「廃県置道」(3) 地方の自立を!中央政府:道政府:基礎自治体の財源比率を1:4:5に! 

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初稿:2014年5月30日
第二稿執筆日:2016年4月14日

 100の行動では過去2回にわたって「廃県置道」に関する提言を行ってきた。1回目で、廃県置道の目的と区割りを論じ、2回目では、中央政府と道政府・基礎自治体の権限、業務、人材の移管を提言してきた。3回目となるこの「行動」では、中央政府から道政府・基礎自治体への思い切った財源委譲を提案したい。

 現状の国と地方の支出が4:6であるのに対し、税源は6:4である。地方で足りない収入は、交付金の形で中央政府から助成される仕組みになっている。地方で足りない分が、中央政府から助成され続けるならば、費用を切り詰めるインセンティブが働かない。子供がお小遣いを使いきっても、その都度親からお小遣いが支給されるならば、子供が出費を抑える意欲が生まれないのと同様だ。

 また、税収を上げる自由度が無いと、適切な投資をする意欲もわかない。現状は、少子高齢化が追い打ちをかけ、社会保障負担が増え、結果的に都道府県・基礎自治体に財政的自由度が無くなり、雁字搦めになっているのだ。お小遣いに依存する子供を成長・自立させ、自らが稼ぎ、さらに多くの収入を得るためにMBAで学ぶなどの投資を行わせ、拡大再生産をさせることが、親にとっては望ましいのだ。親が子供扱いする限りは、子供の自立や家族の繁栄もない。同様に地方を成長させ、自立させる意識や制度改革が無い限りは、共存共栄の道は開かれないのだ。

 今の都道府県の規模と税収の配分の仕方では、大人として自立できるための規模と収入の方法論が足りなさすぎるのだ。従い、「廃県置道」では、国と地方の関係を劇的に変えることを提案する。以下がその基本方針だ。

1) 区割りの規模を大きくして、税収も思い切って割譲する。

2)道政府・基礎自治体の意思決定の自由度を上げる。道政府・基礎自治体が、費用を切り詰め適切な投資を行い、税収が増える好循環が生み出せるような創意工夫ができる様にする。

 つまり、自立できる規模に拡大し、財源(稼ぐ自由度)を委譲し、適切な投資を行う自由度を与えることが重要になる。区割りは、先の行動で論じたので、この行動では、主に財源の移譲を論じることにする。


1. 権限、業務、人材の委譲に合わせて、財源を移譲せよ!

 では、財源案を提言する前に、今の中央政府、都道府県、基礎自治体の税収の割合を整理してみよう。


 現状では、確かに国:都道府県:基礎自治体の歳入割合が6:2:2になっていることが分かる。都道府県、基礎自治体の収入が不足しているために、「子供がお小遣い」を欲しがる状況となっている。

 そこで、廃県置道を実施した後の、必要経費を算出してみることにした。

 先の行動で提言した権限、業務、人材の委譲案に従って、極めてアバウトだが、中央政府と道政府、基礎自治体それぞれの必要経費を試算してみよう。


 これは近年の予算に基づいた粗々の試算であり、基礎自治体の合併集約、廃県置道への移行、中央政府の行革・スリム化によって、必要経費は大幅に削減されなければならないが、中央・道政府・基礎自治体に必要な財源の割合を考える参考になる。この試算に従えば、

 中央政府:道政府:基礎自治体=10%:39%:51%

となる。現在4:6といわれる支出の関係が、国1:地方9に劇的に変わっている。「100の行動」私案では、社会保険・社会保障のすべてを地方に移管するため、中央政府の歳出規模は極めてスリム化されている。また、道政府と基礎自治体の関係を見ても、4:5と、市民に最も近い基礎自治体が行政サービスを担当する近接性原則・補完性原則にそっているといえよう。

 続いて、以上のデータをもとに、新たな廃県置道における税源について提言したい。具体的には。6:2:2の財源を、権限・業務・人材の委譲に合わせて、1:4:5へと大幅に変更することが必要となる。

 それをどうやって実現するかが、重要だ。


2. 中央政府はプラットフォーム、道政府は経済、基礎自治体は生活と税収の哲学を明確化せよ!

 廃県置道における税収の考え方には、明確な哲学があると良い。今の税収の考え方は、ツギハギとなっており、何ら哲学を感じない。

 中央政府は、主に国家の基本となる司令塔業務や外交・防衛業務を行い、国民や企業の繁栄に責任を負う。いわゆる国家としてのプラットフォームを提供する役割を担う。一つの考え方だが、グーグルやアップルのプラットフォーマーが収入の30%を得ているならば、中央政府は法人税と個人所得税の30%を得るのが妥当であろう。

 道政府には、主に人口増や地域経済の振興となる業務を期待したい。年金医療介護を負担するので、それに見合った消費税の委譲が必要となり、警察や大学教育等のインフラを提供するので、相応しい財源が必要となる。

 そうなると財源は、法人税7割で、消費税半分とするのが望ましい。思い切った経済振興で、人口を増やし、消費や事業活動により税収が増える施策を期待したい。

 基礎自治体は、主に人々が豊かな生活を送れるための行政サービスを行う。年金医療以外の社会福祉があるために消費税の半分は必要となり、小学校から高校までの教育や消防、都市計画に責任を負うので、個人所得の7割を受けて整備する必要があろう。

 この様に、廃県置道後に、それぞれの明確な目的が設定される。中央政府は、日本と言う国家(プラットフォーム)の魅力を高め、道政府は、人口増・経済振興を担い、そして基礎自治体は、生活向上を目的とする。

 そうなると、中央政府から道政府や基礎自治体への大幅な業務移管に伴って、多くの財源を国から地方に移す必要がある。その最大の移管の方法は、消費税を地方(道・基礎自治体)財源に移管することだ。消費税は、税源の偏在性が比較的低く、景気にもあまり左右されないと言われるため、道政府・基礎自治体における安定収入を見込むことができる。消費税は社会保障財源として国に残すべきだとの主張もあるが、廃県置道移行後、社会福祉や保険制度は道政府・市町村の主要歳出となるため、役割分担の変更とあわせて消費税移譲も行われるべきだ。

 消費税の地方移管に関しては、100の行動28財務省編2<歳出削減のしくみを政府に組み込め!>でも提言した。消費税を地方税化し、地方が税率を自主決定できる制度とすることで、地方の努力と創意工夫がその自治体の税収増/歳出増に直接結びつくシステムとなるのだ。道政府・基礎自治体に課税自主権を持たせ、地方が創意工夫をして企業を呼び込み、消費税を上げ下げし、地元での消費を増やし、歳入を増やす努力をする仕組みとなるわけだ。

1) 中央政府の財源は、プラットフォーム提供フィーとして、現行の法人税の3割と所得税の3割を基本とせよ!

 では、中央政府の財源について詳細に考えてみよう。中央政府の役割は、外交・防衛、エネルギー政策や、基礎研究やクールジャパンなどの文化振興を通して国家(プラットフォーム)としての魅力を高めることである。その考えに見合った歳入減が必要となる。

 国の財政を圧迫していた社会保障関係経費を地方に移管すると、中央政府の財政は大幅にスリム化され、必要経費は10兆円強となる。このため、法人税、所得税、消費税の主要3税のうち、法人税収のみでも事足りてしまう。しかし、景気に大きく左右される法人税のみに国家の財政を依拠させるのは好ましくない。従って、中央政府の財源は、現行の法人税(国税部分)の3割と所得税(国税部分)の3割を残し、これらを国家財政の基本とする。

 これらに加え、関税などを含むその他収入(平成25年では3.9兆円)も中央政府の財源とする。(なお、近年国の歳入における「その他収入」が大きいが、これは税収不足を特別会計の埋蔵金等で穴埋めするために捻出されたものであると考えられ、永続的に数兆円規模の収入となるとは考えにくい。) 

2) 道政府の基幹財源は、「経済活動に関わる税」。つまり、法人税7割、消費税の半分とせよ!

 道政府は、人口を増やし、経済活動を振興することを主な目的とする。年金、医療、介護等の社会保険を担うため、財源の強化が必要だ。このため、先述のように消費税(半分)を道政府に移管するとともに、国から法人税の7割を道政府に移管する。さらに、現行では国税とされている各種物品税(酒税、たばこ税、揮発油税等)についても、道政府に移管する。

 現在、都道府県税となっている各税は、都道府県民税(基礎自治体に移管する(後述))を除き、道政府にスライドさせる。これにより、消費税と法人税が道政府の基幹財源となる。併せて物品にかかる税も道政府の財源となるため、主に経済活動に関する税は道政府という構造となる。
 
 各道政府は、独自に経済政策を展開し、企業を内外から誘致し、消費税率、法人税率、各種物品税率を自由に決めて、経済成長と税収増のための政策を展開する仕組みが構築される。お小遣いをもらう子供ではなく、大人として自立し、自らに投資をし、永続的に収入を生み出す存在となるのである。

3)基礎自治体の基幹財源は、「人に関わる税」。消費税の半分、所得税の7割、市町村税、各種資産税とせよ!

 基礎自治体に関しては、人頭税である市町村税に、現在の都道府県税を加えて、これを基幹財源とする。人頭税である市町村税・県民税を一括して基礎自治体の財源とすることも、基礎自治体が人を呼び込むインセンティブとなることに加え、住民が多いほど行政サービスにかかるコストも増えるため、合理的と言えるであろう。

3. 廃県置道における中央政府、道政府、基礎自治体の財源分担は、1:4:5!

  以上に従って新たな廃県置道国家日本における中央政府・道政府・基礎自治体の財源分担「100の行動」私案を以下に示す。 

『21世紀日本の廃県置道「100の行動」私案』


廃県置道における中央政府、道政府、基礎自治体の財源分担

 「100の行動」私案では、国:道:基礎自治体の財源配分は、1:4:5となり、現在6:2:2と言われる国と地方の歳入構造が劇的に変わっている。所得税・法人税・消費税の主要3税に関して、所得税と法人税の3割のみを国税として残し、大幅に地方の基幹財源として移管することが最大のポイントだ。

 道政府と基礎自治体は、税目、税率等を独自に決定し、財源の確保と経済発展を図る課税自主権を持つことになる。相互に自主・自立性を発揮して、発展的競争を可能にするのだ。

 この新たな税源分担に関しても、この私案をたたき台として各界のリーダーたちの英知により、大いに議論が進むことを期待したい。 

4. 地方交付税は廃止し、道政府・基礎自治体の財源は独立採算を徹底せよ!

  新たな道政府は、それぞれが中規模国家レベルの地域経営を行う。つまり、自立して行政を行い、その地域の税収でその地域の運営をまかなうことになる。 

 現状の地方交付税制度により、昨年度16.8兆円が地方に配分された。まさに、財政力の低い自治体への「財政調整機能」を担っているのだが、複雑な交付税制度によって道政府・基礎自治体における歳入増/歳出減のインセンティブが働きにくくなっている。従い、当然これを廃止することが必要となる。

 新たな廃県置道においては、税は所得税、法人税の一部を除いてほぼすべて地方財源となる。道政府・基礎自治体が創意工夫をして企業を呼び込み、人口を増やし、地元での消費を増やし、歳入を増やす努力や競争をさせる仕組みが可能となる。そのためには、道政府・基礎自治体の財源は独立採算が徹底されることになる。

 一方で、東京特別区と沖縄特別区に関しては、別の考え方をとるべきだと考える。現在の東京都23 区は政治・行政・経済が集中しており、税収や GDPは他の地域と比べて極端に大きくなっている。東京23区の税収は、約6兆円(道府県税と市町村税の合計)、国税収入は 20.6 兆円と巨大だ。新たな道政府の財政規模を今の税収から単純に試算してみても、東京特別区の財政力が突出していることが分かる。


 これによると、東京23区の現行制度における税収総額(国税+地方税)が26.6兆円、うち、所得税が7.2兆円、法人税が7.7兆円である。100の行動私案ではそのうち3割は中央政府の財源として残すとして4.5兆円を差し引いても、新たな東京特別区の歳入規模は22.1兆円という巨大さとなる。

 現在の都と区の歳入規模が既述のとおり合計で6兆円であるから、廃県置道によって社会保障等大幅な国からの業務移管があるとしても、新たな東京特別区の歳入規模は一気に3.7倍にもふくれあがり、著しくバランスを欠いてしまう。 

 このため、東京には日本の首都機能が存在していることもあり、東京特別区から徴収される税収に関しては、法人・個人所得税の5割ないし7割を中央政府に移管することも検討してよいであろう。この財源から、国の債務返済に優先的に充当する、または一定期間に限って、財政力の弱い道政府への最低限の財源調整機能を担わせる等、特別の取り扱いを検討してよいだろう。また、沖縄特別区に関しては逆に特別区として財源を追加的に充当することを検討すべきであろう。 


5. 国・地方の長期債務問題に早期に道筋をつけよ!

  国・地方の長期債務残高が1000兆円近くある危機的な財政状況下において、廃県置道に伴って国から道政府・基礎自治体に抜本的に税源移譲を行うことは、国の債務返済能力に影響を及ぼしかねない。このため、廃県置道に際しては、長期債務の取扱いに一定の道筋をつけることが必要だ。

 廃県置道移行に伴う長期債務問題に関しては、以下3つの考え方がある。 

1)現行のまま、国・地方が債務を保有し、それぞれが返済を行う

2) 税源移譲に応じ、道政府・基礎自治体へ債務を割り当てる

3)債務返済を目的とする別組織を設立し、既存債務を移管する

 どの考え方であっても、債務の額が変わる訳ではない。国の長期債務を税源委譲とともに各道州に分散させたり、別組織に移管したりするのは、返済能力にかかる不安を招きかねない。従い、長期債務に関しては国に残すべきとの立場に100の行動は立つ。

 となるとどうやって返済するかが重要になる。債務返済の道筋が立つまで、地方へ移管した財源から一定割合を国債整理基金特別会計に繰り入れるのも一案だ。

 例えば、地方に移管する法人税、所得税の7割分のうち、1割分を一定期間債務返済に充てることにすると、近年ベースで毎年2兆円強(景気がよくなればさらに大きな額となる)を国債整理基金に繰り入れることになる。さらに加えて、一定期間を区切って国債返済のための特別消費税を創設し、5%の税率上乗せが実施できれば、毎年13兆~15兆円規模の財源を真水で国債返済に充てることが可能となる。

 いずれにしても、莫大な財政赤字に縛られていては新たな道政府の財政も硬直化し、地方の自主性・自立した地域運営もままならない。【100の行動 財務省編】で示したように財政再建に奇策はない。政府のやるべきことはシンプルである。歳入を増やし、歳出を聖域無く減らすことだ。徹底した行革・歳出・歳入改革を進め、財政再建の道筋をつける必要がある。廃県置道の導入それ自体も抜本的な歳出入改革である。廃県置道の区割り、権限業務人材移管、財源移管を一体とした大胆な改革を、政治の強力なリーダーシップで押し進めることが必要だ。

 さて、この廃県置道を、是非とも政治家の皆さん、そして国民が声をあげて実現させたいものだ。考えれば考えるほど魅力的な施策だと思う。廃藩置県から数えて今(2014年)は142年目だ。廃藩置県150周年となる2021年までには、新たな国のかたちを実現したいものだ。

 古川元久元大臣や鈴木寛元副大臣からもエールを頂いた。難しい問題が多いが、維新政府が行った廃藩置県に比べると、廃県置道の方がはるかに楽である。日本の未来に責任を持つ僕ら自身が、100年後、150年後を見据えて真剣に考えて行動に移すことが重要だ。 
今、日本は少子高齢化で人口減だ。思い切った「廃県置道」を実施しないと、地方はじり貧となる。思い切った行動が、今こそ求められているのだ。まさに、BS-TBS「ニッポン未来会議」のキャッチフレーズ、「ニッポンの未来を決めるのは私達だー」である。
 

京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル、1999年 エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、米国ハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)等を歴任。現在、経済同友会幹事等を務める。2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設。2011年3月大震災後に、復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、翌年一般財団法人KIBOWを組成し、理事長を務める。2013年6月より公益財団法人日本棋院理事。いばらき大使、水戸大使。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人(ごじん)の任務』 (東洋経済新報社)、『人生の座標軸』(講談社)等がある。

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