「100の行動」の5つの重要課題 

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「私は、あなた方に謝らなければならないことがあります。我々の世代は、1000兆円にも及ぶ負債を、あなたたちに残していくことになり、本当に申し訳ないと思っています。」

オリックス シニア・チェアマンの宮内義彦氏が、G1経営者会議でお話しされた言葉だ。GDPの2倍を超える借金を作った責任は、政治家だけにあるのではなく、その同時代に生きた人々にもある。今年80歳を迎える大物財界人が、後に残された私たちに対して、その世代の一人の日本人として、お詫びをされたのだ。

当然ながら、私たちの世代も、後の世代に対して責任を持たねばならない。次世代につながる明るく希望ある日本を、自分たちの手で作り上げるために、これまで100の行動を執筆し、行動してきた。

しかし、日本と日本人が持つリソースは限られている。「100もあると覚えきれない。何が重要なの?」という質問もよく受ける。私たちは優先順位をつけて「行動」を実行していく必要がある。

99回目の行動は、「100の行動」の5つの重要課題について論じることとした。

1. 少子化・人口減少問題~日本社会の根底を揺るがす危機だという認識を持とう!

今の状態を放置し続けると、日本の人口は2050年に9500万人、2100年には4700万人まで減ってしまう。半分以下となる。

少子化が続けば、生産者人口が減り、消費者人口も減る。その結果、日本経済は縮小し、税収も減り、社会保障を維持することも不可能となり、国力が低下し、財政が破たんする。人口が維持できず、消滅する市町村も数多く出てくるであろう。このままでは、日本が老人ばかりの衰退国家となってしまう。

そう考えていくと、少子化・人口減少問題は、日本が抱える最も大きな問題だということがわかる。我々日本人は、今の少子化の現状は、日本社会の根底を揺るがす危機的状況だという認識をもって行動する必要がある。

そのための具体的な行動は、

100の行動39厚生労働5 「少子化対策のためにタブーに立ち向かえ~婚外子を認める社会に!」

100の行動80法務3「新渡来人計画!戦略的に移民を受け入れ、活力ある日本を創ろう!」

に示した。
特に重要課題は、少子化問題だ。政治、行政、経済人、そして国民一人ひとりが最大の危機感を持って、それぞれができることを実行し、少子化問題を克服していきたい。特に結婚する割合が減る中で、日本でも婚外子を認める社会に転換していくことが、とても重要だ。

欧米の婚外子割合を見ると、日本との大きな違いに驚く。日本では、婚外子は2.1%にすぎないが、スウェーデンでは54.7%、フランスでも52.6%と、半分以上が婚外子である。ちなみに、スウェーデンもフランスと同様、1990年代に1.5台まで下がった出生率を2011年に1.9まで回復させることに成功した国だ。

さらに、養子縁組を増やし、子育て支援の政策総動員をはかり、子供を増やす税制優遇か表彰制度を導入することを強く薦めたい。この少子化・人口減少問題が、日本が抱える最大の問題であるとの認識を共有し、できるところから行動することがとても大事だと思う。

2. 財政再建・社会保障改革~手がつけられるうちに全てを実行しよう!

2015年6月末、ギリシャはIMFへの債務15.4億ユーロ(約2000億円)の返済不能に陥り、ギリシャの銀行の前には多くの市民たちが立ち並んだ。政府が銀行の営業を停止し、窓口での預金引き出しを制限したからだ。

今後の状況はEUなどの債権団次第だが、総額3130ユーロ(約42兆円)の債務を抱えるギリシャには、今後も毎月多額の返済が待ち構えている。EUなどからの支援継続には、条件として求められている増税や緊縮財政が必須となり、そのツケはギリシャ国民が支払うこととなる。国の借金のツケはどのような形であっても、その国の国民が支払うしか方法はないのだ。

ギリシャの姿は他人事ではない。たった42兆円の債務を持つギリシャに対して、日本は国と地方を合わせて1,000兆円を超える債務を抱えている。現在の日本の長期債務残高の水準は、統計が取れる明治23年以降、過去120年間で最悪の水準である。太平洋戦争の時よりも悪いのだ。

戦後の日本もドッジラインによる緊縮財政と、286.2倍にも達する激しいインフレによって、日本国民の大いなる犠牲の上に財政再建が行われた。

国民は国の借金から逃げようがない。そのツケはいつか必ず何らかの形で回ってくるのだ。財政破綻による緊縮財政が先か、激しいインフレが先か、はたまたギリシャのような海外や市場からの圧力が先かに関わらず、「必ず」ツケは回ってくる。

幸い、日本にはまだ時間が残されている。我々は、追い込まれる前に、手をつけられるうちに、すべての行動を実行に移さなければならない。

そのための行動は

100の行動27財務1「財政再建の道筋を!」

100の行動28財務2「歳出削減のしくみを政府に組み込め!」

100の行動29財務3「聖域なき歳出改革を!(社会保障)」

100の行動30財務4「聖域なき歳出改革を!(独法改革、政府調達等)」

100の行動31財務5「税制の抜本的な改革を!<歳入改革>」

100の行動35厚生労働1「医療保険―高齢者を含め自己負担を一律3割にせよ!」

100の行動36厚生労働2「年金制度改革 抜本的な問題解決から逃げるな!」

100の行動37厚生労働3「介護保険制度~医療保険同様に一律3割負担を!」

100の行動38厚生労働4「生活保護制度~支給額を基礎年金以下に切り下げよ!」

において示した。

私たちに残された時間はそう多くはないだろう。我々は、歳出改革、社会保障改革、そして経済成長と、今できる「行動」をすべて実行していくしかない。

3. 安全保障・外交の再構築~現実を直視して日本の国益を守り、世界をリードしよう!

2015年6月、中国はフィリピンなどと領有権を争っている南シナ海の南沙諸島において大規模な岩礁の埋め立て工事を完了した。次の段階として、海上救難や防災対策、航行安全などを目的とした施設を「人工島」上に建設するとし、滑走路の建設も進められているとされる。

中国は民生施設であることを強調するが、非軍事的な手段を使って権益を徐々に拡大し、覇権を確立していく中国の常套手段であることは明らかだ。南シナ海では、中国は北西部に位置するベトナム・トンキン湾入り口近くの中越の境界未確定海域での石油の試掘も進めている。東シナ海における尖閣への漁民の大挙やガス田開発とまったく同じ戦略だ。

中国の膨張志向はこの地域にとどまらない。クリミア問題で欧州諸国と対立を深めるロシアと組み、中国は2015年に初めて地中海でロシア艦隊との合同軍事演習を実施した。さらに8月には中露両国海軍は日本海で合同軍事演習をする予定だ。

日本の周辺には、これだけ明白に海洋における覇権を拡大しようと行動する大国中国に加えて、いつ暴発してもおかしくない北朝鮮という国家も存在している。今問われているのは、この厳しい現状を認識して、日本が自国の防衛のためにいかなる行動を起こすことが必要かという問題なのだ。

2015年現在、国会では安倍政権が提出した安全保障法制の議論が行われているが、日本の置かれた安全保障環境を冷徹に認識し、批判や足の引っ張り合いではなく、与野党が協調して法案の成立に向けて努力してほしい。

加えて、軍事力だけで平和を維持できるわけではない。安全保障を含めた日本外交の再構築が喫緊の課題である。2006年以降、総理大臣が毎年毎年変わるという政治の停滞によって、日本外交は大きく毀損した。2014年以降は安定した政権が誕生し、日本の海外におけるプレゼンスも高まりつつある。政府のみに頼らず、我々日本人ができる限りの「行動」を実行しなければならない。

そのための「行動」は、

100の行動15外務1「日本の国力・パワーの増強と外交インフラの構築を!」

100の行動16外務2「ハードパワー(防衛力)」

100の行動17外務3「外交パワーを上げるために経済力・資源力を向上させよ!」

100の行動18外務4「ソフト・パワー(文化力・教育力・観光力等)」

100の行動19外務5「レジティメート・パワー(国際機関を通しての発言力アップを!)」

100の行動20外務6「アライアンス・パワー(同盟とパートナーシップ)」

100の行動21外務7「ODAパワー」

100の行動22外務8「コミュニケーションとネットワーク・パワー」

100の行動23防衛1「現実を直視した憲法改正!安全保障政策を!」

100の行動24防衛2「防衛力の選択と集中を!核兵器保有の選択について議論を!」

100の行動25防衛3「サイバー戦争、宇宙戦争への備えを!」

100の行動26防衛4「安全保障政策の司令塔を!」

100の行動91世界の中の日本編3「Gゼロ世界の中での日本の国際貢献」

100の行動92世界の中の日本編4「戦後70年~未来に向けた北東アジアとの関係構築を!」

において示した。

第二次世界大戦後、一貫して世界の中心にいたアメリカのリーダーシップが限界に達し、世界はますます多極化している。各国でナショナリズムが台頭する混沌とした過渡期の今だからこそ、日本がリーダーシップを取り得る余地がある。

2013年に発足した安倍政権は、「地球儀を俯瞰する外交」「積極的平和主義」を旗印に、安全保障と外交の再構築に尽力している。この姿勢を積極的に評価したい。一方、世論がまだついていけないのも事実である。政治家だけでは、日本は変わらないのだ。

これからの経済・学界などのリーダーたちの積極的な発言・行動を期待したい。

4. 強い地方の実現・道州制~ただちに行動を起こし、消滅の危機を回避しよう!

「2040年までに全国約1800ある市区町村のうち、896が消滅する可能性がある」

元岩手県知事の増田寛也氏などによるシンクタンクが2014年に発表した予測は、日本に衝撃を与えた。若年女性人口の流出にともなう出生数低下と高齢化に伴う人口減少で、896におよぶ自治体の運営が立ちいかなくなるという予測だ。

これを防ぐにはどうすれば良いのか。それは、若い人たちにとって住む価値のある魅力ある地域に、それぞれの地方都市が生まれ変わることだ。教育、育児環境、経済、仕事、社会インフラ、行政サービスに加えて、制度や税率などを日本中の自治体が競い合って良くする必要がある。

このため、100の行動では、地方で大規模な経済を働かせ、自由に競争できるよう、10の道と2の特別区からなる「廃県置道」を提唱した。

「廃県置道」では、都道府県よりも大きな規模を持った各地方の「道」が、それぞれ切磋琢磨し、内外で競争し、経済成長と効率的な行政サービスを実現する。それによって日本全体を強くする。「消滅していく地方都市」という地方の問題は、競争し合う地域間競争によって、それらの地域で解決していくしか方法がないのだ。今や中央集権による体制では、地方の問題は解決できない時期に来ている。地方分権型の道州制により、地方の問題はそれぞれの地域で解決してもらうのが一番良い方策である。今こそ国のかたちを変える、抜本的な改革が求められているのだ。

道州制の導入と合わせて、地方の改革、農業の競争力強化、東北の復興、沖縄の発展などを進め、日本の地方都市を力強く再生する必要がある。

その詳細は、

100の行動44農林水産1「農業を成長産業に〜新規参入・大規模化・効率化を促せ!」

100の行動45農林水産2 「農協を分割し、ネット等による新規参入を促し、農業流通改革を断行せよ!」

100の行動46農林水産3 「守りから攻めの発想へ転換を~日本の農業を世界へ!」

100の行動61国土交通5 「発想を転換し過疎化を肯定的に捉えよ!地方都市への集住を促進し、都市化率を上げる政策を!」

100の行動67総務1「廃県置道①10の道州、300の基礎自治体による、新しい国のかたちを!」

100の行動68総務2「廃県置道②中央政府から地方へ権限と人材を移管せよ!」

100の行動69総務3 「廃県置道③地方の自立を!中央政府:道政府:基礎自治体の財源比率を1:4:5に!」

100の行動70総務4 「5つの行動で「同時多発的」な自治体改革を!」

100の行動71総務5「基礎自治体議会は夜間土日開催の日当制を!道議会は、責任ある分権国家の経営を!」

100の行動82復興「「職」「町」「人」の面で新たな東北復興ビジョンを描け!」

100の行動85内閣府4「産業、観光、サービス、農林水産業による地方創生を!~「なめんなよ茨城県」の事例から学ぶ」

100の行動87内閣府6 「沖縄の法人税・消費税を免除し、ヒト・モノ・情報が結集する東アジアのハブを目指せ!」

100の行動88内閣府編7 「福島の未来~「イノベーション・コーストふたば市」構想の実現を!」

において示した。このままでは日本の地方都市は本当に消滅してしまうだろう。その危機感をもって、大胆な抜本的改革を実現したい。

5. 日本人の尊厳・アイデンティティの確立~未来の子供たちから無責任だと言われないために、今「行動」を起こそう!

イギリスBBCが行っている世界各国の好感度調査の結果をみると、最新の調査で日本はドイツ、カナダ、イギリスに次いで、4位につけており、日本人に対する世界からの評価は非常に高いことを表している。一方で、日本人は他国の人々に比べて、自己肯定感が極めて低いことが知られている。2014年に内閣府が行った調査でも、欧米諸国や韓国に比べて、日本の若者は自己評価が低く、将来を悲観しているという調査結果が出ている。

「海外からの評価は高いのに、自らに対しては自信がなく、国に誇りが持てない」、これが日本人の現状だ。

我々はもっと、自らに対する自信を深め、より積極的に世界に貢献していくことが望ましい。そのためには、

(1)日本人としてのアイデンティティの確立
グローバル社会になればなるほど、日本人としての道徳や歴史観、アイデンティティが重要になる。100の行動49文部科学3でも示したように、初等教育の段階から、子どもたちが将来どういった形で日本や世界に貢献するかという志や、その前提となる道徳や歴史観、アイデンティティを伝えることが重要だ。

(2)歴史、特に近代史を学ぶ機会の提供
日本人が自らの歴史、特に近現代史に対する健全で偏らない歴史観を持つことが重要であることは言うまでもない。学校教育の段階でももちろんだが、社会人になってからも自ら学びの機会を設けることは重要であろう。自国の歴史に関して、近現代という時代背景のもとで何が問題であり、何が正しかったのかという健全な歴史観を個々の日本人が持つことが必要だ。

(3)あらゆる機会を通じた対外的な発信
その上で、事実に基づいた明確な歴史観のもと、間違った認識については、しっかりと是正しなければならない。莫大な借金を放置することは次世代に対して無責任である。同様に日本に対する世界からの誤った認識を是正せずに放置することは、次世代の子供たちに対して極めて無責任である。

そのための行動については、

100の行動89世界の中の日本編1「日本への正当な評価を確立するために政府・企業・メディア・個人が行動を!」

100の行動90世界の中の日本編2「日本人としてのアイデンティティを持ち世界と接しよう!」

において示している。

これは政治に任せておいてよい問題ではない。歴史に対する正当な認識を誤りなく後世に残すために、日本人一人ひとりが世界に対して歴史的事実を毅然と発信し続けることが重要だ。

100の行動の中でも、1)少子化・人口減少問題、2)財政再建・社会保障改革、3)安全保障・外交の再構築、4)強い地方の実現・道州制、5)日本人の尊厳・アイデンティティの確立が、最も重要であると認識している。

逆に言えば、「100の行動」の他の行動が実現できても、ここで述べた5つの重要課題が解決しなければ、僕らの100の行動による「静かな革命」は失敗したことになる。5つの重要課題は、それぞれが難しい問題ばかりだ。だが、日本人が危機意識を共有して、一致団結すれば解決することができると僕は信じている。

もしも僕らの世代で解決できなければ、80歳前後になった時点で、次に続く世代に頭を下げてお詫びする必要があろう。そうはしたくない。だからこそ今、行動が必要なのである。

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