基礎自治体議会は夜間土日開催の日当制を!道議会は、責任ある分権国家の経営を! 

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初稿執筆日: 2014年6月13日
第二稿執筆日: 2016年5月3日


 議会中に居眠りする国会議員や、内輪もめ、権力闘争ばかり繰り返す国会議員を、テレビのニュース等で見せつけられて、私たちは辟易としてしまう。その国会議員以上に何をしているか分からないのが、地方議員だ。

 日本の地方議員は普段何をしていて、何の役に立っているのかを理解している国民は、ほとんどいないだろう。「選挙のときだけ選挙カーで連呼される名前を知っている」「地域のお祭りや運動会には必ず顔を出すだけ」「だけどなんだか偉そうにしている」・・・たいていの国民の地方議員に対するイメージはそんなところだ。

 本来、地方議員は、忙しい市民に変わって、市民を代表し、地域に則した政策課題を行政に反映し、行政をチェックすることが本務のはずだ。しかし、実際には、条例案のほとんどは首長によって提出されており、議会が政策立案機能を発揮している事例は少ない。

 また、予算や決算を含め、首長が提出する議案の大半は原案のまま可決されており、地方議会は個別の支援者からの陳情窓口となるか、先進的な首長の改革の抵抗勢力となるかといった弊害のほうが大きいと言わざるを得ない。逆に、いたずらに数の多い地方議員を維持するためのコストと労力が自治体の経営を圧迫してしまっているとさえ言えるのが現状だ。

 もちろん、優秀で改革マインドを持った地方議員が大勢いることは確かであろう。だが、地方議会の現状に対して、一般の人々からは「地方議会不要論」を支持する声が高いのが実態だ。

 今回の100の行動では、地方議会改革を提言する。提言にあたっては基礎自治体と道議会とでその役割が変わってくることを意識している。

 1. 基礎自治体議会は夜間土日開催の日当制を!

(1)【議員の選び方】基礎自治体議員は人口1万人あたり1名の基準を設定し、中選挙区制度の導入を!最低15人から最大でも50人程度に!

 基礎自治体は市民に最も近い行政主体であり、廃県置道による分権国家においては、市民生活に直接的な影響を与える行政サービスを主に担う。従い、地方議会を構成する議員には、「普通の」一般的な市民の代表が選出されるような仕組みとしなければならない。

 まず、議員の「選び方」だ。基礎自治体議員の選挙に際しては、基礎自治体が20万~40万人規模に再編されることを考慮すれば、それぞれの居住区域から万遍なく選出されるべきだ。このため、現在、多くの基礎自治体で行われている全体を単一の選挙区とする区割りは変更すべきであろう。

 現在の制度のような大選挙区制では、一定の基礎票を持った議員がその基礎票(支援者)のみに便宜を図っていれば、連続当選できる仕組みとなってしまう。これも行政を歪める温床であろう。基礎自治体議員に関しては、人口1万人あたり議員1名程度の上限を設定し、中選挙区制度を導入すべきであろう。中選挙区であれば議員間、候補者間の相互連携が実現しやすく、選挙が変わり政策本位の会派が機能することになる。

 但し、人口が15万人未満の合併過渡期の基礎自治体においては、議会を構成するのに必要な15人程度の議員を置く事を提言する。人口100万人を超える基礎自治体に関しては、現在の地方自治法では68人(人口110万人以上130万人未満)~100人(人口270万人以上)の上限が設定されているが、「100の行動」では、新たに人口100万人を超える基礎自治体であっても、議員の上限を50人とすることを提言する。

(2)【議員の働き方】議会日数を減らし(年間100日)、夜間・土日開催を!

 前述の通り、基礎自治体議会を構成する議員は、「普通の」一般的な市民の代表が選出されるような仕組みとすることが必要だ。

 例えば、多くの地域では市民の多数を占めるのはサラリーマンである。だとすれば、市民の代表としてサラリーマンをしている市民が議会の構成員になることが自然であるはずだが、実際には地方議会議員の大多数は議員専業(または農業・自営との兼業)であり、一般的市民の代表と呼ぶにふさわしい構成になっているとは言いがたい。

 これは、ほとんどの基礎自治体において、議会が平日の昼間に開催され、会期も年間100日を超えるためだ。従い、ごく普通の市民が企業勤務などの仕事と議員活動を両立しつつ議員となれるよう、議会の開催日数は年間100日を上限とし、開催日程は、夜間、土日・休日開催を基本とすべきであろう。1年間は約50週だから、平日夜1回、週末1回開催であれば、ちょうど100日程度となる。

 自分の仕事を行いながら土日・休日を行政のために捧げるような議員活動は、真に自らの住む街のことを考える奉仕精神の高い人材でなければ務まらない。基礎自治体の議会においては、そういった健全な奉仕精神を持った、様々な職業を持つ市民の代表が、議員となり、首長による執行権限の行使を監視・評価していくべきであろう。

(3)【議員報酬の払い方】地方議会はボランティアベースを基本とし、議員報酬は上限3万円の日当制とせよ!

 地方議員の中には、選挙目的のためだけの活動に終始していると一般の市民から見られている議員が目立つことは事実だ。これは、議員として専業で生活が成り立つ自治体が多いために、議員になること自体が目的化してしまう構造に問題があるからだ。

 欧州諸国では、基本的に地方議員は無報酬である国が多い。

 イギリスでは、基本的に給与は支給されず、議員活動に伴う諸経費や諸手当のみだ(例外的にロンドン議会議員には給与が支給されている)。フランス、スウェーデンでも地方議員は原則無給だ。ドイツでも地方議員は少額報酬で、議員がその議員活動によって本業の収入に損失を受けた場合に地方自治体によって補償される仕組みとなっている。イタリアは、出席に応じた日当が支給される制度だ。

 一方で日本は、地方都市でこそ市町村議会議員の報酬は低いが、政令市で議員報酬が最高額の横浜市では、議員報酬は月額約86万円で、期末手当がおよそ年間4ヶ月分で年収約1380万円、これとは別に政務活動費が月額55万円で年間660万円だ。さらに交通費や出張旅費などの名目で支給される費用弁償も2013年に復活した。

 この額が高いか低いかの議論は別にして、構造的に議員を生活の糧にすることを目標にしてしまう仕組みが、問題だと言えよう。議員が日当制になれば、そういった構造も是正されるはずだ。実際、福島県の矢祭(やまつり)町では、2008年に議会改革の最終段階として、1日3万円の日当制を導入している。

 普通の市民の代表に議会を構成させるため、地方議会はボランティアベースを基本として、上限3万円の日当制(年間100日議会で300万円となる)を提案したい。

 これらの改革によって、地方議会の在り方は激変しよう。これまで指摘されてきたような地方議会のゆがみの温床は無くなる。議員のいわゆる「うまみ」は無くなるため、真に市民を代表する人材、健全な奉仕精神を持った人材が地方議会に集まり、選挙の在り方も変わるはずだ。

2. 道議会は、責任ある分権国家の経営を!

(1)【議員の選び方】現在の都道府県を選挙区とした中選挙区制度の導入を!

 一方で、道政府に関しては、グローバルな視点で経済政策を展開し、これまで国が担ってきた広域インフラ整備などの政策課題を担当することになる。一義的には首長によるリーダーシップが取られるべきだが、議会としても道政府の抱える政策課題に取り組む必要がある。

 道政府は広域を担当することとなるため、所属する基礎自治体から万遍なく選出されることが必要だ。このため、道議会議員に関しては、現在の都道府県を選挙区とした中選挙区制度とすることが適切であると考えられる。

 議員定数に関しては、現行の都道府県議会議員は地方自治法によって120人の上限が決められている(人口75万人以下の都道府県では40人上限)。廃県置道において、人口規模のイメージは、人口400万人強の四国道から人口2000万人強の関西道までとなる。このため、人口10万人に議員1人とし、上限として最大でも議員定数を150人とすることが考えられよう。これにより、最小規模の四国道では道議会は40人規模、人口が1500万人を超える南関東道や関西道では150人規模の道議会となるイメージだ。
 
(2)【議員の働き方】道議会は広域な行政を担当する職業議員であるため、平日開催の定例会方式を!

 道議会は、現在の国会議員が本来担っている政策課題を担当することになる。従い、基礎自治体の議員とは根本的に役割が違う。経済政策や広域行政の検証に関する活動領域も広範囲となるため、道議会の議員は、議員専門職の職業議員として議会活動を行うことが適切である。道議会は、現在の都道府県で採用されているように平日に開催される定例会方式を採ることが適切だろう。

(3)【議員報酬の払い方】有能な人材を集めるために適正な報酬と政策スタッフを!

 道議会は、政府(道)全体の利益の実現がその役割となるため、各区域や特定の職業、利益を代表するのではなく、高いスキルや専門性を有する人材で構成されるべきであろう。また、議員の活動領域も広範囲となる。このため、道議会の議員はハイレベルな議員活動が行えるよう、相応の議員報酬を得るべきであろう。更に、公費による政策スタッフ給与の支給など、一定の議員の身分保障を担保すべきだ。

 広島県の湯崎英彦知事は、「国と違って大統領制である道政府では、執行部に対抗できるだけの政策立案能力を議会が有する必要があります。そのためには調査や企画ができるスタッフの充実も不可欠ですので、少なくとも現在の国会における政策秘書と一般秘書をつけることができるくらいの人件費を、支弁すべきでしょう」との御意見だ。

 優秀な人材に議員になってもらい、しっかりと良い政策を立案してもらう。それが道政府の議会のあり方であろう。

3. 議会/行政/市民の関係性の在り方改革

(1)【透明性の確保】議員と自治体職員の接触をすべて公開する「個別口利き防止条例」を全国の自治体に徹底せよ!

 そして、議会と行政、さらに我々市民との関係性を変える必要があろう。最も重要なのは、議会や議員の活動の透明性の確保だ。

 議員から自治体職員への不適切な関与や圧力を防ぐため、議員と自治体職員との接触を記録・公開する「口利き防止条例」に関しては、これまでも様々な自治体で制定された。

 2014年5月にも名古屋市で口利き防止条例が可決されている。同市では、2005年の道路清掃事業での汚職事件を受けて、市の「内規」として議員からの市職員への接触の記録業務が始まった。だが、記録対象を「適正な職務の執行を妨げる要望」に限り、記録するかどうかは個々の職員の判断に任せていたため、報告は0件で実効性が無かった。

 今回の条例では、政治家や市民など外部から市職員への働きかけや要望をすべて記録し、弁護士など第三者による市職員倫理審査会で不当要望に該当すると判断されれば公開が検討される制度となった。

 議員から自治体行政への関与は当然あってしかるべきだが、それが特定の個人や団体の利益を誘導するものであってはならない。このため、口利き防止条例によって、議員と自治体職員の接触、要望を「すべて」記録・公表する制度を全国全ての自治体で徹底すべきであろう。

(2)【市民参加】ネットを使って市民参加の拡大を!

 さらに、基礎自治体の市民やマスメディアの側も、国政や目立つ首長の動向ばかりを追うこと無く、自らの住む自治体の行政への関心・監視の目を強化することが求められる。

 ネットやスマホなどの普及によって、これまで受け身でしかなかった市民が政治を動かし、参加する基盤は大きく広がっている。これまで地方議員の専売特許とされてきた「市民の声を市政に届ける」という仕事は、ネットによって、市民が直接・簡単に発信できるようになった。

 例えば2012年に日本でも展開が始まったChange.orgは、様々なテーマについて誰でも署名活動ができるサイトである。無戸籍児童支援ファンドの法成立を、といった署名や、気仙沼の防潮堤の建設に反対する署名など、国政レベルのものから、大学での火気使用の解禁を求める署名といったコミュニティレベルのものまで様々なものについて、誰でも自由に署名活動できることになった。

 アメリカでは、この他にもネットを活用した署名・請願サイトが数多く立ち上がっている。こういった署名にはもちろん法的拘束力はないが、数が集まれば、行政も無視はできない。特に、住民に密着した規模の基礎自治体の行政に関しては、効果は大きい。

 署名活動にとどまらず、最も住民に近い自治体の行政に関しては、ネットを使った市民参加の仕組みをどんどん拡げるべきだ。そのことが地方議員の在り方にも影響を与えることになる。例えば、100の行動70総務4<5つの行動で「同時多発的」な自治体改革を!>で取り上げた、スマートフォンのアプリを活用して市民が道路や公園の修理の必要性を市役所に伝える「ちばレポ」の取り組みは、まさにこれまで議員がやってきた「仕事」をネットを使って市民が直接やってしまうという取り組みだ。飛躍的に発達したICTの技術を使えば、これまで議員の中心的な存在意義であった「市民の声を市政に届ける」仕事は市民が直接やってしまえることになる。そうすれば、基礎自治体議員は首長の監視役として、夜間土日開催の日当制で十分になる。

 地方議会の抜本的改革は、明らかに日本の地方を改革する起爆剤となろう。基礎自治体議会が、夜間・土日開催の日当制となると、多くの普通の市民が、選挙に出ることになろう。一方、道政府の議会は、適正な報酬と政策スタッフがつくことにより、責任ある分権国家の経営ができることになろう。さらに、口利き防止条例により透明性が増し、ネットにより、情報伝達や対話が増える。

 そうなると、「地方議員は何をしているかわからない」という不満は、なくなるであろう。一方、僕ら市(区)民、道民としては、選挙において良い代表者を選ぶ役割が重要になる。僕らが、地方議員が何をしているかを、しっかりと監視することが重要になる。なぜならば、僕ら、市(区)民、道民、国民一人ひとりの自覚が、日本を基礎自治体、道、そして国から良くしていくのだからだ。

 まさに、テレビ番組のニッポン未来会議のエンディングの通り、「ニッポンの未来を決めるのは、あなたたちだー」なのである。

 

京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル、1999年 エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、米国ハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)等を歴任。現在、経済同友会幹事等を務める。2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設。2011年3月大震災後に、復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、翌年一般財団法人KIBOWを組成し、理事長を務める。2013年6月より公益財団法人日本棋院理事。いばらき大使、水戸大使。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人(ごじん)の任務』 (東洋経済新報社)、『人生の座標軸』(講談社)等がある。

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