世界展開に挑む。資金調達環境、劇的に改善 

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(2014年9月11日付け日経産業新聞の記事「VB経営AtoZ」を再掲載したものです)

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日本のベンチャーはもっと世界に挑戦すべきだ――。長く言われ続けていたことだが、長く掛け声倒れに終わっていた。ところが、東日本大震災後、世界という舞台を目指すベンチャーが次々に生まれている。

スマートフォン(スマホ)、ソーシャルメディア、クラウドネットワークなど震災後に普及が加速したテクノロジーを活用して急激に立ち上がってきたベンチャー企業群が国境を軽々と越えている。技術やサービスの先進性はもちろんだが、豊富な資金、大企業との連携、充実した経営人材という新しい武器を携え「勝てる勝負」に挑む。

ニュースリーダーアプリのスマートニュース(東京・渋谷)は8月、グローバル展開に向けての海外拠点の整備、広告収益化の推進などを念頭に、36億円の資金調達を行ったと発表した。出資者には、グリー、ミクシィ、スカイプの共同創業者が設立した投資会社の英アトミコ、元ジフ・デービス・パブリッシング社長などを歴任した著名エンジェルなどそうそうたる顔ぶれが並ぶ。

さらにスマートニュースは米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の電子版の立ち上げを主導した著名ジャーナリストのリッチ・ジャロスロフスキー氏をヴァイス・プレジデントコンテンツ担当に招聘(しょうへい)し、米国でのメディアパートナーとの協業体制を固めている。

フリーマーケットアプリのメルカリ(東京・港)も米国進出を企図する。サービス開始から1年足らずだが、ダウンロード数は400万を超え、出品数は1日10万点以上、成約額は月10億円を超えた。日本を代表するスマホによる個人間取引の電子商取引(EC)プラットフォームに躍り出た。3月末には約14億5000万円を調達し、米国に上陸した。

両者はいずれも国内市場の刈り取りに安住せず、上場を急ぐことなく、大きく資金調達して、じっくり海外を攻めている。米国の業界キーパーソンや起業経験者を登用し、グローバル展開に向けてのサービス研究に余念がない。

日本のベンチャーキャピタル投資は2013年度に国内向けが618億円と前年度より20%増えた。今年に入り新規株式公開(IPO)数も一段と早いペースで推移、未公開ベンチャーの10億円以上の資金調達事例もこれまでに10件を超え、ベンチャーを取り巻く資金調達環境は東日本大震災を底に劇的に改善した。

志ある若手起業家が生まれ、それを成功起業家がエンジェルとしてバックアップする。ベンチャーの対立軸だった大企業も自らコーポレートベンチャーキャピタルを設立するなどベンチャーとの協業を本格化し、以前とは比較にならない資金がベンチャーに集まっている。アベノミクスはベンチャーを日本復興の鍵と位置付け、国全体がベンチャーによる新産業創造支援に動いている。

「カネ」と「ヒト」の充実に加え、起業家の「志」も大いに高まった。大震災を機に内省を深め、日本の中の自分自身、世界の中の日本を見つめ直した起業家が既成概念にとらわれることなく、自由で大きな発想に基づいて前進を始めたからだと、私は感じている。日本のベンチャー・エコシステムは新たなステージに入ろうとしている。

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