最高のリーダーの条件・・・それは何もしないこと 

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数年前、アスペン研究所で行われたリーダーシップをテーマとするカンファレンスに参加した。その際、偉人の格言に基づいてディスカッションを行うというイベントがあった。僕はそのイベントで、「最高のリーダーとは何もしないリーダーである」という旨の孔子の言葉を持ち出し、ちょっとした物議を醸した。

もちろん、孔子はわざと挑発的な言い方をしたのだろう。優れたリーダーはまったく何もすべきではないというのが真意ではない。僕が思うに、孔子の真意はこうだ。リーダーにとって最善の行動とは、適切な組織化と訓練がなされた完全に機能する組織を生み出すこと。そのうえで道を示し、部下にそれぞれの仕事をさせること。

僕も同感だ。

だからこそ僕は、1990年代に起業家として出発したとき、CEOとしての自分の役割をかなり明確に定義した。僕の3つの本質的な機能とは次の通りである。

1. ビジョンを創出し、戦略を策定し、決断を下し、責任を負う。

2. あらゆる外部ステークホルダー(顧客、株主など)をケアするために、彼らとコミュニケーションを取り、その声に耳を傾け、ニーズに対応する。

3. 意欲を引き出すような風土を作り、組織の使命や価値観を従業員に伝える。

企業を成功させるための最善策は組織を成長させることであり、組織を成長させるための最善策は従業員自身をリーダーに育てることだ。そのためには、従業員に新たなスキルを身に付けさせ、能力を最大限まで発揮させる必要がある。

したがって、新米CEOの僕にとって重要な仕事の1つは、優秀な人材を採用して教育し、彼らが負いたいと思う責任をすべて負うよう促すことだった。
優秀な人材をどう採用するかに関しては、残念ながら「秘訣」はない。試行錯誤するしかなかった。だが、教育面に関しては、グロービスは幸運な立場にある。僕はすべての専門職社員に対し、MBAまたは何らかの修士号の取得を義務付けている。幸い、グロービスではビジネススクールを運営しているため、この点については社内で対処できるのだ。

そしてグロービスでは、従業員の能力を最大限まで引き出すために、希望するポジションと報酬を自ら申し出ることを推奨している。人事委員会が承認すれば、誰でもスピード昇進をして高給を得ることが可能だ。このアプローチを取れば、大きな責任を担おうとする意欲を全員から引き出すことができる。

では、それ以外にCEOとして僕がすべきこととは何なのだろうか。

僕はこんな風に考えている。CEOのすべきこととはつまるところ、(a)自分以外には「できない」仕事と(b)自分以外が「やりたがらない」仕事をすることである、と。

僕はベンチャーキャピタル事業では、投資家向け広報活動(IR)と同僚のマネジメントを担当している(プロのベンチャー・キャピタリストのほとんどは、優れた企業を発見することのワクワク感には目がないが、それに付随するIRやその他のバックオフィス業務に対する熱意は数段落ちる)。ビジネススクールでは、公人としてスピーチを行うのが主な仕事だ。

とはいえ、社員が増え、その能力と多様性が向上した今となっては、彼らができない仕事とやりたがらない仕事の数は激減している。僕の責任は少なくなる一方だ。

すべきことがほとんど残っていない今でも、僕はリーダーであると言えるのだろうか。

僕は“言える”と思う。

第一に、リーダーにとって忙しすぎないのは「良い」ことである。リーダーも社員と同様に成長するために、ものを考え、自ら学ぶための時間を持つべきだからだ。例えば僕は、日常的な業務を減らすことで、日本経済の未来に関する(願わくは)影響力のあるカンファレンスを企画したり、東日本大震災で被災した東北地方の復興を目的とするNPOを運営したりできるようになった。このような活動にはハロー効果があり、グロービスという会社の知名度を向上させ、グロービスがより素晴らしい何かを象徴する存在であるという印象を生み出している。

第二に、優れたリーダーは脚光を浴びなくなることはあっても、現実から乖離してしまうことは決してない。本格的な危機――2008年の金融危機や、新技術によってもたらされる混乱など――が訪れれば、優れたリーダーはいつでも表へ出て直接指揮を執り、必要な変革のメッセージを伝え、危機が去るまでビジネスモデルを転換させる用意がある。

言い換えれば、常にソートリーダー(Thought Leader)であり、なおかつ必要に応じてアクションリーダーになるのが優れたリーダーなのだ。そのようなリーダーを僕は目指している。

そういうわけで、僕なら孔子の言葉を次のようにアップデートする。

「駄目なリーダーは業務に最大限の時間を割き、マイクロマネジメントを行って、目新しさを追求すること自体を目的化することで、ついには組織のお荷物になってしまう。優れたリーダーは業務に最小限の時間しか割かないが、行うことすべてがプラスの影響を及ぼす」
中にはIT業界のように、変化のスピードが非常に速いため、ものごとが絶えず危機的な状態にある分野も存在する。そのような分野では、CEOが一歩下がったところから指揮するのは危険だろう。しかし人材育成の分野は、変化のスピードが比較的緩やかである。だからこそ僕は、「できる限り何もしないこと」を目標にしている。

あなたの経験では、どのようなリーダーシップが最も効果的だろうか。孔子型の「何もしない」リーダーシップと、最前線で剛腕を振るうタイプのリーダーシップのどちらを支持するだろうか。

ぜひ意見を聞かせてほしい。
(Photo: XiXinXing/ shutterstock)

この記事は、2014年7月8日にLinkedInに寄稿した英文を和訳したものです。

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