新型iPhoneで強化されるアップルの「カスタマージャーニー」戦略 

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9月9日(日本時間の9月10日)、米アップルがiPhoneの新機種「6s/6s plus」を発表しました。9月25日から全世界で発売されるとのことで、既に購入を検討されている方もいるでしょう。

今や「世界のスマートフォンビジネスによる営業利益の92%がアップルのもの」(注1)と言われ、国内では5割近いシェアを持つiPhoneですが、なぜこんなにも売れているのでしょうか。その秘密は、アップルの徹底した「カスタマージャーニー」戦略にあります。

実は、今回発表された6sもそうですが、近年のiPhoneは端末の性能だけ見れば、競合製品(グーグルのAndroidを採用したスマートフォン)と比較して、決して技術的に最先端でもないし、コストパフォーマンスで優れているわけでもありません。サムスンの「Galaxy S6」のほうが、半導体チップの性能やカメラの画素数、重量とバッテリーの持ちや価格で見れば、iPhone6sをずっと上回っていると指摘されています。

しかし、そんなことはおそらくiPhoneの購入を検討しているユーザーにとってみれば「どうでも良いこと」でしょう。なぜなら、ユーザーはiPhoneの端末性能を買っているのではなく、美しいデザインのウェブサイトで商品紹介を眺め、まるで近未来の高級ブティックのような雰囲気の漂うアップルストアを訪れて丁寧な接客を受け、自分がこれまで使っていたアプリをワンタッチでそっくりそのまま移行できる便利さに酔いしれ、故障してもアップルストアの親切なサポートスタッフ(その名も「アップル・ジーニアス=天才」!)が安心の対応をしてくれるがゆえに、iPhoneを買うのだからです。

このような、顧客の買う前から買った後まですべての「体験」のことを、「カスタマージャーニー(顧客体験の流れ)」と呼びます。アップルは、1997年に経営に復帰したスティーブ・ジョブズによってそれまでの家電量販店中心の販売をほとんど打ち切り、独自のデザインによる「アップルストア」を開設して販売する方式を導入するなど、20年近くかけてこのカスタマージャーニーを作り上げてきました。

            顧客はアップルからiPhoneではなく             「iPhoneを使う体験」を買っている

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今回の新製品でも、端末のスペックなどは前モデルとそれほど変わらないものの、販売方式に関して大きな変更が行われました。端末の販売が、12日からの予約販売優先となったのです。これまではアップルの新製品発売時には、アップルストアの前に熱烈なファンによる長蛇の列ができることが話題になってきましたが、アップルの小売部門の副社長アンジェラ・アーレンツ氏(ファッションブランド「バーバリー」の元CEO)は「最高のブランドの店舗に行列はふさわしくない」とコメントしており(注2)、予約注文優先は店頭の行列をなくすための方策と見られています。

iPhoneが高価格で、しかも最先端の性能の製品でないにもかかわらず、これだけ高いシェアと人気を誇っているのは、顧客が製品だけではなく、「iPhoneを買って使う」という体験すべてにお金を払っているから、といえるのではないでしょうか。

こうした顧客体験全体を通じたブランド価値の高め方について、詳しくは拙著『プラットフォームブランディング』をぜひご参照ください。

注1:投資銀行カナコード・ジェニュイティの調べによる。「スマホの利益、米アップルが92%占める サムスンは15%どまり」(日本経済新聞電子版2015年7月14日付)
注2:「アップル、2015年秋の新製品を大予想 (1)感圧タッチ搭載でユーザー体験を刷新する次期iPhone」(ITPro 2015年8月31日付)

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