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進む大企業との協業

投稿日:2015/02/19更新日:2019/04/09

(2014年1月14日付け日経産業新聞の記事「VB経営AtoZ」を再掲載したものです)

ベンチャーM&A元年か

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日本の伝統的大企業がベンチャー企業を見る眼やその付き合い方を大きく変え、「大企業+ベンチャー」の協業が様々な局面で進んでいる。M&A(合併・買収)やJV(共同企業体)によってベンチャーを取り込むことで、成長ドライブに拍車をかけたり、異分野に進出したりといったことが当たり前になりつつある。そして、何よりも経営トップの「ベンチャー精神に学び、取り入れたい」という意識変革が顕著だ。

インターネットメディア運営のイード(東京・中野)は、ここ1~2年の間に、三越伊勢丹ホールディングスなど数社から出資を受けた。ベンチャー側からのラブコールに大企業が応えたもので、共同で新事業創出に取り組んでいる。特に、大企業側の経営幹部が取締役会や定例の会議にまでに参加し、直接関与していることが、事業の推進力につながっている。

ベンチャーにとっては、大企業が持つブランド、ノウハウ、顧客基盤は大いに魅力的だ。DeNAの創業メンバーの一人である渡辺雅之氏が英国で2010年に創業したモバイル向け学習サービスのクイッパーはベネッセと資本提携し米国で共同事業を開始。日本でもベネッセ、KDDIと組んで事業展開している。

一方、ベネッセは教育系スタートアップ企業との協業を模索するための実験拠点を開設。大企業が陥りがちな自前主義と決別し、新たなビジネスチャンスを創出しようとしている。

こうした連携強化の動きに拍車をかけるのが、リスクマネーを供給する役割を担う金融セクターの意識変革だ。13年末、経済同友会で開かれた「日本におけるイノベーション・新産業創造について何が必要か」をテーマにしたパネルセッションに参加した。大手証券会社の経営トップ自らが議論に加わり、日本におけるベンチャーエコシステムの確立を力説していた。正直言って、10年前には考えられなかったことである。

ベンチャー、大企業、金融セクターが三位一体となることで、ベンチャーの「EXIT(株式上場や事業売却などの出口戦略)」の選択肢は確実に増える。米シリコンバレーでは、グーグル、マイクロソフトなどに買収されることを目指して起業したベンチャーも少なくない。その活力とスピードを大企業が吸収することによって、さらにグローバルな競争力を高めるというサイクルがつながっている。日本のベンチャーエコシステムの決定的な課題は、そうした成長連鎖が断絶していたことにある。

ただ、13年には、楽天やクックパッドなどが創業間もない企業を買収するなどの予兆が見え始めた。グロービス・キャピタル・パートナーズも投資先企業へのM&Aの打診を増やしている。14年は、日本の大企業によるベンチャーM&A元年になるかもしれない。

もちろん課題もある。企業文化の違いによる衝突は最も典型的なものだ。私見だが、カギは大企業側が握っているのではないか。リスクを取ることによって発生する衝突や失敗を、中・長期の視点で見守ることができるか――。大企業トップの度量が問われている。

ベンチャーと大企業をつなぐ糸はまだ細くて切れやすい。その間に入り、ようやく形成されつつあるベンチャーエコシステムの成長連鎖を確実に大きくしていく触媒が必要だ。我々、ベンチャーキャピタルの新たな役割だと考えている。

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