極秘スタートアップMagic Leapとは? 

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※  本記事は湯浅エムレ秀和の個人ブログから転載したものです(初出: 2015年3月3日)

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Magic Leapのホームページ

Magic Leapという会社をご存知でしょうか。アメリカのフロリダに本社を構えるMagic Leapは、2014年10月にGoogle、KPCB、A16Zといった著名投資家から$542M(約650億円)を調達したと発表しました。 さらに、GoogleからはAndroidとChromeの責任者である大物Sundar Pichai氏が取締役として送り込まれるという力の入れ具合。それでも、その事業内容は全くと言っていいほど公表されていません。

最近、そんなMagic Leapの実態が分かるニュースが少しずつ出てきました。今回は、Magic Leapの分かっている限りの実態と、今後について妄想を膨らませてみたいと思います。

少しずつ見えてきたベールの向こう側

Magic Leapは、一言でいえば仮想現実(Augmented Reality: AR)技術のスタートアップですが、彼らは全く新しいレベルのARを目指していると謳っており、それをCinematic Realityと呼んでいます。Google Glassのようなウェアラブルデバイス(おそらくメガネ型)を通じて、現実社会の中にデジタル情報が付加されて見えるような技術を開発していると言われています。

その技術は、ウェアラブルデバイスからARの光を網膜に直接照射して、現実社会からの光とブレンドして処理させることで、現実社会とARを全く違和感なく同時に体験できるようになる、というSFチックなモノのようです。網膜に直接照射すると聞くと非常に恐ろしい気がしますが、Magic Leap創業者CEOのRony Abovitz氏は、整形外科用ロボットベンチャーMAKO Surgicalを創業し、医療機器大手Strykerに$1.65B(約1800億円)で売却した経験があるので、安全性やFDA(アメリカ食品医薬品局)からの認可取得も含めてしっかり考えているのでしょう。

そのCinematic Realityを体験した人は少ないのですが、MIT Technology Reviewの記者によると、「目の前に青いモンスターが現れて飛び跳ねている。それが現実ではないと言い聞かせないと信じ込んでしまう。モンスターが近づいてくると皮膚の細かなテクスチャーまでリアルだし、腕の上を歩かれるとくすぐったかった」そうです。これが本当だとしたら、Google Glassとは全く違う次元のARのようです。

さらに面白いのは、ウェラブルデバイスにフロントカメラを付けることで、インプットデバイスにもなり得るということです。つまり、目の前で指を動かすことで仮想現実上のページを捲ったり、積み木を組み立てることで仮想現実上に3Dデータが作れるようになったりします。

CEOのAbovitz氏によると、2015年後半には開発者向けプロトタイプを公開するようで仮想現実が現実になる日は案外近いのかもしれません。

Magic Leapの何が凄いのか?

Magic Leapをはじめとする ARは、デジタル世界をより身近なものにする転換点になると期待されています。

コンピューターの進化の歴史を辿ると、それはコンピューターをどんどん身近にさせるものでした。大きさは、体育館サイズからデスクトップサイズ、さらには手のひらサイズにまで縮小されてきました。価格も研究所のみが購入できたのが、今では何十億人が携帯電話を持つようになりました。一方で、未だに「画面」に縛られているのが現状です。職場では多くの人が小さな画面と向かい合い、街や電車では大半の人が俯きながら携帯画面に没頭しています。小型化・軽量化を極めたコンピューターの進化の次のステップは、画面から人類を解放することだと思います。

ARは、現実社会にデジタル情報を付加することで、人間の日常行動の中にデジタル情報を届けてくれるようになります。歩きながら周辺店舗情報が表示されたり、遠方の人が同じ部屋に座っているように見えたり、モノをみるだけでその商品情報や購入ボタンが表示されるようになります。それは単に現実を「拡張」するのみならず、現実とデジタル情報の融合を図ることによって、人間がより人間らしく行動できるようになることを示していると思います。

これは、computer-centricな世界感からhuman-centricな世界感へのシフトを加速させる力を持っていると思います。人間が多くの指示を出さなくても(場合によっては一切の指示を出さなくても)、コンピューターが予測して必要な情報を提示するようになります。すでにGoogleは、Google Calendarの予定と現在地と混雑状況をもとに、次のアポへ出発すべき時間に自動的にアラートを出してくれますし、Facebookは自分の過去の行動をもとに最適なフィードを表示してくれます。ARの到来によって人類が画面から解放されることで、人間が欲する情報が向こうからやってくる世界が作られるのです。

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ARLab.com

Oculus Riftと何が違うのか?

ARと混合されがちな仮想現実(Virtual Reality:VR)ですが、実はARとは似て非なるものだと思います。VRでは、Oculus Rift(Facebookが2014年に$2B、約2200億円で買収)やSamsung Gearに代表される没入型デバイスが有名であり、これらのデバイスを使ってユーザーは完全に仮想現実の世界に入り込みます。映画、旅行、音楽、エロなどの世界で次々とコンテンツが作られており、数年後には「ちょっとローマに行ってくるわ!」と言ってVRデバイスを装着することも当たり前になるかもしれません。

VRが提供する仮想現実は超ハイクオリティーである一方、ユーザーはそれを意識的に体験しなければなりません。没入型ヘッドマウントディスプレイを付けたまま街を歩くことはできませんし、現実世界の人と交流することもできません。VRが素晴らしい新しい世界を提供するものだとしたら、ARは今の世界を素晴らしいものにするものだと言えます。どちらが優れているという話ではなく、使われ方や提供する価値という意味で、ARとVRは全く異なるものだと言えます。

注目を浴びてきたAR/VR

正直、Magic LeapがPR上手なだけなのか、噂されるようなテクロノジーを本当に有しているのか、実際の製品が公開されるまでよく分かりません。しかし、ARがデジタル世界をより身近にさせることは間違いないですし、その技術が完成されたときにはスマホからウェアラブルARデバイスへのシフトが起こるのも間違いないと思います。画面から解放された人類はより人間性を取り戻し、画面に縛られていた過去の人達のことを憐れむかもしれません。そして、その大きな転換点となる技術の最先端を牽引し、入り口となるハードウェアを抑えることに、GoogleやFacebookが多額の資金を投じているのも納得できます。

2014年3月にはソニーが独自のVRデバイス「Project Morpheus」を発表したり、2015年1月にはMicrosoftが「HoloLens」を発表したり、最近はAR/VR関連のニュースが目立つようになってきました。これからも面白い進展や新情報があれば追いかけて行きたいと思います。

※  湯浅エムレ秀和の個人ブログはこちら

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