前提を省かず話は具体的に 

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前回に続き、わかりやすく相手に伝えるために何をすべきかについて話をしていこう。最近、書店に行くと、この種の特集をした雑誌や書籍がたくさんならんでいる。ビジネス上のコミュニケーションに課題意識を持っている人が多いことの表れだろう。

このコラムでは「伝える柱をつくる」「ストーリーを考える」という大きな考え方を議論してきたが、今回は具体的なテクニックをいくつか紹介しよう。資料を作るときも、口頭で伝えるときにもぜひ意識してみてほしい。

1. 前提を省かない
コミュニケーションをしている中で「えっ、うん」となる瞬間の多くは、伝え手と聞き手の前提が異なっているときである。伝え手にとっての前提は聞き手にとっての前提にあらず、なのだ。しかし、特に自分自身が得意領域だと思っている分野の前提は、本人にとっては当たり前のものになりすぎている。

そのため、書類を作るときにも、会話をするときにも省いてしまいがちだ。同じ会社に勤めていても、部署が違うと会話が成立しないというようなことは多くの場合、このようなところからくるのである。自分にとっての当たり前をまず明確にしたうえで、コミュニケーションするように留意してほしい。

2. 時間や場所をあちこち飛ばさない
わかりやすい話というのは、時間の流れが一方向である。昔の話から、現在へ。またはその逆。一方、わかりにくい話は、時間的な流れがあちこちに飛んでしまうことが多い。

これは場所的な話も同様だ。東京の話をしたと思ったら、シンガポールの話をしているなど、語り手の中では整理されていても、聞き手の頭は同じスピードではついていかないのだ。

より具体的な話をすれば、1枚の説明資料の中でも、矢印の方向が一定の資料と、上向き、下向き、右向き、左向きが混在している資料では全くわかりやすさが違う。流れを大切にしていただきたい。

3. 話は大から小へ
伝える話は大枠から詳細へ、という順番が一般的にはよい。大枠から伝え始め、そこはわかっているという反応が聞き手から見えたらそこをスキップすることは可能だ。しかし、詳細から始めて、全体がわからないから大枠に戻るといったことになると、この人は頭の整理がついていないのではと思われてしまう可能性が高い。そのような印象はその後のコミュニケーションを難しくするだけだ。

4. 抽象度の高い話と具体的な話を織り交ぜる
CREC(クレック)と呼ばれる論理構成がある。英語で短い文章を書くときの基本論理構成をして学ぶ考え方だ。Cはコンクルージョン・結論、Rはリーズン・理由、Eはエグザンプル・事例、Cは再び結論だ。理由と事例を結論でサンドイッチのように挟んで伝えるということだ。

私は「事例」を入れるという部分がとても大切だと思う。抽象度の高い話はそれらしくもっともらしく聞こえるが、結局よくわからない、煙に巻かれたなどの印象を残すことが多い。

抽象度の高い話と、具体的な話を行ったり来たりすることで、人の理解は促進されていく。常に、聞き手がイメージをわかせることができそうな2つほどの事例を、準備しておくようにしたい。

わかりやすく伝えるためのテクニックは多く、今回は私が日常注意している特に大切だと思う4つを挙げてみた。活用できる部分から実践してみてほしい。

 

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※この記事は日本経済新聞2013年10月23日に掲載されたものです。
(Coverphoto:shutterstock/Ismagilov)

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