チャンスをピンチにしないために ―『27歳からのMBA グロービス流リーダー基礎力』 

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一般にリーダーに抜擢される事は「チャンス」だと言われる。しかし、それが大きな「ピンチ」になりうる事を認識している人は、どれだけいるだろうか。「チャンス」を「ピンチ」にしないための指南書『27歳からのMBA グロービス流リーダー基礎力』を取り上げたい。

『27歳からのMBA グロービス流ビジネス基礎力』シリーズの第3弾である本書は、グロービス経営大学院で教壇に立つ4人の執筆陣が30代前半までに身につけておきたいリーダーとしての「力」を10個抽出し、その身につけ方までを整理したものである。

突然だが、こんな光景を想像してみて欲しい。

あなたはサッカー日本代表の試合をスタンドで観戦している。試合中、日本のエースストライカーが怪我をしてしまった。監督はなぜかスタンドにいるあなたを呼び出し、「この試合には絶対に勝たなくてはいけない」と、ピッチにあなたを送り出してしまった。しかし、あなたは野球しかやったことがなく、サッカーのルールはよく分からない。呆然と立ち尽くすあなたにスタンドから大きなブーイング。呆れた味方選手たちは1人また1人とピッチから去っていってしまい、気がつけばあなたと相手選手だけがピッチに残った・・・。

サッカーの日本代表に、こんな滅茶苦茶な抜擢は起きないだろう。では、次のような光景はどうだろうか。

有能なプレイヤーとして結果を出してきたことが評価されたあなたは、新商品開発プロジェクトのリーダーに突然抜擢された。10人の部下があなたの下に配置され、意気揚々とスタートしたものの、よく考えてみたら新商品開発に向けて何から手を付ければ良いのか皆目見当もつかない。そもそも部下を持った経験がなく、何を指示して良いかも分からない。思考錯誤しながらあっという間に1カ月が経った。そんなある日、ある部下が退職届けを持ってあなたの元へやってきた・・・。

これは、サッカーの話と同じくらい滅茶苦茶なのだが、会社では至るところで行われている采配だ。

上記のように突然リーダーを任されることは、特に20代後半から30代前半の若手社員には、いつ起こってもおかしくないことではないか。実は私自身同様の経験をした。そして、かなり苦い思いをしている。当時は「自分なりに」リーダーを精一杯務めたつもりだが、プレイヤーとリーダーでは「働き方のルールが変わる」ということに気付くことができず、もがき苦しんだ。リーダーになる準備がまったくできていなかったがために、自分だけでなくチームメンバーにも辛い想いをさせてしまった。

正直、あの頃本書に出会っていれば・・・と思う。

本書は、「ビジネスで成果を出すこと」を目的に設定し、リーダーとして必要な力を「ビジネスそのものを理解する」「ビジネスを動かす」「リーダーとしての基盤をつくる」という3つの視点から抽出している。かなり実践的な内容である。

各章の冒頭には、読者が自分自身の力を確認するための7~8個のチェックリストがついている。◯が少ししかつかなければ、その章を念入りに読み込む。例えば、第4章の「目標設定力」では、「明確な目標があり、その目標が自分自身に力を与えているものになっている」などのチェックリストが8つ並んでいる。10の力のチェックを全て試してみたが、ドキッとすることが多かった。既にリーダーとして歩き出している人にとっても自分自身の状況を客観的に見ることができる指針にもなる。「リーダーになる」という旅に出る人、既に旅に出た人にとっての良きガイドマップとなるだろう。

「チャンス」は突然やってくる。振り返ったら誰もいないでは済まされない。「ピンチ」としないためにも、早めの準備をお薦めする。

27歳からのMBA グロービス流リーダー基礎力10 単行本
グロービス経営大学院 (著), 田久保 善彦, 荒木 博行,金澤英明、村尾佳子 執筆
東洋経済新報社
1620円

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