アベノミクスの実力は? 

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僕はカンファレンスに参加する機会が多い。最近では、ロサンゼルスで開催されたミルケン・インスティテュートのグローバル・カンファレンスと、ミャンマーのネピドーで開催された世界経済フォーラム東アジア会議に出席し、スピーチをした。

どちらのイベントでも感じたのは、国際社会がいかに日本の景気回復に関心を抱き、成功を望んでいるかということである。もちろん、長らく待ち望まれた日本経済好転の立役者は、2012年12月末から内閣総理大臣を務める安倍晋三氏だ。

安倍首相は選挙戦に乗り出した11月半ばから、明確な方針を打ち出していた。その方針とは、「経済の景色」を一変させ、20年続いたデフレと不況に終止符を打つことである。

選挙に勝つ前から、安倍首相の大胆な政策にはマーケットを動かすだけの力があった。選挙公示日から何カ月にもわたり、株価は60%以上の上昇、円は25%の下落に向かって動き続けた(しかもこれは、5月の大規模な修正を経た数値である)。不動産価格も上昇し、失業率は低下、GDP成長率は上昇した。

企業の景況感も上向き傾向にある。2013年5月、日本の産業の先行指標的存在であるトヨタ自動車は、営業利益が約3倍の1兆3,000億円(130億米ドル)まで増加したことを発表した。今年度の営業利益については、円安の追い風も受けて36%の増加を予測している。

マスメディアは安倍首相の政策パッケージを「アベノミクス」と呼んでいる。キャッチーなフレーズだが、具体的には何を意味するのだろうか。説明してみよう。

アベノミクスは3つの中核的要素、通称「三本の矢」から構成されている。第一の矢は、大胆な金融政策である。安倍首相は3月、元アジア開発銀行総裁の黒田東彦氏を日本銀行総裁に任命した。黒田総裁は2年間で2%のインフレを達成し、マネーサプライを倍増させるという目標を設定している。

第二の矢は、10兆円(1,000億米ドル)の公共事業パッケージからなる機動的な財政政策。第三の矢は、成長戦略である。安倍首相は、ありとあらゆる分野の構造改革を視野に入れている。例えば、指導的地位につく女性の割合を2020年までに30%に増加させるという目標を掲げる一方で、12カ国による自由貿易協定である環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に参加し、貿易自由化と日本国内の規制緩和を推進することを目指している。

この矢継ぎ早の政策に、有権者は初めこそ戸惑ったのだが、安倍首相は70%前後という驚くほど高い支持率を維持している(それに対し、バラク・オバマ大統領の支持率はわずか45%にとどまっている)。安倍政権発足後の日本を訪れれば、誰もが「空気が変わった」と感じるだろう。日本人のマインドセットがさらに前向きになりつつあるのだ。

僕はビジネス・スクールの学長であると同時に、ベンチャー・キャピタル・ファンドの代表でもある。そのため、日本経済を間近で見守る立場にある。「アニマルスピリット」ははっきりと見て取れる。僕たちは今年に入ってから、インターネット関連企業のIPO(新規株式公開)を2回実施している。どちらのケースでも、株価は取引初日に3倍または4倍に上昇した。かつて、僕たちのファンドの資金は80%が日本国外からの出資で組成されていたが、現在は日本の投資家からの出資も増えつつある。

とはいえ、安倍首相が数十年来の問題を数カ月で一気に解決できるとは考えにくい。懐疑的な評論家は、GDPの2倍を超える財政赤字や、円安によるエネルギー価格の急騰といった、重大な障害について指摘している(福島第一原発の事故を受けて国内のほとんどの原子炉が稼働を停止して以来、日本はエネルギー輸入大国となっている)。

経済学者のヌリエル・ルービニは2013年4月のレポートで、「迅速に政策を調整するだけでは不十分」であることを強調している。ルービニによれば、安倍政権は財政刺激策の第1弾を実施した後は、財政をしっかりとコントロールしなければならず、さらに構造改革と貿易自由化に関する公約を果たす必要もあるという。

個人的には、安倍首相は日本を「取り戻す」ことに全力を尽くしていると思う。安倍首相が6月10日にWEF東京会議で行ったスピーチで、「他に選択肢はない(There is no alternative)」(略してTINA)というフレーズを使ったのを聞いて、僕は感銘を受けた。このフレーズは、改革者の故マーガレット・サッチャー元英国首相が好んで使った表現である。

日本には「千里の道も一歩から」ということわざがある。確かに、日本経済のエンジンを全開にするためになすべきことは、まだまだたくさんある。だが、アベノミクスのおかげで、僕たちは素晴らしいスタートを切ることができたのだ。
(Photo: © mindweb2 - Fotolia.com)
この記事は、2013年7月12日にLinkedInに寄稿した英文を和訳したものです。

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