Google Glassは本当に失敗だったのか? 

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※本記事は湯浅エムレ秀和の個人ブログから転載したものです(初出: 2015年1月21日)

Google Glassの販売停止の発表は、多くの驚きや疑問の声を生みました。多くのメディアは「Google Glassは失敗した」と報じ、ForbesはGoogle Glass追悼文を掲載しました。今回のGoogle Glass販売停止と今後の展開について、私なりの考えを整理してみたいと思います。

そもそもGoogle Glassは失敗ではない

4084 Photo: Giuseppe Costantino / Shutterstock.com

私は今回の販売停止はGoogle Glassの失敗を意味しているわけではないと思っています。むしろ、「お役目終了」といったところではないでしょうか。

2012年のGoogle I/OでSergei BrinがGoogle Glassを披露してから、2013年4月のExplorer Programの開始、さらには2014年5月に一般販売開始に至るまで、Google Glassはウェアラブルデバイスの代表格ともいえる存在を担ってきました。

一方で、一般消費者から「かっこ悪い」「実用性がない」と不満の声も多く出たり、Google Glass用のアプリを作るデベロッパーが開発を止めたりして、滑り出しに非常に苦労していたように見受けられました。マス層への普及という観点からは確かに「失敗」だったのかもしれません。

しかし私は、2年間に及ぶGoogle Glass販売の目的は、壮大なベータテストだったと捉えています。これは1台US$1500という決してマス向けではない価格設定を見ても明らかです。そして、その観点では非常に成功したプログラムでした。ベータ版のプロダクトで多くの注目を集め、数十万人といわれるテスターを募集し、さらにはテスターからおカネをもらうというオープン型のベータテストは大成功だったと言えるのではないでしょうか。

そして、Explorer Program開始からの2年間で蓄積された数多くのフィードバックは、iPodの生みの親であり、新たにGoogle Glass事業をリードすることになったTony Fadell氏(現Nest CEO、$3.2 billionでGoogleが買収)の元で活かされ、近い将来に新商品 Google Glass 2.0が発表されるのではないかと思います。

早ければ今年6月のGoogle I/Oにて発表されることを期待しています。

Google Glass 1.0からレッスン

では、2年間に及ぶGoogle GlassのベータテストでGoogleは何を学んだのでしょうか。私自身も1週間Google Glassとともに生活した経験から、レッスンと思われるものを挙げてみました。今となっては当たり前に聞こえるものもあるかもしれませんが、2年前に完璧に予見することは難しかったと思います。

◆ウェアラブルデバイスはファッション Google Glassはいかにもギークが好みそうなデザインでとにかくカッコ悪いものでした。私もボストンで着用していましたが、街を歩くのすら恥ずかしいくらいで、それを常時着用するのは相当な心理的ハードルがありました。テクノロジー業界では見た目よりスペックや実用性を重要視してしまいがちですが、ウェアラブルデバイスはそれ自体が装飾品になるようなデザイン性が求められていると思います。スマートウォッチにおいても、全く同じ経路を辿っています。

◆キラーアプリは必須 Google Glassはとにかく実用性が薄いものでした。メールを読むには画面が小さすぎて、通話をするには聞き取りにくい。写真や動画を撮ることにおいては携帯電話より便利でしたが、それは比較論の域を出ていませんでした。Emailがインターネットのキラーアプリになったように、Google Glassを使うことによる圧倒的な価値を提供できないと普及は難しいと思います。

◆洗練されたUI/UX Google Glassでメニューを選択するには、“OK Glass”と呼びだしてから、ボイスコマンドで起動させるか、首を上下に振ってスクロールしながら選択する必要がありました。これは傍目に見ると完全に変質者です。予測技術を使って自動的に起動させたり、目の動きでスクロールするなど、もうちょっと人前や静かな場所でも使いやすいUI/UXが必要でしょう。

◆深刻なプライバシー問題 他人の前で許可なくGoogle Glassを着用することが非難され、勝手に撮影されることを恐れた人々から“GLASShole”という言葉が生み出されました。Google Glassを使ったハンズフリー撮影・録画はキラーアプリとなり得るので、カメラ機能を無くすことはあり得ないと思いますが、よりプライバシーに配慮した設計が求められています。(次バージョンでは、撮影中に赤いライトが光るようになる、という噂もあります)

◆価格にシビア $1500は高すぎました。もちろんベータテストなのでそれ以下に安くする必要が無かっただけだと思いますが、Fitbit($50-100)やスマートウォッチ($100-300)など、マス普及を狙うにはもっと価格を下げる必要がありそうです。今年のCESでは、中国メーカーから$300程度のGoogle Glass類似品が展示されていたようなので(Cool Glass ONE)、コスト構造的には十分可能だと思います。

Google Glass 2.0に向けて

Google Glass 2.0のローンチがいつになるのか分かりませんが、おそらく、まずは商業利用から攻めてくると思います。これはIoT全体の傾向ですが、光熱費を削減する(Nest)、自動車保険を削減する(MetroMile)、ホームセキュリティを安価に導入する(Quirky、Dropcam)など経済的メリットを訴求しないと、「便利」だけでは訴求力が弱いようです。

Google Glass 1.0は、マス向けには普及しなかったものの、病院で医師の診察に使われたり(Augmedix)、警察による顔認識技術として使われたり(Dubai Police)、倉庫の商品管理に使われたり(Active Ants)、一定のビジネスユースにおいては実用性が認められました。ベータテストで特定した領域について、Google Glass 2.0は本格展開してくると思います。

また、今後興味深いのがAR(拡張現実)の組み込みです。Google Glassを通じて見ることで、目の前にある現実にデジタル情報を被せることができるようになるはずです。外国語の看板を翻訳して表示させたり、道を眺めると地図と経路が表示されたり、モノを眺めるとネット上の価格や類似商品が表示されたり、目の前にいる人のプロフィールを表示させたり。GoogleがAR/VRの先端技術を持つMagic LeapにUS$542Mを投資したのも、Google Glassへの応用を考えているのだと思います。前述のキラーアプリもこの辺から出てきそうな予感がします。

もともとGoogleはデータ企業であり、ハードウェア企業ではないことから、Google GlassについてもOSや生態系を狙うための先兵隊という位置付けだと思います。最終的には携帯電話と同様にAndroid OSをばら撒いて、ハードは多数の企業に作ってもらうことで、生態系の覇権を握ろうとしているのではないでしょうか。Google GlassはGoogle Xを「卒業」して、独立した事業部になるという報道もありますが、iPodとNestという新しいプロダクトを成功させたTony Fadellが次にGoogle Glassをどのような形で進化させるのか大変楽しみです。

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