議論をさばく(11)さばきの基本動作(10)議論を方向づける(3) 

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ここまで、「広げる、深める、止める、まとめる」という「議論の方向付け」の中で、「広げる」と「深める」について詳しく見てきました。引き続き今回は、「議論を止める」について考えてみます。

「議論を止める」必要性とは?

会議など議論の場で、本題に関係の無い話を長々とする人がいたり、結論の出ない議論が一部の人の間で延々と続き、最終的に何が決まったのかわからなくなったり、他の参加者の集中力が次第に失われていく中で、たまたまその時に優勢だった意見が通ってしまうといったことがとてもよく起こります。会議は多数の人が時間的に拘束される、コストが高いものであることを考えると、こうした状態を放置することは組織の生産性を大きく下げることになります。しかし、議論をしている当人達はその自覚が無いことも多く、結果として同じようなことが繰り返されるといったことになりがちです。そこで、ファシリテーターが「議論を止める」役割を果たす必要が出てきます。

議論を効率的に進め、参加者の集中力を維持するには、その場において本来議論すべきである論点に集中し、関係が薄い論点の議論に時間を使わない、もしくは、合意を形成するうえで大事な論点であったとしても、情報不足や会議に参加していない人と確認、相談が必要であるなど、その場でそれ以上議論しても結論が出そうにない議論については早目に切り上げ、本来議論すべき論点に戻す、ことが重要です。

議論を止める難しさは止められた側の感情にある

しかし同時にこれは最も難しいことでもあります。自分の発言を遮られたり、自分がしている議論をいきなり止められたりすると、話をしている当人はほとんどの場合、強い反発を覚えます。このように反発されることへの恐れや、結果として参加者の発言意欲が下がるのではないかという懸念から、我々は「話を切る・議論を止める」ことに躊躇しがちです。

こうした恐れや躊躇を乗り越えるためには、「議論を止められると人はなぜ反発するのか?」を考え、そこに対して配慮した「切り方・止め方」を知っておくことが重要です。

参加者が議論を止められるときに感じることは、大きく3つあります。それは、「自分の意見が他人から否定されたと感じる」、「自分の意見や提示した論点には価値が無いとみなされたように感じる」、そして「自分の意見を理解してもらえていないと感じる」です。ここで注意すべきなのは、周囲が「この議論は止めるべきだ」と思っていても、話している本人はそう思っていないという大きな認識のギャップがあるということ。そしてその話が実際に止めるべきものであるかということ以上に、「切られた・止められた」ということにより発生する「邪魔された」「無視された」「軽視された」「恥をかかされた」といった感情の問題のほうが大きいということです。

議論を止める際は「説得」ではなく「問いかける」ことを留意して

こうしたことを踏まえると、議論を止める際には、「ネガティブな感情が反射的に起きることをいかに回避するか?」「止める・切ることに対する本人の納得性をいかに高めるか?」がポイントになります。以下のようなステップを踏むと良いでしょう。

(1)発言そのものを受け止め、理解していることをしっかり示す
(2)本来議論すべき論点に意識を向けてもらう
(3)(必要なら)その論点で議論を続ける必要性に対する疑念を示し、その理由を問う
(4)止める発言や論点が活きる機会・場面が別にあることを示す

もう少し具体的には、まず、「今の発言は、○○という論点について、□□だという意見ですね」といった形で、話されている論点を明確にします(1)。そのうえで、「○○という論点について結論を出すためには、その前に△△という論点について考える必要がありそうですね。では△△という論点についてはどう思いますか?」など、できるだけ自然に、論点の修正を試みます(2)。それでもなかなか動かない場合は、「今ここで○○という論点について結論を出すべきだと思われる理由は何でしょうか?」「△△よりも○○という論点を先に議論するのはなぜでしょうか?」などといった形で、その論点の議論に拘る理由の説明を求めます(3)。そのうえで、「○○という論点については、△△の議論のあとに再度議論しましょう」「今の○○の議論は、もう少し材料が揃ってから議論した方が良いかと思いますがいかがでしょう?」など、別に取り上げる機会があることを示す(4)、といった感じです。
こうした場面において大事なのは、ファシリテーターが一方的に「この議論を止めよう」と判断して相手を「説得」するよりも、相手に「問いかけ」をして、議論を止める必要性に気付いてもらうことです。

同時に、ファシリテーターからは必要な論点だと思えなくても、よくよく聴いてみると、実はそこで議論すべき重要な論点が隠れていることもあります。発言者や他の参加者に問いかけ、その議論を続ける意義を考えるきっかけを与えることで、軌道修正の必要性や方向性を参加者がより具体的に理解し、納得感を持って自ら流れを修正する効果も狙えます。

こうした場面を何度か繰り返すうちに、議論の参加者自身が「今議論すべき論点について議論すべき」と自然に考える、「自分の発言は本来議論すべき論点とずれていないだろうか?」と自問するようになればしめたものです。ぜひこうした状態を目指して、しなやかに、でも毅然として「議論を切る」ことができるファシリテーターを目指したいものです。

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