歳出削減のしくみを政府に組み込め! 

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初稿執筆日:2013年7月26日
第二稿執筆日:2015年7月7日
ギリシャやアイルランドの財政破綻は記憶に新しい。2012年当時、破綻寸前にあったギリシャ財政を、厳しい緊縮財政を受け入れることを条件にEU、IMF、民間金融機関などが大規模に介入して支援した。しかし、今年(2015年)はじめに厳しすぎる財政再建を批判して当選したチプラス首相は、EUの財政再建路線に反旗を翻し、6月、ギリシャはIMFからの融資を期限までに返済することができず、先進国で初めての事実上の債務不履行(デフォルト)に陥った。

GDPの2倍を超える借金を背負っている日本にとって、身の丈を超えた財政運営を長年続けてデフォルトに陥ったギリシャの問題は他人事ではない。一方で、1990年代、危機に陥らずに財政再建に成功した国があることはあまり知られていない。その国とは、スウェーデンやカナダだ。

両国ともに、社会保障費給付の削減に踏み切ることができたことおよび経済成長との両立ができたことが、財政再建の成功に大きく寄与している。同時に、歳出削減のしくみを導入していることが特徴的だ。例えば、スウェーデンでは、予算決定プロセスを変更し、各省庁における歳出総額と歳出分野への配分を内閣主導で決定し、その中での裁量は各省庁に任せるという、トップダウンとボトムアップを組み合わせた仕組みをつくった。

もちろん、これらの国と日本とでは規模も条件も異なる。また、財政再建の勝ち組と負け組とを分けるのは、最終的には国民の危機感と政治のリーダーシップ、言い換えれば、国民と政治家双方の「覚悟」の問題と言えるかもしれない。覚悟を基に、現状の非効率なシステムを排除して、歳出削減のしくみを制度として政府に組み込むことは極めて重要だ。

 

1. 財政健全化法を制定し、財政再建数値目標の明記と、国のトータルなバランスシートの健全化を明記せよ!

古今、財政再建への努力は、政治的圧力によって先送りされることが多い。政治家が目の前の選挙に勝つために、地元へのバラマキ予算や減税を実施したり、給付の削減や増税といった国民・有権者に痛みを伴う改革を先送りしたりするためだ。

その点においては、選挙に不利なことを承知しながら、財政構造改革の一環として社会保障費削減に踏み込んだ小泉政権や、昨年、社会保障と税の一体改革の一貫として消費税の増税を決めた野田政権の姿勢を私たちは、積極的に評価すべきであろう。

GDPの2倍という歴史的な債務残高を抱えるまで財政問題を先送りしてきてしまった日本にとって、財政再建は政治家の選挙のための政策ではなく、50年後の未来の日本のための改革である。特に、現時点で選挙権を持たない子供達のために、「何を残すのか?」という視点で考えることが重要である。

そのためにも、選挙での当選を最優先しがちな政治家によって財政再建が先送りされることがないよう、強制力を持った「財政健全化法」を策定すべきである。財政健全化法によって、プライマリーバランスを2015年度までに半減させ、2020年度までに黒字化するという歳出削減の目標と、その実現に向けた行動を内閣の義務とする必要がある。

プライマリーバランスの黒字化は財政再建のはじめの一歩にすぎない。財政再建の数値目標として、

「長期的に、国と地方の債務残高を国内総生産の10%以内とすべき。」

ことを明確に書き込むべきだ。

加えて、「税収の収支の均衡」すなわちPL側のみを縛るだけではなく、BS側、すなわち税金の他に国民から徴収している年金や保険料等を含めた国のバランスシートの健全性についても、明記することが必要だ。

それらの明確な数値目標と政府の義務を明記したうえで、不達成の場合には、歳出や社会保障費の上限をGDPに連動させる「GDPキャップ制度」などの強制的な歳出削減方策についても規定すべきであろう。

2015年現在、安倍政権は2020年度までのプライマリーバランス黒字化の目標を堅持しているが、歳出の上限を設定せず、経済成長による税収増で財政を立て直す姿勢を示している。しかし、歳出改革の本丸は社会保障であり、小泉政権時のように社会保障費の上限にキャップを設けるような手法を取らなければ、ギリシャの二の舞になってしまう。政治のリーダーにはより強い覚悟を期待したい。

2. 官邸に予算配分権限を集中せよ!(トップダウンの歳出削減)

現行制度においては、財務省が予算の査定権限を握っている。いくら財務省が「官庁の中の官庁」であるとはいえ、他省庁と同格の省である同省が、予算編成を主導しているのだ。そのために、各省庁の前年度予算を基準にした「シーリング」をかけることによる予算のマネージメントしかできていないのが実情だ。この仕組みでは、大胆な予算の組み替えや削減が行えないのだ。

より大胆で柔軟な予算編成を行うことができるようにするためには、官邸に予算編成にかかる会議体を設置して、そこに予算配分権限を集中させ、政治主導で予算編成を行う体制を構築することが必要だ。

もちろん、現状でも経済財政諮問会議が存在するが、予算編成により直接の責任を持たせ、予算の査定権限、決定権限を官邸がもつことが必要だ。さもないと教育やR&Dなどの将来投資や防衛などの予算は確保しつつ、財政再建の本丸である社会保障分野などを削減するなどの、大胆な改革ができなくなる。

予算確保を狙う各省庁の抵抗を排除し、国民にも予算の編成過程をオープンにし、歳出増や歳出カットの必要性も同時に説明するような開かれた会議体で予算編成を行うべきである。

3. 各省庁に歳出削減へのインセンティブを!(ボトムアップの歳出削減)

トップダウンの歳出削減の仕組みに加えて、ボトムアップの仕組みも必要だ。日本の官僚は優秀なのだが、予算の獲得には最大限の力を発揮して、予算の削減には大きな抵抗を示す傾向がある。

同様に、官僚は新政策の策定と実行には惜しみなく労力を注ぐが、政策評価を経ての思い切った事業・仕事の撤退・削除にはあまり力を入れられない。

これは公務員のシステムに起因すると考えられる。自らの組織の予算を増やし、仕事を増やした官僚が評価され、出世し、事務次官となる。このサイクルを逆転させ、予算を削減し、仕事を減らした官僚を評価するというインセンティブ・システムを導入する組織改革と意識改革が必要だ。

民主党政権時に行われた「事業仕分け」のようなしくみは、むしろ「行政事業レビュー」として各省庁における本来業務として内在化させ、予算のPDCAサイクルを組み込んで翌年度以降の予算編成に的確に反映させるべきだ。歳出削減・業務削減に実績を上げたチームや官僚を評価するシステムができれば、ボトムアップの歳出削減が動きだすわけだ。

例えば年限を区切って予算削減集中期間を設け、予算削減を達成した省・局・課・個人には、削減額に応じて国庫からボーナスを給付する等の思い切った施策も検討に値するだろう。

4. 地方交付税制度を廃止、消費税を地方の財源に!地方自治体それぞれが歳入増/歳出減を競い合うシステムに再編せよ!

日本維新の会は、公約の中で、「地方交付税制度の廃止と消費税の地方税化」を掲げており、みんなの党も「消費税の地方税化」を掲げている。昨年(2012年)の党首討論で当時の野田首相が「荒唐無稽だ」と一蹴するなど中央の受け止めは冷ややかで、地方自治体のほうも、東京都以外はほとんどが地方交付税交付金の交付団体であることもあって否定的だ。

しかし筆者は、それぞれの地方自治体に、歳入を増やし歳出を減らすインセンティブ・裁量を与える必要があると考える。

そのためには、現行の地方交付税制度を廃止し、消費税を地方税化するのも一案であろう。何よりも重要なのは、地方自治体単位で、税収を上げ、歳出を減らす創意工夫や努力をさせることである。かつて米国の自動車産業の要だったデトロイト市が破綻した。破綻の危機意識を持ちながら、各自治体が創意工夫し、努力をすることが重要だ。

消費税の地方税化は、道州制の導入等を待たずに現行制度下でも十分可能である。そしてゆくゆくは、道州制を導入して地方が税率を自主決定できる制度とすることで地方の努力と創意工夫がその自治体の税収増/歳出増に直接結びつくシステムにすべきである。

そもそも地方交付税は、「国が地方に代わって徴収する地方税」(固有財源)という性格をもっている。地方交付税法によって、所得税・酒税の32%、法人税の34%、消費税の29.5%、たばこ税の25%が自動的に地方交付税に充当され、今年度ベースで16.8兆円が交付税として地方に配分されている。

さらに、上記の地方交付税に充てられる消費税とは別に、税率5%のうち1%の約2.6兆円が地方消費税とされている。

財務省は景気にあまり左右されない消費税という安定財源を社会保障費の財源として、国が確保しておきたいという考えだ。だが、社会保障費は、可能な限り保険制度によって成り立たせる努力をし(方法論は今後の「行動」にて明記する)、国庫からの支出は必要最低限にすべきであろう。

それよりも、地方税と国税との仕切りを明確化し、地方公共団体が、創意工夫し努力することにより、歳入を増やし、その結果歳出が増え、拡大再生産できるように、競争させることが肝要だ。

現行で地方交付税及び地方消費税として国から地方に配分されている税収は16.8兆円+2.6兆円の20兆円弱であり、交付税制度を廃止して消費税全額が地方税化されると、地方分は13兆円となる計算で、逆に大幅な歳入減となる。消費税が税率10%に引き上げられた際は、これを全額地方税とすると総額26兆円となり地方の大幅な歳入増となる。

もちろん、現在地方交付税制度が担っている「財政調整機能」を無視することはできないので、消費税10%のうち5%は国が代わりに徴収し、財政力の低い自治体に再配分することも考えられる。重要なポイントは、現在の複雑な交付税制度によって、各地方自治体による歳入増/歳出減のインセンティブが働きにくくなっているシステムを廃止し、地方自治体に課税自主権を持たせ、地方が創意工夫をして企業を呼び込み、地元での消費を増やし、歳入を増やす努力をする制度を構築することだ。

現行制度では、地方公共団体の首長の自由度が低すぎて、創意工夫し、努力をする意欲が削がれている。首長が都道府県・市町村の「経営者」となり、ある程度リスクを取り、地域を活性化させる努力をすることが、全体としてみれば、歳入増に繋がり、結果的には財政が健全化されていく道筋が描かれることになろう。

なお、この仕組みをワークさせるには、地方の努力の成果が税収として適切に反映されることが必要だ。このため、今後さらなる拡大が予想されるインターネットによる商取引についての検討が必要だろう。現在、インターネット商取引の消費税は事業者の本店所在地にて課税されるが、例えば、EUにおけるVAT(欧州付加価値税)は、インターネットによる役務提供に関しては、役務提供者の所在国ではなく、顧客の所在国において課税されることになっている。消費税の地方税化にあたっては、地方自治体の政策努力が適切に税収に反映されるよう、インターネット商取引に関する消費税課税ルールの変更が必要であろう。

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