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「廃県置道」(1) 10の道州、300の基礎自治体による、新しい国のかたちを!

投稿日:2014/05/18更新日:2019/04/09

初稿執筆日:2014年5月16日
第二稿執筆日:2016年4月1日

 明治維新直後の1871年に、当時の藩を廃止して新たに府県を設置する「廃藩置県」が敢行された。それから140年以上が経過したが(初期には都道府県の変遷は一部あり、最近では市町村合併などがあったものの)、基本的に不変の枠組みで日本の国のかたちは今に至っている。

 この140年強の間に、交通はめまぐるしく進化し、人々の動きは活発になり、コミュニケーション手段も飛躍的な進化を遂げている。人、モノ、情報のモビリティは国境を越えて大きく発展し、グローバルな競争に地域が晒されていることになった。その大きな変化があったにも拘わらず、大昔に行われた廃藩置県で構築された中央集権体制は基本的に変わっていない。

 道州制に関しては2006年に道州制特区推進法が制定され、道州制担当大臣も置かれた。当初は2018年までに道州制を導入するとの目標も立てられたが、その後、具体化されていない。安倍政権で自民党は道州制基本法の制定に向けてやや動き出したようだが、その動きは不透明だ。

 道州制の導入といっても、単に都道府県を切り貼りして数を減らすだけではほとんど意味はない。筆者が考える道州制への移行の最大のポイントは、以下の3点だ。

(1)規模の確保: 十分な経済・人口規模を持つ道州を新たにつくることで、各道州政府に規模の経済性が働き、道州単位で地域経済を強化する明確な戦略を描くことができ、効率的な地域サービスが可能となる。

(2)権限と業務の移管: 基礎自治体に可能な限り権限を移管することで、地方分権が確立し、地域の実情に即した迅速で且つ効率的な意思決定と遂行が可能となる。地方政府に出来る業務は全て地方に移管することで、中央政府を小さくて強い政府に変えることができる。中央政府の業務を外交防衛などに限定し、中央政府の政治家や官僚が、国家運営に必要不可欠な業務に専念できる体制とする。

(3)財源の移管: 財源(税収)を国、道州、基礎自治体に明確に分けて移管し、中央から地域へ補助金を出す制度を原則止める。つまり、各道州と基礎自治体単位で財源(税収)を確保し、その税収に見合った投資・支出を行い、さらなる発展に向けて道州・基礎自治体単位で意思決定し、実行できる体制とすること。

 2021年に、廃藩置県体制は150周年を迎える。廃藩置県150周年を期限に、この際、都道府県制度を廃止し、新たに道州を設置する「廃県置道」を断行しようではないか。

 100の行動「総務省編」では、新たな国のかたちを創る「廃県置道」に関して、規模(枠組み)、権限、財源の3つに分けてその明確なビジョンと具体案を示していきたい。

1. 都道府県を廃止し、全国に10の道州と2つの特別区を設置せよ!

 道州制の導入は、数多くいるステークホルダーが「総論賛成・各論反対」に陥りやすく、議論ばかりしていると結局進まない可能性が高い。

 強い政治のリーダーシップのもとで、明確なビジョンを示し、道州制導入を断行してほしい。上記の3つの道州制導入による成果を実現するために、都道府県を廃止し、日本に新たな12の道(10の「道」と2の特別区)を置き、20万~40万人からなる300程度の基礎自治体に再編する「廃県置道」による新しい日本の国のかたちを改めて提案したい。なお、道州制に関しては、北海道以外の同州を「州」とネーミングする案が多いが、100の行動では、道州制においては特別区を除いてすべて「道」としたい。

2. 新たに北海道、東北道、南北関東道、北陸信越道、東海道、関西道、中国道、四国道、九州道と東京特別区、沖縄特別区を設置せよ!

 道州制の導入に関しては、既に長い時間をかけて国民的議論が行われてきたといって良いだろう。道州制は今や「実行」に移す段階だ。そのためには、具体的にどういう地域割りで新たな州を設置するかという区割りが必要になる。

 これまで道州制の具体的な区割りに関しては政府を含む様々な団体が各種の案を提案しているが、「区割りの具体化は国と道州の役割分担や税財政制度など、道州制の基本的な制度設計が明らかにされた上で進められるべきだ。区割りが先行するのは危険だ」などといった批判があり、具体化が進んでいない。しかしこれは「総論賛成各論反対」の典型である。区割りに言及しない道州制構想は、具体性を欠いた机上の空論に過ぎない。

 100の行動では、あえて新たに設置する道州の区割りと道都に関して、最初に具体案を示したい。

『21世紀日本の廃県置道・「100の行動」私案』

<道州の区割りの基本的な考え方>

(1)経済圏としての一体性

(2)歴史的・社会的・文化的な一体性

(3)スケールメリットを活かせる経済・財政規模

 重要な視点は、「道」としてグローバルな競争が可能であることだ。たとえば、下記の試案では、特別区を除く最小規模の四国道でもハンガリーやバングラディッシュ等の中規模国家と同程度の経済規模を持つ。

<具体的区割りと道都および各道の規模>

北海道、東北道に関しては、ほぼ異論はないであろう。

 南北関東道に関しては、埼玉県が生活圏的に南関東州との一体感があるが、地理的に北関東州の結節地域としての重要性を重視し、北関東道に所属させた。南関東道に関しては、千葉と神奈川の東京湾アクアラインによる地理的一体性を考慮した。

 北陸信越道、東海道に関しては議論が分かれるところかもしれない。長野県に関しては地理的に北陸・新潟とのつながりが強い事から東海道ではなく北陸信越としてひとつの「道」を形成させた。なお、福井県西部や三重県北西部に関しては関西道に、長野県南部に関しては東海道や北関東道に、静岡県東部に関しては南関東道に所属させるといったことも考えられる。人の移動、生活圏、物流の実態などを考慮して既存の都道府県の境界によらない区割りを検討するかどうかは、別途議論が出よう。

 関西道、中国道、四国道、九州道に関しても、それほど異論は出ないと考えている。四国道が規模として小さすぎるため、中国道と合併させるべきとの議論もあり得るが、既述のように経済規模では四国道でも世界の中程度の国家と同レベルであり、中国道と合併させた地域的一体性は、3本の橋はできたものの考えにくいため、独立した「道」とした。

 沖縄に関しては、これまで100の行動でも強調してきた、歴史的・文化的背景そして、地政学的な重要性もあることから、特別区としている。東京に関しては、中心の数区のみを特別区とする考え方もあるが、100の行動では23区全体を特別区とした。

 なお、道都に関しては、様々な視点があろう。カリフォルニアの州都は、人口5万人くらいのサクラメント市にある。元佐賀県の古川康知事は、経済的な中心地とは一線を画し、道都を小さな町に置くほうが良いというご意見だ。九州なら、たとえば湯布院とか、交通至便な久留米市とか、佐賀県代表を出すなら鳥栖市という発想である。

 いかがであろう。この私案をたたき台として、是非多くの議論をいただきたい。日本のリーダーたちの英知を集結して多いに議論を加速し、具体的な道州制の形を明確化して欲しい。

3. 独立性の高い道政府を設置せよ!~道州基本法、徴税権を持つ行政府、自主立法権を持つ道議会など

 繰り返しになるが、道州制導入の最大のポイントは、「道」経済の強化や、「道」政治・行政の効率化などの各「道」の競争力強化に各道政府がインセンティブを持てる制度とし、それぞれの競争によって日本全体を強くすることだ。

 そのため、各「道」に「政府」と呼ぶことができる強い独立性を持った行政組織をつくることが必要だ。国と地方の役割分担や税源分担に関しては次回以降で述べるが、道州制への移行にあたっては、「廃県置道」とも呼べる新たな「道政府」の設置を行う必要がある。

 各「道」は、グローバルな競争にも「道」単位で対応する必要がある。先述したように、新たに設置される「道」では、経済規模が最も小さくなる四国道でも、欧州やアジアの中程度の国と同規模となる。北関東道や九州道もベルギーやノルウェー、ポーランドと同規模であり、大規模になる南関東道や関西道に至っては、インドネシアやトルコ、オランダなどのGDPを凌ぐ規模となる。

 新たな各「道」は、それぞれ単独で中規模国家レベルの経済運営・行政運営をグローバルな視点で進め、各「道」の競争と切磋琢磨によってその集合体としての日本の競争力を強化していくのが新たな日本の国の形だ。そのため、新たに設置する「道」は、決して今の都道府県の切り貼りと国からのささやかな権限委譲に留まることなく、国の形を抜本的に改め、各「道」が単独で中規模国家としてもグローバルに伍していけるような設計が必要だ。

 その為には、各「道」には、憲法といえる自主課税権、税率決定権、徴税権を有する道政府、自主立法権を持つ道議会を有する独立性の高い道政府を設置すべきだ。具体的な役割分担は、次の「行動」で述べることにする。

4. 基礎自治体最低人口20万~40万人の下限を設定し(過渡期は人口5万人を下限に設定)、約300の基礎自治体に再編せよ!

 冒頭、道州制導入のポイントとして、最初に「基礎自治体に可能な限り権限を集中することで、地域の実情に即した迅速で効率的な行政が可能となること」を挙げた。道州制導入の意義において、「地方分権の徹底」「地域主権社会の確立」といったポイントは、コンセンサスのあるところであろう。

 そうであれば、最も多くの重要な行政サービスを提供する主体は、国でも「道」でもなく、基礎自治体でなければならない。その基礎自治体が効率的な行政サービスを持続的に提供するには、ある程度の規模化が必要だ。現状でも既に国民健康保険、介護保険などの負担に耐えきれない基礎自治体が増えている。これからさらに少子高齢化や過疎化が進んでいく。基礎自治体も、今まで以上の行政エリア、人口、経済・財政規模を確保し、基礎自治体単位で、社会保障サービス等が円滑に提供できる体制を整える必要がある。

 基礎自治体、道州、中央政府の役割分担については後述するが、基本的な考え方は、「近接性の原則」・「補完性の原則」に基づいて、基礎自治体が市民生活にかかわる具体的な行政問題すべてについて地域の実情に合わせて担当する。その上で、広域による施策が効率的・合理的な仕事を道州が担当し、道州でも担うことが困難な仕事を中央政府が担当するという原則となる。

 基礎自治体がその役割を十分に発揮するには、適正な規模であることが必要だ。基礎自治体の合併が進み、適正規模になれば、自治体の財政力・経済力が強化されるだけでなく、医療や介護、行政サービスなども効率的かつ低コストで維持することができる。

 1999年から2010年までに実施された「平成の市町村大合併」によって、日本の市町村数は3232から1727まで縮小したが、今でもなお、集約化は不十分だ。

 このため、基礎自治体人口の下限を過渡期は5万人とし、長期的には人口20万~40万人を基礎自治体人口の下限とし、同時に市町村合併への徹底したインセンティブ・ディスインセンティブ施策を用意し、市町村合併を促進すべきだ。基礎自治体の合併・集約と権限委譲を進めれば、これまで担ってきた都道府県の役割はいっそう縮小し、都道府県の存在意義が薄れ、広域政府としての道州制への移行の合理性も増すことになる。

 人口20万~40万人の基礎自治体へ集約されれば、約300強の基礎自治体に日本が再編されることになる。単純計算では、「道」は10(沖縄、東京の特別区を除く)であるから、30強の基礎自治体で1つの「道」が形成される。道州制の導入を機に市町村合併を再び徹底的に促進し、基礎自治体の規模化を進めるべきであろう。

5. 道州制基本法の早期制定と道州制実施法の実現を!

 自民党の道州制推進本部は2013年から、国会への道州制基本法案提出を目指し、同年夏の参院選でも公約として「道州制導入を目指す」と掲げているが、町村会や全国知事会の反発のため、議論は中断していた。しかし、2014年3月には、安倍首相が地方の反発に配慮しつつも道州制推進基本法案の党内議論の再開を認め、同年の国会での道州制基本法案提出を目指していた。

 日本の国のかたちを根本から変える道州制の導入には、一連の改革の最上位に位置づけられる根拠法として道州制基本法の制定が必要である。自民党案では、基本法には道州制の基本理念、基本的な方向性、推進本部の設置、道州制国民会議の設置などが規定される。

 道州制の導入によって制度変更される分野は極めて広範囲にわたり、改正を要する法令も数多い。道州制を早期に実現するため、道州制基本法を早期に制定するとともに、速やかに次のステップに移行し、具体的なタイムスケジュールと実現に向けた工程表、中央・地方の担う行政の役割分担と道州制の具体的区割りなどを明示する「道州制実施法」を早急に制定すべきだ。

 廃藩置県から150年後となる2021年には是非とも道州制が実現することを願っている。いや、そのためには、僕ら国民が積極的に関与する必要があろう。次の行動では、中央政府、道州、そして基礎自治体の権限と業務の役割分担について、提言したい。

 


 

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