ゲーム感覚、コミュニティ意識は学びのスパイス 

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< 今回のポイント >
●「ゲーミフィケーション」「コミュニティ形成」は動機付けの手法
●教育とゲームが融合、学習に没入できる仕掛けが続々登場
●人と人の相互作用が、学びに刺激を与える

前回はオンライン教育において学習者を動機付けするためのキーワードとして「アダプティブ・ラーニング」という概念を紹介しました。今回はそれに引き続いて、「ゲーミフィケーション」「コミュニティ形成」というキーワードを深めていきたいと思います。

ゲーミフィケーション: 教育とゲームが融合

ゲーミフィケーションとは一般的に、遊びや競争などゲーム性をもったデザインや仕組みを用い、顧客の行動変容や社員マネジメントなどを行うものです。このゲーミフィケーションの手法を教育に取り入れよう、という動きが活発化しています。

もっとも、ゲーミフィケーションなどという横文字が流行る前から、教育はゲーミフィケーションに縁が深い領域でした。たとえば、「成績をつける」ということには、ゲームのルールを定め、学生同士を競わせて動機づけるという側面があります。また、基礎的な領域であればあるほど、ゴールが明確であり、そこに至るまでの段階が分かりやすく、競争しやすいのです。そのため、教育とゲーミフィケーションの相性の良さは、これまでにもよく指摘されてきました。

ゲーミフィケーションを支える要素として、「ゴールが明確であること」「ルールが明確にあること」「ゴールに至るまでに徐々に難易度が上がる設計になっていること」「成果がすぐに見えること」「全体における自分のレベル、立ち位置が明確に分かること」といったことがあります。こういったことは、通常の教室内でも実現可能なことであり、優れた講師は暗黙的にやっていたのかもしれません。EdTech領域において語られているゲーミフィケーションは、そういった暗黙的なノウハウを仕組み化し、ITを活用した進化を遂げています。

ここで紹介したいのは株式会社ドリコムが立ち上げた英語学習アプリ「えいぽんたん!」です。

「続く英語学習 えいぽんたん! 英単語からリスニングまで」

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これは、英単語を学習しながらかわいらしいキャラクターを育てていくアプリケーションであり、英単語がユーザーの習熟度に合わせて出題され、正答率によってレベルが上下していくタイプのものです。また、オンライン上で仲間と協力しながら課題をクリアしていく、といったソーシャルゲーム的な側面もあります。実はこのアプリに我が家の息子2人(ともに小学生)がどっぷりはまりました。楽しみながら時間を忘れてひたすら単語テストを繰り返しているのです。

K12(幼稚園~高校卒業まで)の学習成果は学習時間と相関があるということを前提に考えると、こういった「没入できる仕掛け」が新しい教育の推進力になっていくでしょう。

教育とゲーミフィケーションには2つの方向性があります。1つは教育側からゲームに踏み込んでいくようなアプローチです。例えば、ベネッセの「チャレンジタッチ」。タブレット端末を使ってゲームの要素を取り込んでいます。もう1つはゲーム側から教育に踏み込んでいくアプローチです。ドリコムはその好例です。現在は、その両者が入り乱れて競い合っている状況です。

つまり、教育なのかゲームなのか、業界としての垣根が曖昧になりつつあるのです。その結果、新たな教育のイノベーションが生まれてくる可能性があります。ただし、「ゲーム化する教育」という流れに対して、子供はもちろん、その親や教師の側がどう向き合っていくのかという論点も出てくるでしょう。目の前の子供が、ゲームをしているのか、勉強をしているのか、ぱっと見ただけでは判断できない。そんなことが至る所で起こるのですから。

コミュニティ形成: みんなと一緒なら学びが深まる

最後に「コミュニティ形成」について考えていきましょう。

オンライン学習の場合、物理的な空間には1人の学習者しかいないということが普通です。多くの生徒が同じ空間に集まる教室とは違って、「孤独」な作業でもあります。だからこそ、「学ぶ場作り」ということが極めて重要なのです。同時期に学んでいる仲間とつながり合う機会を作り、お互いに支え合ったり、刺激し合ったりする。バーチャル空間でのコミュニティ形成のための方法論を考案していくことが、今後の注目点の1つになるでしょう。

ここでご紹介したいのが、schoo(スクー)です。

「schoo WEB-campus(スクー): 無料動画のオンライン学習サイト」

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schooは教育コンテンツの生放送を無料で視聴することができるプラットフォームです。その良さはライブでの無料受講にあります。schooの授業は、一方向ではなくチャットを活用した双方向型のスタイルで行われます。講師からの質問に答えることや、講師に対する質問をその場で投げかけることなどを通じて、「コミュニティ全体で学んでいる」という雰囲気を醸成しています。

私も過去に数回schooで登壇しました。誰が画面の向こうにいて、どう反応しているかということが分かるようになっていて、登壇者側にも「MOOC用の録画撮影」にはない緊張感があります。特に最後に行われる受講者との質疑応答は一番難しいパートで、その場で投げかけられる質問に対してすぐに答えるという“即興芸”が求められます。このような生きたやり取りが学習者にとってはコンテンツの面白さにつながるようです。すべてが完全に設計され尽くされたMOOCのコンテンツにはない魅力があります。

schooの楽しさを見ると、教育においては「コミュニティ内にいる人と人が相互作用しながら学んでいく」という感覚が極めて大事であると実感します。schoo社長の森健志郎氏はこう言っています。

“学生時代を振り返ってみてください。思い出に残っている授業はどんなものでしょうか。おそらく、クラスのムードメーカーがふざけて先生に怒られている瞬間や、隣の席に座ったかわいい女の子から鉛筆を借りたときなど、多くの場合、コンテンツ自体ではなく「ヒト」から「派生する何か」があった授業ではないでしょうか”

森氏が語る「ヒトから派生する何か」を仕組みとしてどう担保していくのかについて、いろいろなプレイヤーが開発を進めています。

第9話「アダプティブ・ラーニングという新たな戦い」で紹介したすららでは、「ソーシャル・エール」という応援メッセージをお互いに送り合える機能を導入しました。これは、同じ項目を勉強している受講者同士、あるいは学習時間が同じくらいの受講者同士が、定型の応援メッセージを選んで送ることができるものです。例えば、「すごいね!」とか「一緒に頑張ろう」などです。極めて簡単な機能のようですが、リリース後、生徒の1カ月当たりの平均学習時間が18.1%も伸びたという事実があります。

このことが指し示すのは、たとえオンライン上であっても、画面の裏側にいる「誰か」の存在を感じながら学習するということが効果的だということです。ゲーミフィケーションを組み合わせ、仲間と競い合い、仲間を励ましながら学ぶ。そのための仕掛けを高度化させていくことが、教育×ITを考える上で重要な論点になっていくでしょう。

「アダプティブ」「ゲーミフィケーション」「コミュニティ形成」という3つのキーワードをお伝えしてきました。

既にお気づきの方もいるでしょうが、実はこういった手法を活用して鍛えられる(鍛えやすくなる)能力もあれば、鍛えられない(鍛えにくい)能力もあります。

次回は、手法論(How)だけではなく、鍛えられる能力(What)にも焦点を当てながら、グロービス経営大学院が取り入れているSPOC(Small Private Online Courses、小規模限定オンライン講座)という最新のオンライン教育形式に触れていきます。

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