り入れるに値するポイントではないだろうか。

日本企業の終身雇用制では、社員は家族のような存在となる。ある意味で、全人格を会社にそろえる仕組みとも捉えられる。日本企業での働き方に馴染み深い方には、コミットメント期間という社員の「一部分」とだけ整合性を取る、という考え方は目新しいかもしれない。

この「コミットメント期間」の考え方を、今すぐにそのまま日本企業へ導入するのは難しいのが現実だろう。社員一人ひとりの価値観は何か、何にコミットしてもらうのか、それはいつまでに成し遂げるのか、成し遂げた場合どう評価されるのかなど、双方が納得いくまですり合わせすることができる企業は多くはないからだ。

とても基本的なことのように感じられるが、会社と社員の対話の機会を増やし、仕組み化していくことが、「アライアンス」への第一歩になる。本書は、遠い未来の話をしている書籍ではない。日本企業の近い将来へ一石を投じる本だと思う。

『ALLIANCE アライアンス―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用』
リード・ホフマン、ベン・カスノーカ、クリス・イェ著
篠田 真貴子、倉田 幸信訳
ダイヤモンド社 1,500円(税込1,620円)

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