ダボス会議2014年~8)ダボス会議を振り返って 

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2004年に初めてダボス会議に来てから、今年で10年となる。ダボス会議は、世界のリーダーを集める「磁場」の役割を果たし、出会いや学び、発信面において世界最高のポジションを不動のものにしている感がある。

今年のダボスを振り返って、5点だけ考えをまとめてみたい。

1) Japan is Back!

開会式のオープニングの基調講演を安倍総理が実施したこと、そして最後のグローバル・エコノミック・アウトルックのセッションに黒田日銀総裁が登壇したことにより、日本がダボス会議の最初と最後を占めて、日本の存在感がとても高いものになった。また、国会の所信表明演説を挟み、前半に下村大臣、山本大臣、甘利大臣が、後半に茂木大臣、林大臣が来られ、全部で5大臣がダボス会議に参加された。更に、二日目の木曜日の夜にジャパン・ナイトそしてグロービス・ナイトが開催され、最終日の土曜日のランチはジャパン・ランチ等、登壇以外の面でも、日本の存在感が大きかった。

開会式で、クラウスシュワブ氏が、「Japan is Back!」と力強く宣言したことにより、この言葉が一つのキーワードになった。ジャパン・ナイトで乾杯の挨拶をした長谷川同友会代表幹事は、冒頭で「Japan is Back!」と力強く叫んだ後に、「Back!だけでは元に戻るだけで物足りない。更に良いものに変革する努力をしていきたい」と真っ赤なはっぴを羽織りながら、参加者に力強く訴えかけて、「乾杯」と皆で唱和した。

これらが象徴するのは、日本が力強く復活した事実であり、チーム・ジャパンが一丸となり、更に日本を良くしていこうという姿勢だった。スイスの友人が安倍総理のスピーチを聞いて、「僕が日本人だったら、日本人であることをとても誇りに思うと思うよ」と言ってくれた。この一言が、日本の勢いを象徴していた。来年のダボス会議でも、政治・経済的にも結果を出し、更に力強く「Japan is Back!」と世界に印象付けられるように努力をしたい。

2) 楽観主義が支配するも、良い意味でも悪い意味でも日本以外に主役がいないダボスだった

ロイターの記者が、「2006年から中国がダボス会議の話題を全てさらっていった。2009年からはインドだ。だが、双方とも勢いを失った。今年の注目は日本だ」と開会前に言った。その予言の通り、日本が一番目立った会議だった。だが、「次に目立った国はどこか?」と問われると、これが思いつかないのだ。

ホームであるヨーロッパ諸国は、マリオ・ドラギ欧州中央銀行総裁の力量により、ユーロ危機がようやく落ち着いた感じだ。短期的に応急手当てを要する問題は全て解決し、市場の不安を払しょくした雰囲気を感じた。今後は長期的課題、具体的には、欧州の金融機関の不良債権の償却・資本増強とともに、抜本的な労働市場改革や規制緩和、更には雇用創出に取り組むことになろう。可もなく不可もなく、だ。

米国は経済は回復基調にある。中国は政治的に安定し、経済的には緩やかな成長を遂げている。全般的に世界経済は上向き加減だ。BRICsはほぼ死語になり、MINTが良く聞かれた。Mexico、Indonesia、Nigeria、Turkeyの頭文字だが、これもあくまでもG7 とBRICs以外で人口が多い国を列挙しただけだ。迫力が無い。

一方、経済的に悪い国・地域は、アルゼンチンが多少話題に上がったが、この問題が南米全体に波及することは考えにくい。その結果、リーマン・ショック後の問題はほぼ解決し、世界は慎重ながらも楽観主義に覆われていた。

だが、皮肉にも、長期的な問題は、ほぼ手つかずだ。特に若年層の失業問題については、多くの議論がなされていたが、解決策すら見つかっていない印象を持った。

3) ダボス会議の革新性の二極化傾向

ダボス会議に参加している人々は、政治家、国際機関、大企業、学界、NPOが大半である。これらの参加者が、インターネットによる変化に対してどれだけの危機意識を持って取り組んでいるかは、疑問に思えた。

シリコンバレーからは、グーグル、フェイスブック、ヤフー、シスコ、セールスフォース・ドットコム等の企業が参加している。他にもVCも多く来ていた。また40歳以下を対象としたヤング・グローバル・リーダー(YGL)の枠組みがあり、さらに30歳以下のグローバル・シェーパーもあった。だが、革新性においては、二極化傾向にある印象を持つ。大企業・政治家中心の議論と、革新的な発想を持ったイノベーターとが、交わらずに相互に独立して存在している感がある。主催者の肩を持つと、「革新性」については、サマーダボスがあるのでそちらに譲り、冬のダボスは今のままで良いと言う考えもあろう。

個人的には、本会議開催前に開かれた、「ニュー・チャンピオン」の集いはとても興味深いものだった。僕が参加したセッションは、大きく変化していく可能性がある「ウェアラブル・テクノロジー」と「新たな教育」と言うテーマだった。その日の夜のディナーでは、10数人の経営者が「新たなリーダーシップ」に関して、33歳のウォートンの教授を招聘してディスカッションする機会も得た。

本会議中のセッションでは、「ネットによる変化」をまとめてくれたドン・タプスコット氏の30分間の対談は興味深かった。今までのネットを通しての変化、そしてこれからの起こり得る変化を分かりやすくまとめてくれた感じがあった。今後の変化を見据えて、今何をすべきか等は、G1サミットで大いに議論してみたいテーマでもある。

4) 日中、日韓の関係改善の可能性は僅かながら見えて来た!?

安倍総理が、朴大統領のスピーチを30分最前列で聴講されたこと。そして、安倍総理が韓国のユン・ビョンセ外相や大統領側近と握手をしたことは、成果があったと言えよう。下村大臣も「コリア・ナイト」を訪問した。日本のオープンな姿勢を示すことにより、日韓は、雪解けの気配が見え始めた気がする。

一方日中は、日中友好朝食会を開催するも(僕が知る限り、これで4回目ぐらい?)中国側の参加者が、毎回のことではあるが、あまり多く集まらなかった。

僕は、双方の国にとても親しい人々がいるので、今後は人任せにせずに僕が前面にたって、若手・中堅クラスの3カ国ネットワークを創る努力をしてみたいと思った。アジアにとっても世界にとっても、この日中韓の3カ国の草の根のネットワークがとても重要だと思う。

5) 個人的には、とても収穫が多いダボス会議だった

僕は、「成長する世界企業(GGC)」の共同議長、「リーダーシップの新体系」の世界カウンシルの一員としての役割に加えて、グロービス・ナイトを主催し、チーム・ジャパンの一員として日本を盛り上げ、登壇機会も得た。そう言う意味ではとても多くの成果を得ることができたと言えよう。

今回感じたのは、プライベートな会合をもっと積極的に主催すべしということだ。ダボス会議に来て10年経過した。これからの10年間は、日本人として、日本を良くすることばかりでなく、アジア人・地球人として、アジア・地球を良くすることにも、意識を向けたいと思う。

僕は、今年1月10日に新しい本を上梓した。『新装版 人生の座標軸』(東洋経済新報社)だ。個人、家族人、組織人に加えて、日本人、アジア人、地球人としての生き方を書いたものだ。その枠組みに従って説明すると、40歳代までは主に個人、家族人、組織人としての生き方を歩み、50歳代は日本を良くすることに専念することにしたい。60歳以降はアジア人・地球人として、アジア・地球のために、何をすべきかを、何ができるのかを、今から真剣に考えたいと思う。

そのためにも意識を高く持ち、世界のリーダーの一員として、アジアや世界に貢献できるように、知見を高めることにしたい。それと同時に、日本人として日本を良くすることに今まで以上にコミットすることとしたい。

これからは、グロービス経営大学院学長、グロービス・キャピタル・パートナーズの代表パートナーとしてばかりでなく、日本人として、そしてアジア人・地球人として生きていこうと強く決意したダボス会議となった。

2014年1月27日
成田に帰国する機内にて執筆
堀義人

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