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前回までに分析の話をしてきたが、これからは分析結果や言いたいことをしっかり相手に伝えるための方法についてみていこう。

連載の初期に、考えるべきこと=イシューが定まったら、イシューを支える大きな柱をまず考える、との話をした。「新しいA事業に参入すべきか」という問いに対する「市場状況はどうか」「自社の強みは生かせるか、弱みは致命傷にならないか」「競合の状況はどうか」といった柱だ。

自分の考えを深める、考えるべき重要なポイントを逃さないためにこのように考えることの重要性は理解してもらえたと思う。では、この柱に従って考え、分析してきたことをわかりやすく相手に伝えるにはどのようにすべきだろうか。

次のような例題を考えてみよう。あなたは大企業からスピンアウトしたエンジニアで構成する小規模メーカーで、ロボット型掃除機の販売会社向け営業を担当している。新しく開発したロボット型掃除機は既存製品に比べて基本性能が高いうえ、デザイン性も高く、製造コストも抑え、競合製品よりも低価格を実現した自慢の商品である。

しかし会社の知名度は低く、今後のマーケティングと営業が肝になる。営業担当であるあなたは、当然、この商品を様々な小売店で扱ってほしいと思っている。今日、営業に行く先は、全国に大型店をチェーン展開している有名小売りのバイヤーだ。ここでうまく話を展開できれば、その影響は大きい。その次の日に営業に行くのは、昔ながらの町の電器店である。

読者はどのような資料の準備、営業トークを考えるだろうか。こんな時、ぜひ柱の議論を思い出してほしい。今回は「相手に伝える柱」を組むのだ。大手小売りのバイヤーに売り込むとしたら、まずは「市場の動向」を伝えることが大切。そして「売れ筋の競合製品の分析結果」。最後に「自社製品の特徴について」と考えるかもしれない。

もしくは、小売店のほうが市場動向や競合製品をよく理解しており、徹底的に自社の話として「自社製品の詳細な特性(他社との違い)」「仕入れ値(先方にとっての利ざや)」「安定供給力(自社の製造能力)」などをメーンに伝えようと思うかもしれない。どちらがよい、わるいの問題ではない。どちらが、より聞き手の関心に寄り添っているかが重要だ。

電器店に売り込みに行く時はどうだろう。大手小売りに営業へ行く時のような考え方に加えて、よりシンプルに商売よりに「この商品は確実に売れます」「仕入れ値を低くするので利益をとってもらうことができます」「販促グッズなどはこちらで準備します」などと伝えるかもしれない。

大切なのはこちらの理屈ではなく「聞き手の理屈、状況に寄り添う柱」を考え、それをベースに伝えていくことだ。考える柱はロジックを強めるための柱、伝える柱はわかりやすいコミュニケーションを実現する柱ともいえる。時にこの2つは同一ということもあるが、いったんはゼロベースで考えることが大切だ。

プレゼンテーションをする、報告をするという状況を考えると最終的なイシューは聞き手が責任を持っている、つまり決める権利を持っている場合が多い。正しいことを正しいロジックで伝えてもそれに従って聞き手が動いてくれるかはわからない。どこまで相手の立場に立って「伝える柱」を組むことができるかが、ビジネスの成否を決める部分も大きい。ぜひこうした発想で伝えることを考え直してみてはどうだろうか。

 

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※この記事は日本経済新聞2013年10月9日に掲載されたものです。
(Coverphoto:shutterstock/Ismagilov)

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