収益の50%は新興国から!ユニリーバの強さの秘密は4つの“P" 

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経済が活況のアジア。その現場を預かる現地の経営は、さぞバリバリとダイナミックに事業を進めているだろうと想像するかもしれない。しかし、当地の日系企業の経営者の声を聞くと、「中国景気の減速や日中の政治リスクの高まりから、積極的にASEANで案件を作って欲しいと本社からの期待は高い。追い風なんだがそれがプレッシャーに」「優良案件には競合も素早く対応するので、どんどん置いて行かれてしまう」「いざ行くぞとなっても、本社からいろいろ意見が付いて調整事項で手一杯になっているうちに、競合に持って行かれてしまう」と精彩を欠く答えが返ってくる。本社から注力されているにも関わらず、スピーディーに事業展開し「実行力」を発揮する企業と、そうでない企業との差はむしろ開くばかりに見える。

そこで、初回は先進国発の企業でありながら、新興国での事業開拓にも強みを発揮している、ユニリーバ・アジアのマーケティングディレクター Sandeep Kohli氏に、アジアの新興国で新しいマーケットを生み出し、成果をあげる鍵は何かを聞いた。

ユニリーバは収益の50%を新興国から上げている、その実行力の秘密は何か?

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Sandeep:新興国では新興国に適したアプローチを実践しなくてはならない。想像してみて欲しい。我々自身の経験もなく、そもそも未成熟なマーケットで一からビジネスを組成するには、自社だけでビジネスを創るのは不可能だ。しかし、ユニリーバは、独自の方法論を持っている。新興国アプローチの4P(People、Partnership、Purpose、People)を紹介しよう。

最初のPeopleは、その国の消費者を指す。日用品を売る我々は当然その国の人々の生活を理解しなくてはならない。次のPartnershipは、販売店や流通網などだ。我々はパートナー企業の人材育成やシステム投資などを積極的に支援し、相互に利益をあげることを常に目指している。

3つ目のPurposeが特に新興国では重要と考える。例えば、そもそも何のためにミャンマーで仕事をするのかを明確に言える企業はどれだけあるだろうか?縁もゆかりもない土地で新しいマーケットを創造し、様々な人々を巻き込むには、その国で何を成し遂げようとするのかを掲げ、その掲げた目的が共感を得るものでなければならない。

例えば、新興国で石鹸を売ることに対しては、「子供たちの命を救うため」という目的を置いている。発展途上国では、何千万人という子供たちが、非衛生的な環境、公衆衛生の不備のため、5歳になる前に命を失っている。従い、我々は石鹸を売るのを目的にするのではなく、どうやって手を洗うのかを子供たちや、その親に教育し、子供たちの衛生状態の改善を目指す。ユニリーバでは、こうした活動をCSRと位置付けるのではなく、事業そのものとみなす。人々に奉仕し、コミュニティに奉仕すること自体をビジネスモデルに組み込むことが鍵である。

新興国の人々にこうした価値提供することが、我々のDNAに組み込まれている。我々は、各国で「最も尊敬される企業」になることを目指しており、事実、インド、インドネシア、ブラジルなどでは最も働きたい会社として、学生からもランク付けされるようになっている。「愛と尊敬」をキーワードとしてもって消費者やコミュニティに向き合っているからだ。

4つ目は、再びPeople。ここでのPeopleは我々の従業員を指す。新興国でも、従業員には高い基準を置いており、人材投資にコミットしている。人材投資に熱心な企業でも、ミャンマーの従業員はミャンマーのベスト人材を目指すといったレベルで考えてはいないか?ユニリーバでは、新興国の人材も世界で通用するベスト人材として育成する。人々が「より心地よく」「より格好よく」生活して欲しいという想いが、世界中のユニリーバの社員の行動に貫かれている。リーダーシップや価値観の基準に妥協はない。現に私は、世界中どこのユニリーバのオフィスに行っても「ユニリーバを肌で感じる」ことができるのだ。

この点について、私は多くの日本企業の海外での仕事の進め方には大変尊敬の念を持っている。なぜなら、日本企業はビジネスの成長や収益にフォーカスするだけではなく、その国の文化や伝統を重んじているからだ。さらに、現地のコミュニティを支援したり、現地の人々の福祉にまで注意を払っていることも素晴らしい。

なぜ難易度の高い新興マーケットで4Pを構築することが可能なのか?

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Sandeep:行くと決めたマーケットには、リーダーが徹底的にコミットし、そのコミットを「見せる」ことだ。例えば、ユニリーバの社長は、ミャンマーに実際に何度も訪問している。180カ国で毎日20億人に商品を提供している企業のトップが年に何度もミャンマーに足を運んでいることは並大抵ではない。しかし、社長が「見える」ことが大事だ。

次に、“Baby cannot nurture Baby.” “Baby needs Father!” ということだ。新興国のまだ小さなマーケットだからと言って、経験の浅い人材や若手を現地に送ってはならない。多くの企業が新興国で犯す過ちだ。新興国で自社の仕事のベストプラクティスを伝え、組織に落とし込むには大変な努力と能力が必要だ。子供が生まれたての子供を育てることができないのと同じだ。新興国にこそベストな人材を投入することを肝に銘じるべきだ。

新興国で仕事をする上で Sandeep氏自身が心がけていることは何か?

Sandeep:「心」を整えることだ。新興国では様々な困難や想定外のことが起こる。先進国の常識で考えると見誤ることも多い。このような環境では、顧客やパートナー、従業員の言っていることを頭だけで考えるのではなく、自分に話をしてくれる人に共感しようとする「心」を持つことが鍵となる。頭が先に来ると、これもおかしい、そんなはずはないという意識が先に来て、純粋な目で新しいマーケットを見ることができなくなる。逆に、共感する「心」を持つことで、これまでの自分の既存の考えを壊し、常に再構築することが可能となる。

私は、一つ一つの話に対する共感力を高めるために、「マインドフルネス(心のエクササイズ)」を取り入れている。そうすることで、新しい環境や新しい考え方に向き合うことができるのだ。共感をベースとした関係構築は、日本人も元来得意な行動ではないだろうか?日本人は現地の人々と共感する心を持っているし、クリエィティビティの高い人が多いと感じている。

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