テクノロジー進化の行く末 

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※本記事は湯浅エムレ秀和の個人ブログから転載したものです。

テクロノジーは日々進化していっていますが、このまま進むとどんな未来が待っているのでしょうか?

最近、こんなことをよく考える(妄想する?)のですが、この巨大でざっくりとした疑問に真っ向から向かう面白い本に出会いました。2人のMIT教授(Erik Brynjolfsson、Andrew McAfee)の共著である『The Second Machine Age』で、アメリカでは2014年のテクロノジー系ベストセラーにもなっています。なぜか和訳版は未発売のようですが…。

The Second Machine Ageの要約

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非常に中身の濃い本をサマリーするのは難しいのですが、ご参考までに個人的に印象的だったポイントを纏めます。

●人類の歴史を振り返ると、約1万年にわたって人類の開発指数(Human Development Index)はほぼフラットだった。しかし、1775年に蒸気機関が発明され、爆発的な成長を遂げた。これは、今まで人間に頼ってきていた「動力」を蒸気機関が担うようになり、工場の巨大な機械を動かし、蒸気機関車を走らせ、電気を使うようになったからである。「動力」の飛躍的向上が、あらゆる周辺テクノロジーを押し上げ、人類の生産性を飛躍的に向上させた。(第1の機械の時代 – The First Machine Age)

●現在は、同様の変化が「知力」に起きようとしている(第2の機械の時代 – The Second Machine Age)。コンピューターの能力は、ムーアの法則に基づいて向上し続けている。コンピューターは、与えられたロジックに基づいて計算するのみならず、Google CarやIBM Watsonに見られるように、自らパターン認識し、機械学習して、最適解を判断する段階まできている。この進化のペースは指数関数的で、2045年前後にはコンピューターの能力は人間の脳を超えるという試算も出ている(「シンギュラリティ」)。

機械の指数関数的な進化は、プロセッサに留まらず、メモリー、センサー、カメラなど多岐に及ぶ。例えば、Google Carの自動運転の肝となるLIDAR(空間測定技術)は、2000年では1台35億円したものが、2013年には800万円になり、数年後には数万円になると予想されている。継続的な性能向上とコストダウンにより、AIやロボットはより身近なものになる。

●あらゆるものがデジタルに置き換わることで、普及コストが限り無くゼロになるため、少しでも優れたプロダクトによる勝者総取りが加速する。コンテンツの1回あたりの配信力を例にとると、吟遊詩人ホメーロスの詩は数十人、シェークスピアの劇は数百人、ベストセラー作家の本は数千万人へとリーチしてきたのに対し、現代のユーチューバーに至っては10億人にリーチできるようなっており、同一コンテンツがあらゆるところで消費されるようになってきている。社会的には、勝者総取りの加速は貧富の差の拡大に繋がる。

●知力をコンピューターに依存するようになったとき、人間の存在意義(≒雇用)は現状と大きく変わらざるを得ない。肉体労働については、定型業務(ルーチンワーク)はすでに機械に置き換わりつつあり(例: ロボットにより生産されるテスラ工場 )、不定型業務(イレギュラーワーク)についても、今後置き換わっていく(例: プログラミングではなく人間同様にトレーニングできるロボット)。知的労働については、定型業務(ルーチンワーク)は今後機械に置き換わる(例: 感情まで読み取るカスタマーサービスAI)。最後まで残るのは、知的な不定型業務であり、クリエイティブワークなどがこれに当たる。

●結局は、機械の進化と戦う(race against the machine)のではなく、それを上手く活用できる(race with the machine)ように人間の役割を変えれば良い。人類はテクノロジーのもたらす社会環境の変化に順応してきた歴史があり、AIやロボットを始めとする機械の進化と普及にも順応できるだろう。将来的には、定型業務は全て機械に依存し、人間はその恩恵を享受しながら、高付加価値な知的な不定型業務にフォーカスするようになる。

AI研究は人類存続に関わる注目されるべきテーマ

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Photo: agsandrew / shutterstock

「The Second Machine Age」はテクロノジー進化のもたらす未来について非常にポジティブな見解を持っていました。一言で言うと、機械の進化を上手く活用することで人類はより豊かになる、と。

私も短中期的にはそう思っています。自動運転で交通事故が減少し、食物工場で食糧危機が解決し、バイオ医療で難病が完治し、バーチャルリアリティで物理的な制約から解放されると信じています。また、今までイノベーションは人間の知性に頼っていましたが、人間の脳ミソを超える性能を持ったAIを活用することで、イノベーションの量・質・スピードも劇的に改善するはずです。人間はクリエイティブな仕事に集中することができ、文化的にも豊かになるのだと思っています。

しかし、長期的には(シンギュラリティ/技術的特異点以降)、もっと慎重な見方をしています。知性は、ひ弱な人類が地球の支配者になれた最大の武器であり、知性をコンピューターに凌駕されることはその支配権を渡すことに繋がると思うからです。例えば、AIに対して「人類を傷つけてはならない」と命令するのは簡単ですが、人間の知性を超えたAIがそれをどのように理解し、対処するかは想像することができません。SFチックな妄想をすると、「人類が傷つかないためには永久冷凍保存するのが最適だ」と判断するかもしれませんし、「一瞬で人類を消滅させることが、長期的に傷を最小化する」と判断するかもしれません。AIがどのように判断するかを予見するのは不可能であり(それがシンギュラリティの定義なので)、人類の想像を遥かに超える事態が起こったときのリセット方法もありません

私はAIの制御方法を究明せずしてAIがシンギュラリティに近づくことが最大のリスクだと思います。一方で、ここに対するソリューションが見つかりさえすれば、人類はAIの持つ知性を活かして桁違いに豊かになると思います。そのような観点を踏まえると、30年後に迎えるかもしれないシンギュラリティについて、AI研究者だけでなく、全ての人が関心を持ちウォッチしていくべきかもしれません。

※湯浅エムレ秀和の個人ブログはこちら

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