新興国で成功するために捨てるべき2つの思い込み【解説編】 

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【LV Prasad病院からの学び】

・新興国や発展途上国の消費者には高品質なものは必要ないという思いこみを捨て去るべき
最も訴求すべき価値を定義し、その部分にフォーカスして徹底的に高品質化し、顧客に訴求する
・スタートアップでも自社に合わない人材は勇気を持って入れ替える。チャレンジはお金ではなく、人材である

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Dr. Rao氏へのインタビューから学ぶべきことは、2つの思い込みを捨て去るべきということだ。

思い込みの1つ目は、「新興国の消費者には最高品質のものは必要ない」、あるいは「低価格で提供するには、ある程度の品質を諦めねばならない」という品質に関する思いこみだ。2つ目は、「新興国において優秀な人材を最初から集めるのは無理だ」という人材に関する点だ。

Value Sweet Spotに絞って高品質な商品やサービスを維持

1つ目から見ていこう。現にLV Prasad病院では最高品質の白内障手術を提供している。最高品質の手術を行っているからこそ、インド中の裕福な患者を惹きつけ、裕福な患者との相互補助により貧しい患者にも治療が提供できるビジネスモデルが可能となっている。新興国や発展途上国に住む人々も、人は皆良いものを使いたい、良いサービスを受けたいと思っているのだ。

そうは言っても、こうした環境で最高品質のものを提供するには、工夫がいる。その工夫の鍵となるのが、「Value Sweet Spot」という考え方だ。顧客が最も大切だと思う点、言い換えれば、最も高い提供価値にフォーカスして、その部分のみに最高品質を実現するやり方だ。白内障の治療で言えば、最高の技術で難易度の高い目の部分の手術を安全に行うことである。

これまで日系企業の多くは、高品質を売りにする場合は全ての機能を高品質にしてしまい、一方で、低価格を売りにする場合はならば全ての機能の品質を落としていた。品質を上げることに血眼になっていると、ユーザーが本当に欲しい品質はどこの何なのかを見失う。しかし、新興国の制限された環境の中では、「一番ユーザーが欲しがっているものは何か?それをどうやって提供するか?」を考えざるを得ず、結果、的を絞った高品質な商品やサービスが実現できるのだ。

このようなイノベーションの考え方は、先進国でも多くのビジネスモデルに取り入れられている。一つ分かりやすい事例としてホテルの例を紹介しよう。下記の図で示されるように高級ホテルは全ての機能を高品質にして高価格で提供する。一方、低価格ホテルは全ての機能を低品質にすることで低価格を実現しがちだ。バリュー曲線が高級ホテルでは高いレベルで、廉価版ホテルでは低いレベルで一直線になっている状態だ。

これに対して、Value Sweet Spotに焦点を当てることで、「質の高い眠り」の提供を実現しているのがビジネスホテルの remmだ。このホテルでは、経費節減下の忙しいビジネスパーソンをターゲットにして、「寝るための空間の提供」に焦点をしぼり、寝心地のいいベッドと快適な寝室空間のみ(ターゲット顧客のSweat Spot)を高いレベルで提供し、その他の機能につては極力低コストに抑えている。ホテルに寝るだけのために帰ってくる疲れたビジネストラベラーにとっては、最高のサービスを格安で受けられることになる。このホテルのバリュー曲線は価値発揮すべきポイント部分のみ高いレベルを示すジグザグのラインとなる。

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「BLUE OCEAN STRATEGY」HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESSを参考に筆者作成

イノベーションを実現するには、人材面で妥協してはならない

もう1つの思い込み。人材面に関して。新興国でビジネスを行う際に、人材採用面で妥協をしがちだ。そもそも人を取るだけでも大変な中で、少々の難があっても特にスタートアップ時には人がいないと困るので、雇用し続けてしまう。しかし、LV Prasad のDr. Raoが「最大のチャレンジはお金ではなかった。最大のチャレンジは人材であった」 と述べている通り、最高の人材を獲得することに徹底的にこだわっていることを強調しておきたい。特に初期のビジネス創生期にも関わらず(創生期だからこそ)、合わない人材は躊躇なく入れ替えている。これができるかどうかが並みの組織との違いであると言い切る。

最高の人材にこだわり続けたからこそ、イノベーティブなビジネスモデルの構築と運営が可能になっていることが伺える。初回のユニリーバの事例と重なるが、新興国でビジネスを創るには、有能な人材を現地に送り込み、有能な人材を採用することが肝であることが、ここインドでもリマインドされた。

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