新渡来人計画!戦略的に移民を受け入れ、活力ある日本を創ろう! 

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初稿執筆日:2014年9月16日
第二稿執筆日:2016年7月3日

 映画「テルマエロマエ」では、阿部寛扮する古代ローマの浴場技工士ルシウスが現代日本にタイムスリップし、日本人のことを「平たい顔族」と呼んだ。この平たい顔は、もともとの日本人ではなく、弥生人の特徴だと言われる。

 弥生人は、よく知られるように、大陸系の移民であった。その後、大和朝廷の時代に入っても、日本では、「渡来人(帰化人)」を積極的に受け入れ、大陸の文化や技術を大いに吸収した。その規模は、弥生時代初期(紀元前300年)から飛鳥時代末期(紀元後700年)で100万~300万人程度だったとされる。8世紀当時の日本の人口が約500万人だから、すごい数字だ。

 そもそも建国期に移民によって成り立った日本は、その後の歴史においても、安土・桃山期の南蛮人、明治期の欧米人の受け入れ、戦前・戦中における朝鮮半島からの移住者など、本来、移民や外国の知恵を大いに受け入れ、発展してきた国家である。日本が(ほぼ)単一国家だというような発想や島国根性的内向き志向は、歴史的にはつい最近の傾向であるといえよう。

 戦略的な移民の受け入れは、人口1億人を維持し人口減少社会を食い止める切り札となり、ダイバーシティ豊かな活力を生み出し、新たな国家の形を作り上げることとなる。計画を立て、まずは富裕層やエリートなど、日本にとって必要で「役に立つ」移民を積極的に日本に誘致し、それを日本の成長につなげる。日本の衰退を回避する為に是非とも進めるべき政策である

 それでは、「新渡来人計画」の具体化を進めよう。日本にとって「役に立つ」外国人を積極的に受け入れるのだ。そのために必要なのは、まず「計画」である。

1. 年に10万人帰化・20万人の在留外国人受け入れ拡大計画を!~「戦略性」と「計画性」を持った移民政策を!~

 現在、日本には、約200万人の在留外国人がいる。内訳は、在日中国人が65万人、在日韓国人が51万人、留学生13万人などだ。

 新渡来人計画では、年に20万人在留外国人を増やし、年に10万人日本国籍を新たに取得する外国人を増やす計画としたい。国家として数値目標を明確に打ち出すことが重要だ。

 つまり、現在いる在留外国人のうち毎年10万人に新たに日本人になってもらい、在留外国人を新たに年間に20万人増やすことが必要となる。これを20年間続けるのだ。それができると日本は活力がある社会を創ることができよう。

 政府の試算によると、日本の働き手は、今後35年間で約2400万人減少してしまう。これは、毎年70万人以上のペースで労働力が減少していく計算だ。

 GDPは労働力と生産性の積だから、労働力が減少すれば経済は縮小していかざるを得ない。このため、少子化への対応、出生率の向上のための政策は、日本の成長戦略として極めて重要である。だからこそ、100の行動39 厚生労働5<少子化対策のためにタブーに立ち向かえ~結婚していなくても子どもを育てられる社会に!>でも、そのための提言を行った。

 しかし、出生率の向上だけでは間に合わない。国家として人口・労働力を増やす方策は、他に2つある。1つは、「国内の潜在労働力の掘り起こし」、そしてもう1つが、「移民」という選択肢だ(国内の潜在能力の掘り起こしに関しては、本行動の5にて詳述する)。

 実は、日本は1980年代後半、外国人労働者の受け入れに比較的寛容であった。バブル崩壊前の成長期に、建設現場や飲食店で働く労働力を補うため、なし崩し的に外国人労働力を受け入れていった。

 しかし、これは政策の失敗だったと言える。なんら戦略も計画もなく、単純労働に従事する外国人の受け入れを拡大したため、バブル崩壊で単純労働に従事していた外国人の多くが日本を去った。また、居残った不法滞在者などによるトラブルで、「移民受け入れ=治安が悪化する」といった外国人に対する悪いイメージを拡げることにもなった。

 失われた20年の間に日本社会は極めて内向き志向に陥ってしまっているが、安倍政権が成長を掲げる今こそ、まじめに移民政策を論じる必要があろう。そのためには、戦略性を持った移民政策が必要だ。それは、一言で言えば、「日本に役立つ外国人をどんどん受け入れる」というものだ。太古の渡来人も、戦国時代の南蛮人も、明治期の御雇外国人も皆、当時の日本が欲する技術や知識を持った外国人を積極的に受け入れたものだ。いわば、これは「日本のお家芸」とも言えよう。

 だから今こそ、日本の成長を牽引する「新渡来人計画」で戦略的かつ計画的な移民政策を進めるべきであろう。

 景気が良いときだけ労働力不足を補うために外国人を受け入れ、景気が悪化すれば解雇し、面倒もみないのでは移民は定着しないし、移民に対する国民の理解も進まない。年間10万人国民が増えれば、20年間で200万人増える計算となる。目標を設定し、5年計画等で必要な政策や環境整備を進める必要がある。

2. まずは高度人材、そして技能人材へと拡大を!

 では、戦略的かつ計画的に「渡来人計画」を練って行こう。まずは、「どのような移民を受け入れるか」という基準策定、リストアップが必要だ。

 積極的に「新渡来人計画」を打ち立てても、実行段階になると必ず反対意見が出る。そこで、国民に納得頂くためには、明確に「日本にとって役立つ人材」に絞り込むことが必要となる。

1)まずは、高度人材に絞り込む

 高度人材とは、高学歴な人材、高い技能を持つ人材、富裕層などだ。学歴や技能は分かりやすい。大学のリストアップや日本が必要とする技能を掲げればよい。富裕層に関しても、銀行口座の残高いくら以上等の基準を作ればよい。これらの外形標準的基準を策定し、それらの基準に適合する外国人を世界に向けて募集するのだ。

 アジアでは、シンガポールやオーストラリアが移民先進国だ。シンガポールでは、移民は高度人材移民と単純労働者移民に分けられ、どちらも積極的に受け入れられる。シンガポールの人口増加率は凄まじい。出生率は1.25に過ぎないが、1970年代にたった200万人に過ぎなかった人口が今では553万人だ。

 オーストラリアも、1970年代1200万人だった人口を今では2391万人まで増やしている。同国の出生率はシンガポールよりは高いが、1.86で、人口維持には足りない数字にも関わらず、だ。オーストラリアは、少子化問題解決のため、1970年代に「白豪主義」を撤廃、積極移民政策に政策転換したのだ。

 オーストラリアの移民政策は、オーストラリアにとって有益な人材、資産家などを誘致する高度人材移民政策が取られている。永住ビザを取得するには、高度人材である証明と、銀行口座の残高証明が必要になるというわけだ。

 日本でも、シンガポールやオーストラリア同様に、高度人材の受け入れからスタートすべきであろう。

 ただ、国際競争の今の時代、待っているだけでそういった優秀な移民が日本に集まってくるほど甘くはない。シンガポールやオーストラリアでも欲する外国人労働力の人材スペックが策定されている。基準を策定したら、それを積極的に世界に向けて広報し、極めて簡易な手続きで就労ビザを発行するだけでなく、必要な優遇政策も検討すべきだろう。

2)そのうえで、専門的技能所有者・単純労働者へと拡大せよ 

 現在人手不足で頭を抱えている業種は、建設、介護、医療、飲食、小売、流通、製造業等の業界だ。職種としては、専門的技能所有者であり、単純労働者である。現在、200万人を超える生活保護受給者がいる現況を考えると、まずは潜在的な労働者の活用を考えるのが自然である。本行動の5で述べる高齢者や専業主婦の活躍推進を行った上で、移民の対象も拡大することを考える必要があろう。

 アメリカは移民によって建国された国であり、元来外国人を無制限に移民として受け入れていたが、近年は、選択的・制限的移民政策に移行し、現在は年間67万5000人の枠を設け、移民の受入れを行っている。昔、我々が社会の授業で習った時、アメリカの人口は2億人と覚えたものだったが、今や3億2000万人を超え、世界第3位の人口規模だ。

 一方のEUは、1990年代に、ソ連崩壊、東西ドイツ統合、バルカン紛争、ユーゴ崩壊などといった政治情勢を背景に、大量に移民が流入した。1992年には、EU全体で130万人もの移民を受け入れている。他方、亡命、難民、不法移民も増加の一途をたどり、社会問題ともなっている。

 このため、EUでは、移民・難民問題を「共通の問題」と捉え、「ゼロ移民政策(厳格な規制)」から、「共通のフレームワークによる秩序ある流入管理」へと政策転換し、EUの労働力を補うための移民の受け入れを進める政策を進めている。

 各国の移民政策を見ていくと、なし崩し的で無計画な移民受け入れは、非合法移民の増加や社会不安を招くことになり得ることが分かる。単純労働者などの受け入れによる社会問題は、ドイツなどの移民大国でも生じている問題だ。

 だからこそ、日本には戦略的かつ計画的な「新渡来人計画」が必要となるのだ。

3. 「新渡来人計画」では、計画を立て、ターゲットを絞り、留学・教育と連携して移民拡大を進めよ!

 日本への定着が最もスムーズに進む可能性が高いのは、日本に学びに来ている外国人だ。もともと日本へのシンパシーを持って来日しているこれらの人材を手放す手は無い。既述のように、日本には現在20万人の留学生がいるが、日本で学びたいという学生はもっと多い。また、JETプログラムは年間数千人規模で行われる政府主催の交流事業だが、日本に英語を教えに来たいという外国の若者も多い。

 100の行動50 文部科学4<日本の国際化を!留学生倍増、大学2言語 ・春秋入学体制へ!>においても論じたが、留学生30万人計画が、現在文科省で進んでいる。まずはこれを実現することが望ましい。

 そのためには、100の行動51 文部科学5<大学院、プロフェッショナルスクールの拡充を!「クールジャパン大学」等の設立を!>で論じたように、大学ばかりでなく、高等職業専門学校、大学院も活用すべきであろう。

 クールジャパンのコンテンツなど、日本で学びたい外国人学生のニーズを満たすようなプログラムを拡充し、日本で学ぶ外国人の数を拡大させることが望ましい。

 大学に限らず留学生を積極的に受入れ、エンジニア、農林水産業、介護産業の担い手として外国人を育成し、就職してもらう方向性についても検討されてもよい。また看護師・介護士についてもフィリピン・インドネシアとのEPAでの受入れが十分に成果を挙げていないことをしっかり検証し、日本でのキャリア形成を実現しつつ、人手不足にマッチングさせる政策を実現することが望ましい。

 また、教育機関ばかりでなく、日本食、寿司などの職人修行、企業におけるエンジニア研修、農業実習などの技能教育の拡充も重要だろう。

 筆者が学長を務めるグロービス経営大学院でも、毎年海外から留学生が多数来日する。彼らの多くは、卒業後も日本で職を得たい、日本に住みたいという希望を持つ。是非、これらの人材を活用したいものである。

4. グリーンカード(永住権許可)制度の創設を!

 日本は、米国の成功事例から積極的に学び、グリーンカード(永住権許可)制度の導入を実施すべきと提言したい。新渡来人計画で受け入れるのは日本にとって「役に立つ」日本の経済社会の発展に貢献する外国人である。したがって、彼らには、日本の永住権が保障され、雇用や家族の生活、子どもの教育などについても完全に日本人と同一の権利が与えられることが望ましい。

 このため、記述したような、母国での一定の高学歴、高度な技能、資産などを勘案して、就労ビザを簡易な手続きで発行できるようにするとともに、例えば2年間、日本語や日本社会に関する受け入れ教育を無償で提供する。その結果が良好な外国人に対しては、永住と勤労を保証するグリーンカードを発行し、日本人と全く同じ条件で働き、生活できるようにすべきだ。

 「日本国民」であることを決める大きな条件は、言語と文化(の一定程度)の受容。この条件を満たしてくれる留学生に対し、グリーンカードの積極支給、一定程度の期間後の国籍付与を是非とも検討したい。

 移民政策は、まさに国家100年の計だ。国家運営が立ち行かなくなってからアタフタと移民を受け入れても失敗は目に見えている。今のうちから着実に「新渡来人計画」を国民的に議論すべきだ。 

5. 国内潜在労働力である1)生活保護受給者、2)女性、3)高齢者の活躍推進を!

 「新渡来人計画」による戦略的な移民政策は、良質な労働力や人材を日本に流入させ、日本の成長戦略とするための政策だ。しかし、冒頭で述べたように、日本の成長に必要な労働力を確保するための方策は、もう1つある。国内の潜在的労働力の掘り起こしだ。移民政策を導入する前に、この国内潜在労働力の徹底活用が必要だ。その努力なくしては、移民に対する国民の理解を得ることが難しい。

 具体的に、国内の潜在労働力は、1)生活保護受給者、2)女性、3)高齢者の3者だ。この3つの潜在労働力を徹底活用するための方策が必要となる。

1)生活保護受給者の活躍推進を! 

 第1に、生活保護受給者だ。国内の生活保護受給者は、いまだに216.4万人に上る。過去最高が平成27年3月の217.4万人だから、景気回復によって国内経済は人手不足に陥っているにも関わらず、生活保護受給者はほとんど減っていないことになる。この潜在労働力を徹底活用することが必要だ。そのためには、100の行動38 厚生労働4<「生活保護制度」不公平感が無く、自立を促す制度に抜本的改革を!>でも提言した改革を行い、対象者が制度に安住せず、制度から脱却する制度設計をすることで、この膨大な潜在労働力の活用を目指すべきだ。

2)専業主婦の活躍推進を!

  次に、女性も大きな潜在労働力、または最大の潜在労働力といっていいだろう。この女性の働く意欲を削ぐディスインセンティブとなっているのが、配偶者控除という制度だ。妻の年収が103万円以下である場合に夫の課税所得から38万円が控除され、税負担が減る制度だが、この制度適用者は、約1500万人に上る。(配偶者控除に加え、妻の年収が103万円を超えても141万円未満なら段階的控除を受けられる配偶者特別控除を含む)極めて大きな潜在力だ。

 もちろん、家庭の事情もそれぞれだが、この制度の適用を受けようとするために、妻の収入を103万円または141万円未満に押さえようとするインセンティブが働く。即刻廃止して最大の潜在労働力である女性の活用につなげるべきだ。

3)高齢者の活躍推進を! 

 最後に、高齢者である。高齢化社会が問題だと言われるが、日本人の平均寿命が伸び、歳をとっても元気に働ける社会はむしろ、良い社会と言えるはずだ。日本人の平均寿命は、年金制度設計時の1960年代の男性67.74歳、女性72.92歳から、今では男性80.50歳、女性86.83歳まで大幅に伸びている。寿命の伸長に合わせて、高齢者であっても働くことを前提とした制度設計とし、100の行動36 厚生労働2<年金制度改革 抜本的な問題解決から逃げるな!>で論じた通り、年金受給開始年齢も段階的に75歳まで引き上げるべきだ。

 さて、本題に戻すと、日本は少子化の進展に伴い、2050年の人口は、1億人を下回ることが予測されている。3000万人以上減少することが予想されているのだ。そのために、年間70万人の労働力を失うことになる。このままでは、日本の活力の維持は到底かなわない。

 その現状を打破するには、まさに、「新渡来人計画」が必要となる。海外人材受け入れ計画をハイレベルで議論する「場」を内閣府なりに作る必要がある。

 本稿の初稿を世に出した2014年、時を同じくして政府は、有識者委員会「選択する未来」で、50年後に1億人の人口を維持する必要があると、初めて将来の日本の人口の目標値を明らかにした。しかしながら、その後、移民受け入れに関する具体的な議論の「場」の設定や戦略、計画などの策定は進んでいない。2016年6月のイギリスにおけるEU離脱国民投票の賛成派の勝利は世界に衝撃を与えたが、この問題も急激に拡大する移民の問題がイギリス国民を動かしたことは周知だ。本稿で述べた通り、なし崩し的で無計画な移民受け入れは、社会不安を招くのだ。だからこそ、日本には戦略的かつ計画的な「新渡来人計画」が必要となる。

 是非とも国民的議論を喚起させて、皆で力を合わせて、新渡来人計画を策定して、戦略的に移民を受け入れ、ダイバーシティ豊かな活力ある日本を創ろうではないか。 

 


 

京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル、1999年 エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、米国ハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)等を歴任。現在、経済同友会幹事等を務める。2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設。2011年3月大震災後に、復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、翌年一般財団法人KIBOWを組成し、理事長を務める。2013年6月より公益財団法人日本棋院理事。いばらき大使、水戸大使。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人(ごじん)の任務』 (東洋経済新報社)、『人生の座標軸』(講談社)等がある。

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