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核のゴミを最大限再活用し、地球環境に優しいエネルギー政策を!

投稿日:2014/08/01更新日:2019/04/09

初稿執筆日:2014年8月1日
第二稿執筆日:2016年6月13日

 フィンランドのオルキルオトをご存知だろうか?世界で最初に高レベル放射性廃棄物の最終処分場の建設が決まり、現在、その建設が進んでいる土地だ。深さ420mの処分地点は、厚い岩盤に覆われ、20億年前からほとんど変化していないという。

 フィンランドでは、1983年から候補地の調査が進められ、当初は反対運動もあったが、税収や雇用増の見通しなどによって2003年に地下岩盤特性調査施設の建設許可が下り、2015年11月には最終処分場建設の許可も世界で初めて下された。現在、2020年代の操業開始に向けて建設が進められている。

 一方、日本では、最終処分場候補地選定の目途は立っていない。避けては通れないこのやっかいなゴミ問題にこれまで政府は正面から向き合おうとしてこなかったからだ。

 言っておくが、いかなるエネルギー政策をとるにしても、原子炉が現在、国内に50基(福島第一原発を除く数)存在していることに変わりはない。このため、稼働しているか否かを問わず、「放射性廃棄物の処分」「廃炉」の問題から逃れることはできない。従い、原発の賛否を問わずに、前向きにそれらを解決し、「原子力・エネルギーの安全なマネジメント」「環境に優しいエネルギーミックス」を考える必要がある。

 我々はこれらの現実を直視した上で、地球環境を守るためにどうすべきかを考え、現実的な行動を選択する必要がある。

1. 核のゴミ問題に正面から取り組め!最終処分場の選定には政治力の発揮を!

 冒頭で述べたように、国内に50基の原子炉がある以上、我々は核のゴミ(放射性廃棄物)の処理の問題を避けて通ることはできない。

 原子力発電所で使われた燃料(使用済燃料)には、原子燃料がエネルギーを発生する過程で生じた放射能レベルの高い物質が含まれる。日本では、これを再処理してウランやプルトニウムを取り出し、それでも利用できない部分をガラスで固化しステンレス製の容器(キャニスター)に入れてガラス固化体として処分するようにしている。2014年現在、これまでの原子力発電に伴って生じた使用済燃料で、既に約2万4800本のガラス固化体が発生する計算となる。

 この数が多いかどうかだが、家庭や工場等で利用するすべての電力の半分を原子力発電でまかなうとした場合、発生するガラス固化体の量は、日本人1人の一生(80年計算)あたり「ゴルフボール約3個分」に相当するという。人生80年生きて使った電力の半分を、CO2を排出しない原子力でまかない、1人あたり「ゴルフボール3個分」の高レベル放射性廃棄物ができるわけだ。

 CO2を大気中に垂れ流して、「トイレが無いマンション」状態で地球環境を悪化させるよりも、「ゴルフボール3個分」をしっかりと管理する方が、明らかに地球環境に優しいと言えよう。だが、その最終処分地が確定していないのだ。現代に生きる我々の責務として、責任を持ってその最終処分地を決めることが必要であろう。

 政府は放射性廃棄物の処分のために、2000年に「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に基づき、電力会社などが拠出して設立した原子力発電環境整備機構(NUMO)を作った。ガラス固化体約4万本を地層300メートル以深の深い地層に埋設し、人間の生活環境から隔離する計画だ。最終処分にかかる費用は、再処理にともなって発生するその他の廃棄物の処理・貯蔵・処分費用を含めても、原子力発電の発電コストの約3%だ。総額では約3兆円と試算され、毎年電力会社が積み立てを進め、既にNUMOに約1兆円が積み立てられている。

 「地層処分よりも良い処分方法がでてくるかもしれないので暫く様子を見るべきだ」、という議論もあるが、それでは将来世代への問題の先送りだ。原子力推進・反対どちらの立場を取るにせよ、原子力の恩恵を受けてきた我々世代の責任で、将来世代へのツケ回しをすることなく、今、解決することが大切だ。

 しかし、候補地の選定は難航している。日本では、「自治体から立候補を受け付ける」という受け身の姿勢で処分地選定作業が行われてきた。候補者が上がっては、各地に活動家らが侵入し、反対にあって消え去った。結局、最終処分場選定問題は10年以上進展していないのだ。

 これまでのようなプロセスを続けていては、未来永劫決まらないであろう。実際、世界の各国でも処分場を最終的に決められたのは、現在のところフィンランドとスウェーデンだけであり、その他の国では難航している。米国やドイツでも、進んでいた候補地が白紙撤回されるなど、最終処分場は未だ決定されていない。

 人類共通の課題ともいえる最終処分場問題の解決に、日本も本腰を入れて取り組まなければならない。これを進めるには、政治力が必要だ。原子力を利用する我々人類の責務として、強い政治のリーダーシップのもとに、最終処分場の選定を進めるべきだ。

2. 核のゴミを減らせ!核のゴミを再利用して新たなエネルギーをつくる核燃料サイクルの実現を!

 日本は言わずと知れた資源小国だ。日本のエネルギー自給率は4%、原子力エネルギーを国産エネルギーとして換算した場合でも19%と極めて低い。地球環境を守る目的とともに、他国に資源をなるべく頼らずに自給率を向上させる「エネルギー安全保障」が日本の最大の問題であることは言うまでもない。

 このため、これまで日本は原子力発電で発生した核のゴミからプルトニウムやウランを抽出して再び燃料として「再利用(リサイクル)」する核燃料サイクル政策を採用してきた。

 核燃料サイクルは、1)核のゴミをリサイクルして有効利用するだけでなく、2)最終処分しなければならない高レベル放射性廃棄物の量が、直接処分するワンス・スルー方式に比べて大幅に削減されるという利点がある。

 「核のゴミを減らしながら、エネルギーを生み出す」、まさに一挙両得の地球環境に優しい循環型の政策だ。そのためには、エネルギー・サイクルを構築することが重要だ。

 まずは、日本国内で再処理行程を完結するために、青森県六ヶ所村の再処理工場の早期操業開始が必要だ。この再処理工場は、20年ほど前から約2兆円を投じて建設が進められ、建設工事は数年前に事実上完了したが、操業開始の一歩手前で足踏みしている。早期に稼働させ、核のゴミの再処理を国内でできるようにする必要がある。

 さらに、日本で1960年代から研究が進められている高速増殖炉は、発電しながら消費した以上の原子燃料を生成することができる原子炉だ。現在の軽水炉などに比べて、ウラン資源の利用効率を飛躍的に高めることができる。1994年に発生した「もんじゅ」のナトリウム漏洩事故以来、なかなか前に進んでいない。この事故は、「他国では1日で解決して、再操業する程度の事故だった」と関係者は言う。メディアが騒ぎ過ぎることによって、原子力政策が前に進まずに、結果的に国益を損なっている典型的な例であろう。真正面から取り組んで、実用化を早めるべきだ。

 世界的にみると、中国、ロシア、インドなどの新興国が新世代原発の実用化に力を入れている。ロシアは既に実験炉5基、原型炉2基を稼働させている。2014年には新型の高速実証炉BN-800(出力88万kw)が稼働開始となり、2015年、同実証炉からの送電が開始された。中国は、ロシアの技術を導入した高速増殖実験炉CEFR(出力2万kw)を2014年12月に稼働、実用炉の建設も予定している。インドは原型炉RFBR(出力50万kw)を稼働予定だ。

 日本も、フランス、米国等と連携しながら、「もんじゅ」で蓄積される知見を活かし、安全な高速炉の実用化に向け国際的にも貢献していくことが望ましい。

 そして、地球環境のためにも、核のゴミを最大限再利用して、ゴミを減らすとともに、新たなエネルギーとして最大限に有効活用すべきであろう。

3. 廃炉ラッシュに備え、着実に技術的知見の蓄積を!

 核燃料を燃やすことによって生じる高レベル放射性廃棄物は、核燃料サイクルによって可能な限りリサイクルし、核のゴミを減らすことができる。一方で、原子力発電所を解体すると、多くの低レベル放射性廃棄物が発生する。大型の110万kW級の沸騰水型原子炉(BWR)を解体した場合、発生する54万トンの廃棄物のうち、約2%にあたる1.3万トン(大部分が金属、コンクリート廃棄物)が発生することになる(その他、約98%が放射性廃棄物でない廃棄物とクリアランス廃棄物)。

 この低レベル放射性廃棄物は、高レベル放射性廃棄物に比べて処分に要する期間は極めて短いという利点があるものの、核燃料廃棄物のようにリサイクルすることはできないので、人間生活から隔離して低層の地中に埋設処分する必要がある。

 今後増加していく原子炉の廃炉作業において、遠隔解体技術の確立、物量・放射能評価、廃棄物処理処分方法、プロジェクト管理システムの開発などの技術的知見とノウハウを積み上げて、着実な措置を講じる必要がある。

 廃炉に関しては、それにかかるコストが膨大だと言われることがある。確かに、火力発電所の解体にかかる費用が30億円程度(50万kW級以下)であるのに対して、原子炉の場合、中型炉(80万kW級)で440億~620億円程度、大型炉(110万kW級)では570億~770億円程度と見積もられている。

 しかし、福島の事故後、政府のコスト等検証委員会が厳しい算定のもとに行った原発の発電コストの再試算においても、廃炉費用は、キロワットアワーあたりで換算すると、0.1円/kWhにすぎない。最大に見積もっても、0.5円/kWhを超えることは考えにくい。

 当然、この廃炉費用は、原子力発電施設解体引当金省令に基づいて各電力会社によって、運転期間中、発電実績に応じて解体引当金が積み立てられており、コストの面での不安はあたらないだろう。

 さらに、廃炉によって発生する低レベル放射性廃棄物を処分するスペースの問題も言われることがある。これに関しても、前述のように大型炉を解体した場合に発生する低レベル放射性廃棄物でも、その量は全体の2%に過ぎない。

 現在、既に廃炉作業が進んでいる「ふげん」や「日本原電東海発電所」などの研究炉に加えて、福島第一原発1~6号機と中部電力浜岡原発1、2号機が商業炉として初めての廃炉作業に取り組んでいる。今後、運転期間を終える商業炉が増加する廃炉ラッシュに備えて、技術的知見、ノウハウの蓄積を着実に進めることが重要だ。

 地球環境のためにも、適切な廃炉措置を行う必要がある。その費用も、ノウハウそして処分方法も確立されているので、大きな問題になることは考えにくい。それよりも、前向きにとらえて、日本の技術を駆使して、海外の廃炉を請け負うことも可能となろう。まさに、原子力の設計、製造、運転、最終処分、廃炉まで一貫した技術の蓄積を行うことができる。そして、すべての面で、世界各国と連携を進めていくことが、原子力先進国としての日本の責務であろう。

※100の行動88 内閣府7<福島の未来~「イノベーション・コーストふたば市」構想の実現を!>を参照
 http://100koudou.com/?p=2141

4. 地球環境のために、原子力だけでなく、すべてのエネルギーを公正に規制する「エネルギー規制庁」の創設を!

 福島第一原子力発電所の事故をきっかけに、新たに独立した原子力に関する規制機関として、環境省の外局として設置されたのが、今の原子力規制委員会だ。

 しかし、この原子力の規制運用については、疑問がある。今の日本の原子力安全規制は、国民からの批判を恐れる規制当局が、国際基準と照らし合わせても過大な審査ガイドラインを盲目的に実行することに終始しており、膨大な時間がかかり過ぎているのが実態だ。しかも、国際基準や科学的見地に則っていない理不尽な運用がなされているのだ。

 このような日本の原子力規制に関しては、2014年7月29日のフォーブス誌ウェブサイトでも、次の通り手厳しく批判している。

 『日本の原子力規制委員会は、「活断層の定義を12万年動かず」と主張する。だが、活断層定義は国際標準では「1万年」だ。規制委員会の主張は、意味不明で、地学的には馬鹿げている、と言える。掘削検査を実施したが、12万年以上も動いた形跡が無い。それにも拘わらず、過度に危険性を指摘し、規制している。科学的見地に立った検査・判断を行うべきだ。審査の遅れによる、日本の経済に与える損害は大きすぎる。』

※Japan's Nuclear Roadmap To Economic Destruction
http://www.forbes.com/sites/jamesconca/2014/07/29/japans-nuclear-roadmap-to-economic-destruction/

 日本には、50基の停止した原子炉がある。今のままの審査スピードでは、年間4兆円にものぼる国富が海外に流出し続け、電力料金が高騰し、経済に多大な打撃を与え続けるだけだ。既に、北海道、大阪でも電力高騰による廃業が増えている。

 原子力に関して、より現実的な安全判断を行い、安全が確保された原発に関しては、速やかに着実に再稼働させる必要がある。

 ここで素朴な疑問を抱く。「今の日本の原子力に対する非現実的な安全規制は、原子力だけを特別に切り離して規制・ブレーキをかける体制に問題があるのではないか」と。つまり、ブレーキしか積んでいない自動車に乗っているようなものだ。ブレーキをかけ続けても、誰もアクセルを踏まないと目的地に到達しない。これでは何のための自動車かわからない。

 一方、他の自動車は、アクセルのみでブレーキを積んでいない。だが、排ガスを多く出して、長期的には人類にとって危険性が高い可能性がある。だが、全く規制されていない。これでは、何のための環境規制だかわからない。

 安全規制は原子力だけに必要なものではなく、すべてのエネルギー資源の運用に必要なものだ。原子力発電の安全規制だけでなく、他のエネルギー源の安全規制、CO2排出、自然破壊などの地球環境に与える影響などを総合的に判断することが必要だ。

 エネルギーは、基本的にすべて地球を汚すものなのだ。太陽光であっても、山を掘削し、農耕可能地を使い、広範な地域から緑を奪う。風力であっても、鳥を殺し、低周波音を出し、山や海の生態系を壊すのだ。火力は空気を汚し、原子力は核燃料の最終処分が必要になる。

 このため、すべてのエネルギー利用を安全・地球環境保護の観点から公正・適切な規制を行う「エネルギー規制庁」のような体制が必要であろう。どんな車であっても安全性を高め、アクセルとブレーキを持たせ、排ガス等を規制し、目的地へと到達させなければならない。

 原子力規制庁だけではなくて、「エネルギー規制庁」として、地球環境全般に何が良いのかを、総合的に判断し、規制すべきであろう。

5. 地球環境を守るためのエネルギー政策の実現を!

 国家としてのエネルギー選択は、環境への配慮を含めた上で、トータルな視点での判断が必要になる。最近では、CO2排出の議論が全く聞かれなくなった。だが、こうしている間にも、地球環境にとっては不可逆的なCO2の排出が行われている。日本は、原発の稼働が止まり、火力を増強しているので、なおさらCO2を多く排出していることになる。

 以前は、原子力はクリーンエネルギーとしてもてはやされ、CO2削減の切り札として、持ち上げられた。だが、福島原発事故後には、その論調は影を潜めた。一方、再生可能エネルギーは、ドイツでの失敗事例の通り、コストが高くなり過ぎるにもかかわらず、供給が不安定でベースロードとしての機能を果たしていないことが明白になってきた。今こそ、地球環境を守るための、現実的なエネルギー政策を真正面から議論すべきであろう。

 ここでは、エネルギー政策を結論づけるのではなくて、2つの視点を提示するに留めたい。

 第1に、環境・命への影響だ。事故が起こった場合の危険性のみならず、温室効果ガス排出量、広大な山野を開発して設置する必要があるメガソーラー発電の環境への影響など、「環境と人命への優しさ」を考慮に入れる必要がある。

 特に、地球環境への影響は、甚大だ。世界人口は2050年には92億人に達すると予測されており、我々人類は、急激な世界人口の増加と途上国・新興国の経済成長、資源エネルギーの需要増の中で、深刻な地球環境問題に直面していることをもっと認識する必要があろう。

 第2に実現性/安定性/経済性だ。もちろん、社会の低炭素化のため、太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーの技術開発、実用化支援は大いに進めるべきだが、これらの再生可能エネルギーは、実現性(必要な設置面積)、安定性(気候条件による出力変動)、経済性(電気料金・設備利用率)などの点で問題があり、前述の通り、基幹電源にはなり得ない。

 東日本大震災以降、原子力発電の止まった日本の化石燃料輸入額は10兆円増加しており、GDP の約 6%に相当する約 28.4 兆円に達している。(これは円安による面も大きいが、東日本大震災前並(2008~2010 年度の平均)に基幹電源として原子力発電を利用した場合と比べて約 3.6 兆円増加したと試算されている)

 火力発電依存を続けることによって国富が海外へ流出しているといった点を強調しているのではない。世界の人口爆発と経済発展に伴って資源・エネルギーの需要増大が進む中で、先進国たる日本が枯渇する化石燃料の輸入を拡大させ、CO2の排出を拡大させ続けてよいかどうかは、議論されてしかるべきであろう。

 冷静で未来志向の適切な政策判断によって、地球環境を守るための現実的なエネルギー源の選択を行うことが望まれる。

 さて、冒頭に述べたが、いかなるエネルギー政策をとるにしても、原子炉が現在国内に50基(福島第一原発を除く数)存在していることに変わりはない。このため、稼働しているか否かを問わず、「放射性廃棄物の処分」「廃炉」の問題から逃れることはできないのだ。また、原発の賛否を問わずに、前向きにそれらを解決し「原子力・エネルギーの安全なマネジメント」「環境に優しいエネルギーミックス」を考える必要がある。

 繰り返しになるが、エネルギーは、基本的にすべて地球を汚すものなのだ。太陽光であっても、山を掘削し、農耕可能地を使い、広範な地域から緑を奪う。風力であっても、鳥を殺し、低周波音を出し、山や海の生態系を壊すのだ。火力は空気を汚し、原子力は核燃料の最終処分が必要になる。それらの良し悪しを基に、地球環境に優しく、安定性が高い循環型のエネルギー政策を選択し、実現する必要がある。
 

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