クールジャパンが熱い! 

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先頃のベネチア国際映画祭では、日本アニメの巨匠・宮崎駿氏が引退を表明したことが非常に大きな話題となった。宮崎氏は、『となりのトトロ』や『もののけ姫』など、日本屈指の人気アニメ映画を何作も生み出している。彼が監督したアカデミー賞受賞作『千と千尋の神隠し』は日本において2002年、ジェームズ・キャメロン監督の大ヒット作『タイタニック』をもしのぐ興行成績を上げた。僕自身、宮崎氏の人気には太鼓判を押すことができる。5人いる息子の全員が、彼の作品の大ファンなのだ。
もう1つ、僕が注目してきたことがある。それは、僕が経営するビジネス・スクールであるグロービスのMBAプログラムで学ぶ外国人の中には、『ドラゴンボール』や『ポケットモンスター』のようなマンガやアニメをきっかけに日本に興味を持った学生がかなり存在するということだ。

いずれにしても、宮崎氏にまつわるノスタルジックな思いにふけるうちに、僕は日本政府の「クールジャパン戦略」について考え始めた。「クールジャパン戦略」とは、マンガやアニメのようなクリエイティブ産業を日本経済の中心に据えることを目指すイニシアチブである。
日本のコンテンツに対する世界的な需要は大きく、なおかつ成長を続けているが、問題が1つ存在する。それは、そうしたコンテンツの中には、零細企業で作られているため海外市場に浸透できないものがあるということである。日本政府が手を差し伸べるべきところは、まさにそういった領域だ。間に入ってプロモーション・イベントを企画し、現地のパートナーを発掘し、産業コンソーシアムを結成するのである。日本政府は2012年7月、「クールジャパン戦略」を発表。それに続いて2013年6月には、5億ドルの「クールジャパンファンド」を発表した。その目標は、6分野――クリエイティブ・コンテンツだけでなく、ファッション、地域産品、食、観光、すまいの分野――の輸出を促進することである。
「クールジャパン」というコンセプトは実のところ、2002年に発表された“Japan's Gross National Cool(日本の国民総カッコよさ)”と題する記事にまでさかのぼる。この記事においてジャーナリストのダグラス・マッグレイ氏は、日本が20世紀の経済超大国から21世紀の文化超大国へと進化を遂げたと論じている。

実は僕は、話題となっていた「クールジャパン」を、国の政策と5億ドルのファンドに転換させるのに一役買った。どのようにしてかと言うと、2010年のG1グローバル・カンファレンスでパネル・ディスカッションを開催することにより、日本のクリエイティブ産業を海外へ売り込むための包括的な国家戦略を策定すべきだと初めて提案したのである。
僕は今も「クールジャパン」の可能性を探り続けている。今年のG1グローバルでは、Tokyo Otaku Modeの共同創業者である小高奈皇光氏もゲスト・スピーカーに迎えた。同社は、「オタク」コンテンツを世界に発信するウェブ企業だ(念のため説明すると、「オタク」とは日本のアニメ、マンガ、ゲーム、コスプレ、イラスト等の熱烈なマニアのことである)。

自身のウェブサイトについての小高氏の売り文句はシンプルである。それは、「『オタク』にとっての東京は、ファッション産業にとってのミラノやパリと同じ」というものだ。現地の日本人ジャーナリストと翻訳者のネットワークのおかげで、Tokyo Otaku Modeは最新の「オタク」関連ニュースを英語で日々発信することに成功している。
Tokyo Otaku Modeは2011年3月、フェイスブック上に立ち上げた。そのフェイスブック・ページは現時点で1,300万人以上のファンを獲得し、フェイスブック全体で第5位のファン数を誇る。そして、そのファンの99%以上は日本国外の居住者である。この事実は、日本文化の世界的な人気を裏付けるものだ。
小高氏と同様に、僕も日本の「オタク」文化、ならびにクリエイティブ作品全般が持つビジネスとしての可能性を信じている。日本のクリエイターたちは、人々を惹き付けてやまない優れたコンテンツを次から次へと生み出している。そうしたコンテンツが叩き出す数字は尋常ではない。最近のヒット作で、終末後の世界を描いたSFマンガ『進撃の巨人』の日本における販売部数は、2009年からの累計で2,300万部を超えている。海賊物のコメディ連載マンガ『ワンピース』に至っては、日本において1997年から累計2億9,000万部以上を売り上げ、マンガ史上最高の人気作となっている。これは、日本人1人当たり約3部の『ワンピース』を購入している計算になる。驚くべき数字だ。
ある連載マンガがいったん紙の上でヒットすると、その作品はたちまちエコシステム全体に展開される。つまり、その作品を元に、連続アニメや実写映画、テレビゲーム、トレーディングカード、アクションフィギュアが作られるのである。これは莫大な利益を生む。

クールジャパンは観光客や留学生も引き寄せる。韓国・中国との関係が悪化しているにもかかわらず、日本を訪れる外国人の数は過去最高の水準を記録しているのだ。
公共部門による支援と、民間部門のクリエイターや起業家による努力の甲斐あって、クールジャパンは一大ビジネスに成長した。今後、2020年東京オリンピック・パラリンピックの追い風を受けて、クールジャパン熱はさらに高まるはずである。
(Cover Photo: © Tokyo Otaku Mode)

この記事は、2013年10月1日にLinkedInに寄稿した英文を和訳したものです。

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