長寿企業の秘訣は変化の緩やかな領域で戦うこと 

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日本の長寿企業に関する本はたくさん出版されていますが、それらは大別して企業の3つの側面を扱っています。第1は歴史的側面です。日本で良い企業がつくられた理由として、日本が外国からの侵略が少ない国であったこと、江戸時代から教育水準が高くて皆が読み書き算盤ができていたことを挙げています。第2は文化的側面です。例えば、日本では家という制度があって継続することを非常に重視する文化がある、農耕的民族性ゆえにコツコツ物事に取り組むことが得意である、といったふうに日本の文化に着目します。第3にファミリービジネスであることを長寿の直接的な理由と見なしています。

ここで、これらの諸点に納得し、理解した“ふり”をすると、非常に大事な事柄を見過ごすことになります。その企業が経営においてどのような工夫をしてきたのかという点が、一切無視されてしまうのです。そこで今回書いた本(『創業三〇〇年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか』)の中では、歴史的側面や文化的側面、継続性よりも、企業経営における工夫について考察を進めました。

その結果、面白いことに気付きました。長寿企業は、ある特徴を持ったフィールドにおいてビジネスを展開しているということです。そのフィールドの特徴とは、変化のスピードが遅いということです。例えば旅館やホテルは、100年前でも200年前でも、基本的には寝床と食事を提供するくらいですので、その機能に大きな変化はありません。またお酒や和菓子も同様で、何百年前もお酒や和菓子であったことに変わりありません。建築業も今も昔も変わらずに建物を建てることを目的とした業種です。これらと比べると今のデジタル家電や携帯電話のようなビジネスは、提供している本質的な価値がコロコロ変わって行きます。これに追従して行くのは非常に大変です。変化のスピードが緩やかであれば簡単だとは言いませんが、緩やかな分、落ち着いていろいろなことに対応していくことができるのでしょう。

企業が長期間存続できる領域とは?

また、機能の変化が小さいところに集中しているという特徴も見られました。例えばお酒や和菓子は変化が相対的に緩やかな上に、本質的な価値はあまり大きくは変わりません。ガラガラ物やコトを変える必要がないために長持ちしやすいのです。この点については、変化のスピードが緩やかであっても機能の変化が大きい領域と比較するとわかりやすいでしょう。例えば、自動車であれば、できた頃から自動車としての機能そのものはあまり変わっていません。しかし、ガソリンエンジンがハイブリッドになったり、電気自動車や燃料電池自動車が出てきたりと、変わる時には大きな変化が見られます。

わかりやすくするために、変化のスピードを横軸に、提供されているサービスの機能の変化の大きさを縦軸に取ってみましょう。変化のスピードが緩やかで機能の変化が小さいところには、お酒や和菓子、旅館が入ります。変化のスピードが緩やかで機能の変化が大きいところには、自動車やアナログ家電が入ります。変化のスピードが大きくて機能の変化が大きいところには、カメラのフィルムやレコード、フロッピーディスクといった、市場から無くなりかねない商品が入ります。このように考えれば、企業が長期にわたって存続する秘訣のひとつは、変化のスピードが緩やかな領域で戦うことのように思えるのです。

(本記事は、FM FUKUOKAのラジオ番組「BBIQモーニングビジネススクール」で放送された内容をGLOBIS知見録用に再構成したものです)
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