議論をさばく(14)対立をマネジメントする(2) 

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前回は「参加者同士の意見の対立をどうさばくか?」について考えました。対立が生じる原因を押さえたうえで、「情報の共有による認識合わせ」「各オプションの良い点と悪い点の洗い出し・共有」「判断の前提となる目的やあるべき姿への遡及」といった対応策を見てきました。今回はそれでも乗り越えづらい対立の理由、そしてその対処法について考えてみます。

対立の背後にある認識と感情

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対立の原因は合理的な場合もありますが、それ以上に、それぞれの人が持っている議論というものに対する基本的認識や感情的な要素が強く影響しています。

たとえば、「議論の目的は自分の意見を通すこと、相手を言い負かすこと」という認識が強い人は、たとえ相手の意見が合理的には正しいと理解しても、「それが自分の意見ではない」という理由だけで受け入れないことがあります。このような「議論は勝ち負け」と思っている人にとって、他の人もいる中で自分の意見が否定されることは、「面目が潰れた」「恥をかかされた」などと感じ、それだけで受け入れがたいものになりがちです。人間は感情の生き物ですので、そうした感情に対する配慮を欠くと、まとまるはずの議論もまとまりません。

こうした「感情」に起因する問題を解決するには、「議論の場に対する認識を変化させる」「相手にマイナスの感情を生じさせないように配慮する」ことが必要になります。

前者であれば、会議の最初に「今日の会議ではどちらかの意見に決めるのではなく、より良い案は何かを共に考える場としたい」「それぞれの立場上の意見はあるだろうが、ここでは個別部門の立場を離れて会社全体として何が良いのかという視点で考えて欲しい」など、議論の場の目的や目指すべき状態、参加者に意識して欲しい態度等をはっきり公言し、そうした議論の作法のグランドルールについて最初に合意をとっておくと良いでしょう。

後者であれば、議論の中で、不利になってきた側に対して、「○○さんのお立場からは受け入れがたい面もあるかと思いますが・・」といった形であえて一方の立場への共感を示す、もしくは本人の立場からは受け入れがたいような内容については、衆人環視の状況で話をしない、部下などがいない場で話をし、面目を潰さないように配慮するといったやり方もあります。

あえて「対立」を放置し、制御する

また、感情というものは、抑えようとしても難しいもので、逆にある程度発散させると収まることも多いものです。つまり、対立が生じた際、それをいきなり解決しよう、鎮めようとするのではなく、ある程度はあえて対立を放置し、「議論をしっかり戦わせる」時間を取ることも効果的です。対立が生じるような議題については、それぞれいろいろ言いたいことがあるはずです。それを十分表現する機会を与えずに、あえてまとめようとしても逆効果です。結論は自分の意見とは異なっても、自分の意見を十分に周囲に理解してもらうための機会が与えられた後には、他人の意見を聴き、受け入れやすくなることも多いのです。

さらに、ある程度議論が対立した状態が続くと、対立している当事者自らが、「このままではいけない」「自分の主張ばかりを頑なに主張する人間と見られたくはない」等の自己規制が働き、矛先を収めることもあります。十分に意見を述べ、しっかり「戦をした」後に、「双方の意見は良く判りました。で、どうしましょう?何らかの結論を出す必要はあると思うのですが・・」といった形で、対立している当事者双方に「この対立した状態をどう打開するかについての意見を求める」のも効果的な方法です。

このように考えてくると、実は議論の場において「意見の対立」は必ずしも悪いことばかりではないことが判ります。むしろ過度に対立を避けるばかりに、議論が深まらない、それぞれが言いたいことがあるのに言えず、後に禍根を残すということこそ避けるべきです。

しかし同時に、「対立」は一歩間違うと人同士の感情的な対立を深めてしまう危険性もあります。重要な論点についてはしっかり対立を起こさせながらも、関係が破壊的なものにならないように細心の注意を払いつつコントロールする。そして出来る限り、対立している当事者自身がその対立を解決、解消すべきだと感じ、そこに向けて動き出すようなきっかけを与えることを目指したいものです。こうしたファシリテーションができるようになるためにも、仕込みをしっかり行い、さばきの技を訓練する必要があるのです。

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